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【スイの魔法 1 魔眼の覚醒】 ダイジェスト
銀髪の少年――スイ
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【スイの魔法 1 魔眼の覚醒】
ダイジェストストーリー 1/3
********************************************
緑豊かな大地。
一年を通して穏やかな気候が流れ、『ヴェルディア王国』と呼ばれる王国によって統一されて以来、王国の名を冠した大陸――ヴェルディア大陸は、現在より七十年程前に起こった、前時代――〈ヘリン〉の終焉を迎えた大戦、〈魔導戦争〉以来、平和が続いている。
歪な扇状に広がったこの大陸の北西部に位置する、ヴェルディア王のお膝元である『王都ヴェル』。南門から真っ直ぐ北に進んだ先にある王城へと伸びる大通りは、今日も行商人や近隣の村落からやって来た者達が露店を開き、活気付いた空気を醸し出していた。
王都ヴェルは街の中心部を十字に通る大通りによって、北西と北東、南西と南東がそれぞれの区によって分けられている。
北西部――〈居住区・第一地区〉。
近隣諸国にも名を知らしめている巨大な魔法学園、『ヴェルディア魔法学園』がその敷地の実に八割を占めるように聳え立ち、〈居住区〉とは呼ばれてこそいるものの、その実は学園の通う寮生や学園の講師が住まう寮などがあるぐらいだ。
かつては軍事を取り仕切る要塞であった名残が残るこの石造りの学園は、三つの棟に分かれた砦の痕跡を今もなお色濃く残し、広大な訓練場とその奥には広い森が広がっている。
その他にも、北東部は〈居住区・第二地区〉。南東部が〈居住区・第三地区〉。南西部が〈居住区・第四地区〉と、それぞれに呼び名が分かれている。
――――そんなヴェルの〈居住区・第三地区〉。
南東部に位置する家々の中に、一際目立つ大きな円柱状の建物が聳え立つ。
『ヴェルディア王立図書館』だ。
全十七階。階層ごとに様々な呼び名を持つ、円柱状の建物であり、中は壁際にぎっしりと並べられた大量の書物が存在している。
階の移動には、建物の中央部にある【魔導式エレベーター】と呼ばれる、魔力によって動く『魔導具』を使わなくてはならない。
ネイビス・ウォルスという男がいる。
目尻に皺の刻まれた三十代後半といった、優しそうな男は、この王立図書館の司書として軍部から派遣された、軍人だ。最近は娘が反抗期を迎えつつあるのが目下の悩みであり、多感な年頃の娘とは少々疎遠な関係になりつつある以外、取り立てて悩みがある訳でもない。
ネイビスは自分の事務机がある十五階で用事を思い出すと、【魔導式エレベーター】に乗り込み、下へと降りていく。
ハッキリ言って、王立図書館は寂れている。
そもそもここに置かれている書物は上階へと向かうにつれて専門的な分野ばかりが取り沙汰された書物が置かれるため、せいぜい一日に一人か二人程度やってくればいい方だ。
――――だからこそ、この王立図書館に幽霊がいるなんて話を聞いた時は、さもありなんと思ったものである。
その幽霊の姿は、今日も今日とてネイビスの目に映った。
十四階――『論文階層』などと呼ばれ、様々な学者が打ち立てた論文などが置かれたこの階層にいる幽霊。
七十年前の〈魔導戦争〉によって、過去の文献と呼ばれる文献は消失した。そういった過去を洗い直すように様々な論文が発表されては、そのまま放置されてしまっているものもあるような、そんな階層である。
そこにある光景は、色々な意味で有り得ないと言っても過言ではない。
机に置かれた書物をなぞる指先は細く、陶磁のようにきめ細かい。
髪は銀色で、それこそ銀糸のようにさらさらとしていて、覗く顔は見る者が思わず目を疑う程に、まるで造形物のように整っている。
無表情ながらに文字を追うのが大人であるならばいざ知らず、それは紛れも無く市井の子供らしい麻の服を着た少年。性別を知らなければ、男女の差すらそこには感じられない。
――あぁ、確かにこいつは、幽霊だと思われるわな。
ネイビスの胸中に浮かんだ、毎日のように顔を合わせる少年――スイへの感想はいつもこれである。
「まーた難しい本でも読んでるのか、スイ」
気軽な様子で声をかけたネイビスへ、スイは文字列を追っていた指をピタリと止めて顔をあげ、蒼い双眸をネイビスへと向けた。
少年とも少女ともとれる、整った綺麗な顔立ち。スイの出自や生い立ちを知らないネイビスであったが、これだけ整った顔の少年が街にいれば噂ぐらいは聞いてもおかしくないものだが、スイの噂はネイビスも聞いたことはない。
だからこそ、幽霊だと騒がれているのも一つの由来ではあるのかもしれない。
「こんにちは、ネイビスさん」
「おう。――それで、今日は一体何を読んでたんだ?」
無機質にすら感じられる表情のなさと、男子としては声変わりしていない高い声に相応しくない、淡白な言葉の羅列のような挨拶。その口ぶりは確かに、年齢には似つかわしくこそないが、表情と雰囲気には似合っていた。
ネイビスに問いかけられて、スイは手元に置いていた本を机を挟む形で立ったネイビスに見えるように反対に向けた。
「――『白銀の魔女』と呼ばれた存在は実在したのか、ねぇ。
珍しいな。お前さんにしてはあまり難しい本でも読んでるのかと思ったら、お伽話の登場人物に対する考察なんて」
ネイビスが想像していたものとは少々違った趣向の本。それはある意味では歳相応ではあるが、それでもこの『論文階層』と呼ばれる場所に置かれた本だ。著者はヴェルディアの学者であり、ヘリンと呼ばれた七十年前よりも古い時代から語り継がれた『白銀の魔女』と呼ばれる存在に対する考察を書いたものである。
「『救済の魔女』、あるいは『破滅の魔女』と呼ばれた存在なんだ。まったく真逆な扱いだと思わない? 確かに歴史上、現代にとって都合の良い事実が救いであると謳われることは珍しくはないかもしれないけれど、なら何で『破滅の魔女』なんて名前が――」
「――おっと、そこまでにしてくれよ。司書なんて仕事をしているからって、俺はお前の高尚な論議には参加できないぞ」
茶化すようにスイの言葉を遮って、ネイビスは肩を竦めた。
聞けば、スイの年齢は十歳。この街にいる子供ならば、大抵はヴェルディア魔法学園の生徒として過ごしているであろうはずのスイは、どういう訳か昼頃になるといつもここに顔を出す。私生活に於いて何をしているのか。
司書である以前に軍人であるネイビスは、仕事上で知り合った相手に必要以上に踏み込もうとはしない。公私混同を徹底的に避けている傾向があるのだ。
確かにネイビスはそれを訊ねようとはしないが、気になるものは気になっている。
スイの頭の良さは紛れも無く、大人と遜色ない。いや、下手な大人よりも書物で得た知識を十全に憶えている上に、その位置まで把握していると言うのだから、大人ですら歯牙にかけない知識量を有している。
この階――十四階にいるということはつまり、そこに至るまでの蔵書全てを読みきったという事実をも物語っているのだ。スイという少年は、そういう少年である。
「それにしても、確かお前さんと同じ年代だったか。まったく、最近の子供は頭が良すぎるのかね」
頭を掻きながら呟いたネイビスを前に、スイはきょとんとした表情で小首を傾げた。
「なんだ、知らないのか?
まぁ軍部で噂になってる程度で定かじゃないが、どうやらヴェルディア魔法学園にお前さんと同い年で卒業認定を受けた生徒がいるって話だ。娘に聞いてもそんな生徒は知らないの一点張りで、俺も詳しくは知らないんだけどな。
もしかしたら、スイ。お前さん、そいつと話が合うんじゃないか?」
同じ天才児同士、友達にでもなったらどうだとネイビスは心の中で付け加えた。
いつも昼頃、たった一人でやって来る幽霊。話も年齢も合うのなら、いっそ仲良く出来るのではないかという、先達としてのお節介めいた助言である。
しかしスイは、困ったように苦笑を浮かべて頬を掻いた。
「多分、それは無理なんじゃないかな」
「なんだ、そんな程度じゃ自分とは合わないとでも言いたいのか?」
「あはは、そんな訳ないよ。
――だって、自分と友達になるなんて、無理だからね」
スイの一言に固まったネイビスが再起動するまで、少しの時間を要したのは間違いなかった。
今まで知らなかったスイの生活を、この日、初めてネイビスは知ることとなる。
入学以来、座学の成績に関してはあまりに同世代から逸脱していたスイは、午後の授業時間になってから学園へと行き、講師と共にマンツーマンで授業を行う。それは年齢には似つかわしくない、いわゆる飛び級の授業だ。
七歳から十年間を通うヴェルディア魔法学園だが、特に飛び級という制度はこれまでなかった。市井の中で勉学に励む者は珍しく、そもそもそういった生徒を特別扱いするような必要性はなかったのだが、そこにスイという異質な少年が現れてしまったのである。
僅か十歳にして勉学を修めたスイではあるが、十歳の春――四年生から学ぶ魔法の実技授業などに関しては先行してこなかった。それ故、この春からスイは四年生に編入し、同世代の少年少女と共に初めて学園生活を送ることになるのだ。
「――……なるほどな」
「うん。そういう訳だから、来週からは僕もここにあまり来なくなるかもしれない」
「図書館の幽霊も、ここを卒業か。そう考えると寂しくなるな」
「そういえば、そんな呼び方をされているって教えてくれたのはネイビスさんだったね」
懐かしい話題を掘り返したネイビスの言葉に、スイは苦笑した。
「まぁ、楽しめよ。本の中ばかりがお前の世界じゃないんだからな」
ネイビスの言葉に力強く頷いたスイの物語は、ここから始まろうとしていた。
◆ ◆ ◆
――四年生に、銀髪蒼眼の少年が編入した。
――顔が綺麗で整っていて、魔力のランクも高い。
――その上、性格だって悪くはないらしい。
ヴェルディア魔法学園に在学している生徒達に、その噂は瞬く間に広がった。
何故そんな話が広がったのか。それを説明するにはまず、この学園に関する知識や常識、それに加えて勢力図を知らなければならない。
――そもそも、魔法とは男女で言えば女性の方が素養が高い。
綿密な魔力のコントロールであったり、イメージに関する定着率は女性の方が向いているのだ。そういう意味で、女性の方がこのヴェルディア魔法学園では強者となり得る。
生徒は六年生になるとそれぞれの専攻学科を選ぶことになるのだが、これには花型と呼ばれる男女の科もあり、女子にとっては『魔術科』が、男子にとっては『騎士科』がこれに当たる。その他には『執務科』・『商業科』・『工業科』・『研究科』といった科があったりもするのだが、やはり名を挙げるのだとすれば前者――つまりは『魔術科』と『騎士科』が有力候補となり、当然ながらその狭き門をくぐれるのは、才能や努力が当然ながらに必要となる。
将来を左右する専攻学科の選択。
確かにそれは生徒にとっては大事な選択ではあるが、ヴェルディア魔法学園は開校以来、もう一つの側面を影で担っている。
――それが、将来のパートナー。つまりは伴侶探しという現実的な目的であったりもするのだ。
男女率にして四対六という女子の方が多い昨今の情勢などから、女子にとっては将来の有力な伴侶に早い段階で唾を付けておくというのは、当然ながらに必要となる。婚期を逃してしまえば、生涯独身のまま過ごさなくてはならないのだ。
それは女子にとって、非常に不名誉な現実でもあり、男子にとっても当然ながら回避したい。
さて、そんな場に姿を現したスイである。
出自は幼い頃から孤児として教会に生まれ育ったと、決して恵まれた環境ではない。にも関わらず、鮮烈な編入直後の魔力ランクと、銀髪蒼眼という見たこともない色。それに加えて、人形のように整った顔立ち。
――当然ながら、ヴェルディア魔法学園の子女は、新たに出現したルーキーことスイに、その注目を浴びせることとなる。
一方スイは、そうした女性陣の騒動など露知らず、学園での生活を満喫していた。
多少なりともゴタゴタとした日々を過ごしていたが、魔法学園での実技授業の一つ、『獣育学』と呼ばれる授業が始まったのであった。
「――んじゃ、これからお前らの生涯のパートナー、〈使い魔〉との契約を始めるからなー」
講師としては少々不真面目なようで、それでいて生徒からの信頼の厚い男性講師、リニック・ハイアの声に生徒達は色めき立った。
四年生になって初めて、魔法の使用を許可され、その練習を始める生徒達にとって、〈使い魔〉と言えば一種の魔法使いとしてのステータスでもある。
様々な種類の〈使い魔〉の種類は存在しているが、その中でもやはり人気や羨望を一身に受けている存在こそが、『天魔』と呼ばれる天使や悪魔種だ。次いで、『幻獣種』と呼ばれる者達である。
〈使い魔〉と主は契約によって縛ることで簡単な意思疎通を可能にするが、それ以上に会話ができる〈使い魔〉とはまさしくパートナーである。数あるお伽話の中でも、そうした存在が主人公の相棒に選ばれるのは当然であり、高度な力と、その力に見合った知性を有する彼らとの契約は、少年少女誰もが憧れる夢である。
そんな中、スイが願っていたのは白い鳥など、ありふれたものであった。
この数日、四年生として編入して以来、スイは確かに尋常ではない実力を発揮していた。魔力ランクもそうだが、魔力を使った単純な練習では、ステージに穴を空けて周囲の肝を冷やすような事件も起こしているが、本人にとってはどこ吹く風といったところである。
浮世離れした生活と環境のせいで、スイは自らの立ち位置を正確には理解していない節があるのだが、それはさて置き、周囲はそれを放っておく訳にはいかない。
だからこそ、講師総出でスイの出番を待つ形になったのは言うまでもなかった。
少年少女が夢見る『天魔』や『幻獣種』は、主を選ぶ。
下手に強大な者が現れ、主に相応しくないと判断されれば、最悪の場合は周囲を荒らして帰っていくという事件だって起きているのだ。
果たして、スイが一体何をやらかすのか。そう考える講師陣は、スイの召喚だけは注意していた。
「よし、準備はいいぞ」
それはどっちの台詞なのかと言いたくなるようなスイであったが、リニックの周囲にはすでに学園長であるカンディス・シェイザらといった魔法の扱いに長けた者達もまた、これから起こるであろう事態に対応すべく、表情を強張らせていた。
起こるであろう、とは言うが、そもそも何が起こるとも限らないのだ。他の生徒もまた同様に、スイなら何かやらかしてくれるのではないかと言わんばかりに爛々と丸い目を輝かせているのだから始末に負えない。
渡されたナイフの刃を指に押し当て、血を垂らす。
痛みに僅かに顔を顰めながらも、スイは目を閉じて一つ深呼吸すると、ゆっくりと〈使い魔〉との契約に使う文言を唱えた。
「――我が使役に応えし者 その姿を現し 忠誠を示せ」
地面に垂れ落ちた血が砂と混じり、赤黒い点を作ったその場所から、光の輪が周囲へと広がった。姿を現すであろう〈使い魔〉の巨躯を示すかのように広がった円は、直径にしておよそ十メートル程度はあろうかという巨大なものだ。
光の輪の拡大が止まると、今度は魔導言語がそこに描かれていく。あまりに古く、見たこともない文字があるなと頭の片隅でぼんやりと考えつつも、眼前に広がった巨大な魔法陣を前にスイは言葉を失っていた。
カンディスの指示によって、生徒達が離れていく中。
ついに完成した魔法陣からは、膨大な――これまで感じたこともないぐらいの凄まじい魔力の奔流が溢れだし、その場にいた誰もが身体を強張らせた。
学園長であるカンディスはこの時、絶望が広がったと後に語る。
目の前に現れた巨大な魔力は、紛れも無く天魔級――もしくはそれに準ずるか、あるいはそれ以上である何かだ。
強大な力は圧倒的な強者の気配を漂わせ、むしろその影響を受けるはずのスイが何も動じることなく立っている姿には、恐らく恐怖で動けないのだと当たりをつけていた。
しかし、一方のスイは――目の前に姿を浮かべていく黄金の光と巨躯に、ただただ見惚れていた。
黄金の鱗をまとった龍、金龍。
かつて文献でスイが見たその姿は、お伽話か神話か。
そういった書物においてのみ語られていた存在だ。
確かに現在に於いても竜は存在しているが、巨大な翼を携えた『飛龍種』などと呼ばれる龍は存在していない。
竜とは巨大なトカゲのようなものであり、それだけでも脅威ではあるが、龍では話が違ってくる。
絶対的な空の覇者。
天魔よりも珍しく、神話では自尊心の強い最強の種族とまで謳われている。
そんな存在が、〈使い魔〉として契約するなど、有り得ないだろう。
――終わった。
カンディスは眼前の光景を見つめて、心の中で呟いた。
文字通りに、間違いなくスイは――逆鱗に触れたと言ってもいいだろう。
グルルルと喉を鳴らしながら金龍はスイを見つめ、紅玉のような赫灼とした瞳を細めて顔を近づけた。
《――銀色の髪に蒼い瞳。なるほど、喚び出したのはおまえか》
金龍――ファラはこうして、スイとの邂逅を果たし、彼と共に歩く決意をするのであった。
《――遠い約束が、ようやく果たされる》
この時、ファラが呟いた一言。
その言葉が意味するものを、この時のスイは知る由もなかった。
金龍――ファラが〈使い魔〉となった後も、スイの生活はあまり変化しなかった。
―――――とは言え、生徒会に入ったり、王城で一悶着を起こしたりと、やはり普通の生徒とは違った方向で動いてはいるものの、これまでマンツーマン制の授業しかしてこなかったスイに、『生徒にとっての常識』というものが一切通じていないのは事実である。
自分が携わってきた一件などが、決してそういった事実の範疇を飛び出しているなどと気付くはずもなく、そもそもスイに協調性といったものはどこか欠けている。
ファラの召喚であったり、レイアとの決闘騒動の発端ともなった、生徒会への特殊な立ち位置での参加など、彼を取り巻く環境は普通とは到底言い難いのだが、当の本人はどこ吹く風とでも言わんばかりにお構いなしだ。
どこか周囲とはずれたスイの日々は、また王立図書館で一つの騒動を起こすことになるのであった。
ダイジェストストーリー 1/3
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緑豊かな大地。
一年を通して穏やかな気候が流れ、『ヴェルディア王国』と呼ばれる王国によって統一されて以来、王国の名を冠した大陸――ヴェルディア大陸は、現在より七十年程前に起こった、前時代――〈ヘリン〉の終焉を迎えた大戦、〈魔導戦争〉以来、平和が続いている。
歪な扇状に広がったこの大陸の北西部に位置する、ヴェルディア王のお膝元である『王都ヴェル』。南門から真っ直ぐ北に進んだ先にある王城へと伸びる大通りは、今日も行商人や近隣の村落からやって来た者達が露店を開き、活気付いた空気を醸し出していた。
王都ヴェルは街の中心部を十字に通る大通りによって、北西と北東、南西と南東がそれぞれの区によって分けられている。
北西部――〈居住区・第一地区〉。
近隣諸国にも名を知らしめている巨大な魔法学園、『ヴェルディア魔法学園』がその敷地の実に八割を占めるように聳え立ち、〈居住区〉とは呼ばれてこそいるものの、その実は学園の通う寮生や学園の講師が住まう寮などがあるぐらいだ。
かつては軍事を取り仕切る要塞であった名残が残るこの石造りの学園は、三つの棟に分かれた砦の痕跡を今もなお色濃く残し、広大な訓練場とその奥には広い森が広がっている。
その他にも、北東部は〈居住区・第二地区〉。南東部が〈居住区・第三地区〉。南西部が〈居住区・第四地区〉と、それぞれに呼び名が分かれている。
――――そんなヴェルの〈居住区・第三地区〉。
南東部に位置する家々の中に、一際目立つ大きな円柱状の建物が聳え立つ。
『ヴェルディア王立図書館』だ。
全十七階。階層ごとに様々な呼び名を持つ、円柱状の建物であり、中は壁際にぎっしりと並べられた大量の書物が存在している。
階の移動には、建物の中央部にある【魔導式エレベーター】と呼ばれる、魔力によって動く『魔導具』を使わなくてはならない。
ネイビス・ウォルスという男がいる。
目尻に皺の刻まれた三十代後半といった、優しそうな男は、この王立図書館の司書として軍部から派遣された、軍人だ。最近は娘が反抗期を迎えつつあるのが目下の悩みであり、多感な年頃の娘とは少々疎遠な関係になりつつある以外、取り立てて悩みがある訳でもない。
ネイビスは自分の事務机がある十五階で用事を思い出すと、【魔導式エレベーター】に乗り込み、下へと降りていく。
ハッキリ言って、王立図書館は寂れている。
そもそもここに置かれている書物は上階へと向かうにつれて専門的な分野ばかりが取り沙汰された書物が置かれるため、せいぜい一日に一人か二人程度やってくればいい方だ。
――――だからこそ、この王立図書館に幽霊がいるなんて話を聞いた時は、さもありなんと思ったものである。
その幽霊の姿は、今日も今日とてネイビスの目に映った。
十四階――『論文階層』などと呼ばれ、様々な学者が打ち立てた論文などが置かれたこの階層にいる幽霊。
七十年前の〈魔導戦争〉によって、過去の文献と呼ばれる文献は消失した。そういった過去を洗い直すように様々な論文が発表されては、そのまま放置されてしまっているものもあるような、そんな階層である。
そこにある光景は、色々な意味で有り得ないと言っても過言ではない。
机に置かれた書物をなぞる指先は細く、陶磁のようにきめ細かい。
髪は銀色で、それこそ銀糸のようにさらさらとしていて、覗く顔は見る者が思わず目を疑う程に、まるで造形物のように整っている。
無表情ながらに文字を追うのが大人であるならばいざ知らず、それは紛れも無く市井の子供らしい麻の服を着た少年。性別を知らなければ、男女の差すらそこには感じられない。
――あぁ、確かにこいつは、幽霊だと思われるわな。
ネイビスの胸中に浮かんだ、毎日のように顔を合わせる少年――スイへの感想はいつもこれである。
「まーた難しい本でも読んでるのか、スイ」
気軽な様子で声をかけたネイビスへ、スイは文字列を追っていた指をピタリと止めて顔をあげ、蒼い双眸をネイビスへと向けた。
少年とも少女ともとれる、整った綺麗な顔立ち。スイの出自や生い立ちを知らないネイビスであったが、これだけ整った顔の少年が街にいれば噂ぐらいは聞いてもおかしくないものだが、スイの噂はネイビスも聞いたことはない。
だからこそ、幽霊だと騒がれているのも一つの由来ではあるのかもしれない。
「こんにちは、ネイビスさん」
「おう。――それで、今日は一体何を読んでたんだ?」
無機質にすら感じられる表情のなさと、男子としては声変わりしていない高い声に相応しくない、淡白な言葉の羅列のような挨拶。その口ぶりは確かに、年齢には似つかわしくこそないが、表情と雰囲気には似合っていた。
ネイビスに問いかけられて、スイは手元に置いていた本を机を挟む形で立ったネイビスに見えるように反対に向けた。
「――『白銀の魔女』と呼ばれた存在は実在したのか、ねぇ。
珍しいな。お前さんにしてはあまり難しい本でも読んでるのかと思ったら、お伽話の登場人物に対する考察なんて」
ネイビスが想像していたものとは少々違った趣向の本。それはある意味では歳相応ではあるが、それでもこの『論文階層』と呼ばれる場所に置かれた本だ。著者はヴェルディアの学者であり、ヘリンと呼ばれた七十年前よりも古い時代から語り継がれた『白銀の魔女』と呼ばれる存在に対する考察を書いたものである。
「『救済の魔女』、あるいは『破滅の魔女』と呼ばれた存在なんだ。まったく真逆な扱いだと思わない? 確かに歴史上、現代にとって都合の良い事実が救いであると謳われることは珍しくはないかもしれないけれど、なら何で『破滅の魔女』なんて名前が――」
「――おっと、そこまでにしてくれよ。司書なんて仕事をしているからって、俺はお前の高尚な論議には参加できないぞ」
茶化すようにスイの言葉を遮って、ネイビスは肩を竦めた。
聞けば、スイの年齢は十歳。この街にいる子供ならば、大抵はヴェルディア魔法学園の生徒として過ごしているであろうはずのスイは、どういう訳か昼頃になるといつもここに顔を出す。私生活に於いて何をしているのか。
司書である以前に軍人であるネイビスは、仕事上で知り合った相手に必要以上に踏み込もうとはしない。公私混同を徹底的に避けている傾向があるのだ。
確かにネイビスはそれを訊ねようとはしないが、気になるものは気になっている。
スイの頭の良さは紛れも無く、大人と遜色ない。いや、下手な大人よりも書物で得た知識を十全に憶えている上に、その位置まで把握していると言うのだから、大人ですら歯牙にかけない知識量を有している。
この階――十四階にいるということはつまり、そこに至るまでの蔵書全てを読みきったという事実をも物語っているのだ。スイという少年は、そういう少年である。
「それにしても、確かお前さんと同じ年代だったか。まったく、最近の子供は頭が良すぎるのかね」
頭を掻きながら呟いたネイビスを前に、スイはきょとんとした表情で小首を傾げた。
「なんだ、知らないのか?
まぁ軍部で噂になってる程度で定かじゃないが、どうやらヴェルディア魔法学園にお前さんと同い年で卒業認定を受けた生徒がいるって話だ。娘に聞いてもそんな生徒は知らないの一点張りで、俺も詳しくは知らないんだけどな。
もしかしたら、スイ。お前さん、そいつと話が合うんじゃないか?」
同じ天才児同士、友達にでもなったらどうだとネイビスは心の中で付け加えた。
いつも昼頃、たった一人でやって来る幽霊。話も年齢も合うのなら、いっそ仲良く出来るのではないかという、先達としてのお節介めいた助言である。
しかしスイは、困ったように苦笑を浮かべて頬を掻いた。
「多分、それは無理なんじゃないかな」
「なんだ、そんな程度じゃ自分とは合わないとでも言いたいのか?」
「あはは、そんな訳ないよ。
――だって、自分と友達になるなんて、無理だからね」
スイの一言に固まったネイビスが再起動するまで、少しの時間を要したのは間違いなかった。
今まで知らなかったスイの生活を、この日、初めてネイビスは知ることとなる。
入学以来、座学の成績に関してはあまりに同世代から逸脱していたスイは、午後の授業時間になってから学園へと行き、講師と共にマンツーマンで授業を行う。それは年齢には似つかわしくない、いわゆる飛び級の授業だ。
七歳から十年間を通うヴェルディア魔法学園だが、特に飛び級という制度はこれまでなかった。市井の中で勉学に励む者は珍しく、そもそもそういった生徒を特別扱いするような必要性はなかったのだが、そこにスイという異質な少年が現れてしまったのである。
僅か十歳にして勉学を修めたスイではあるが、十歳の春――四年生から学ぶ魔法の実技授業などに関しては先行してこなかった。それ故、この春からスイは四年生に編入し、同世代の少年少女と共に初めて学園生活を送ることになるのだ。
「――……なるほどな」
「うん。そういう訳だから、来週からは僕もここにあまり来なくなるかもしれない」
「図書館の幽霊も、ここを卒業か。そう考えると寂しくなるな」
「そういえば、そんな呼び方をされているって教えてくれたのはネイビスさんだったね」
懐かしい話題を掘り返したネイビスの言葉に、スイは苦笑した。
「まぁ、楽しめよ。本の中ばかりがお前の世界じゃないんだからな」
ネイビスの言葉に力強く頷いたスイの物語は、ここから始まろうとしていた。
◆ ◆ ◆
――四年生に、銀髪蒼眼の少年が編入した。
――顔が綺麗で整っていて、魔力のランクも高い。
――その上、性格だって悪くはないらしい。
ヴェルディア魔法学園に在学している生徒達に、その噂は瞬く間に広がった。
何故そんな話が広がったのか。それを説明するにはまず、この学園に関する知識や常識、それに加えて勢力図を知らなければならない。
――そもそも、魔法とは男女で言えば女性の方が素養が高い。
綿密な魔力のコントロールであったり、イメージに関する定着率は女性の方が向いているのだ。そういう意味で、女性の方がこのヴェルディア魔法学園では強者となり得る。
生徒は六年生になるとそれぞれの専攻学科を選ぶことになるのだが、これには花型と呼ばれる男女の科もあり、女子にとっては『魔術科』が、男子にとっては『騎士科』がこれに当たる。その他には『執務科』・『商業科』・『工業科』・『研究科』といった科があったりもするのだが、やはり名を挙げるのだとすれば前者――つまりは『魔術科』と『騎士科』が有力候補となり、当然ながらその狭き門をくぐれるのは、才能や努力が当然ながらに必要となる。
将来を左右する専攻学科の選択。
確かにそれは生徒にとっては大事な選択ではあるが、ヴェルディア魔法学園は開校以来、もう一つの側面を影で担っている。
――それが、将来のパートナー。つまりは伴侶探しという現実的な目的であったりもするのだ。
男女率にして四対六という女子の方が多い昨今の情勢などから、女子にとっては将来の有力な伴侶に早い段階で唾を付けておくというのは、当然ながらに必要となる。婚期を逃してしまえば、生涯独身のまま過ごさなくてはならないのだ。
それは女子にとって、非常に不名誉な現実でもあり、男子にとっても当然ながら回避したい。
さて、そんな場に姿を現したスイである。
出自は幼い頃から孤児として教会に生まれ育ったと、決して恵まれた環境ではない。にも関わらず、鮮烈な編入直後の魔力ランクと、銀髪蒼眼という見たこともない色。それに加えて、人形のように整った顔立ち。
――当然ながら、ヴェルディア魔法学園の子女は、新たに出現したルーキーことスイに、その注目を浴びせることとなる。
一方スイは、そうした女性陣の騒動など露知らず、学園での生活を満喫していた。
多少なりともゴタゴタとした日々を過ごしていたが、魔法学園での実技授業の一つ、『獣育学』と呼ばれる授業が始まったのであった。
「――んじゃ、これからお前らの生涯のパートナー、〈使い魔〉との契約を始めるからなー」
講師としては少々不真面目なようで、それでいて生徒からの信頼の厚い男性講師、リニック・ハイアの声に生徒達は色めき立った。
四年生になって初めて、魔法の使用を許可され、その練習を始める生徒達にとって、〈使い魔〉と言えば一種の魔法使いとしてのステータスでもある。
様々な種類の〈使い魔〉の種類は存在しているが、その中でもやはり人気や羨望を一身に受けている存在こそが、『天魔』と呼ばれる天使や悪魔種だ。次いで、『幻獣種』と呼ばれる者達である。
〈使い魔〉と主は契約によって縛ることで簡単な意思疎通を可能にするが、それ以上に会話ができる〈使い魔〉とはまさしくパートナーである。数あるお伽話の中でも、そうした存在が主人公の相棒に選ばれるのは当然であり、高度な力と、その力に見合った知性を有する彼らとの契約は、少年少女誰もが憧れる夢である。
そんな中、スイが願っていたのは白い鳥など、ありふれたものであった。
この数日、四年生として編入して以来、スイは確かに尋常ではない実力を発揮していた。魔力ランクもそうだが、魔力を使った単純な練習では、ステージに穴を空けて周囲の肝を冷やすような事件も起こしているが、本人にとってはどこ吹く風といったところである。
浮世離れした生活と環境のせいで、スイは自らの立ち位置を正確には理解していない節があるのだが、それはさて置き、周囲はそれを放っておく訳にはいかない。
だからこそ、講師総出でスイの出番を待つ形になったのは言うまでもなかった。
少年少女が夢見る『天魔』や『幻獣種』は、主を選ぶ。
下手に強大な者が現れ、主に相応しくないと判断されれば、最悪の場合は周囲を荒らして帰っていくという事件だって起きているのだ。
果たして、スイが一体何をやらかすのか。そう考える講師陣は、スイの召喚だけは注意していた。
「よし、準備はいいぞ」
それはどっちの台詞なのかと言いたくなるようなスイであったが、リニックの周囲にはすでに学園長であるカンディス・シェイザらといった魔法の扱いに長けた者達もまた、これから起こるであろう事態に対応すべく、表情を強張らせていた。
起こるであろう、とは言うが、そもそも何が起こるとも限らないのだ。他の生徒もまた同様に、スイなら何かやらかしてくれるのではないかと言わんばかりに爛々と丸い目を輝かせているのだから始末に負えない。
渡されたナイフの刃を指に押し当て、血を垂らす。
痛みに僅かに顔を顰めながらも、スイは目を閉じて一つ深呼吸すると、ゆっくりと〈使い魔〉との契約に使う文言を唱えた。
「――我が使役に応えし者 その姿を現し 忠誠を示せ」
地面に垂れ落ちた血が砂と混じり、赤黒い点を作ったその場所から、光の輪が周囲へと広がった。姿を現すであろう〈使い魔〉の巨躯を示すかのように広がった円は、直径にしておよそ十メートル程度はあろうかという巨大なものだ。
光の輪の拡大が止まると、今度は魔導言語がそこに描かれていく。あまりに古く、見たこともない文字があるなと頭の片隅でぼんやりと考えつつも、眼前に広がった巨大な魔法陣を前にスイは言葉を失っていた。
カンディスの指示によって、生徒達が離れていく中。
ついに完成した魔法陣からは、膨大な――これまで感じたこともないぐらいの凄まじい魔力の奔流が溢れだし、その場にいた誰もが身体を強張らせた。
学園長であるカンディスはこの時、絶望が広がったと後に語る。
目の前に現れた巨大な魔力は、紛れも無く天魔級――もしくはそれに準ずるか、あるいはそれ以上である何かだ。
強大な力は圧倒的な強者の気配を漂わせ、むしろその影響を受けるはずのスイが何も動じることなく立っている姿には、恐らく恐怖で動けないのだと当たりをつけていた。
しかし、一方のスイは――目の前に姿を浮かべていく黄金の光と巨躯に、ただただ見惚れていた。
黄金の鱗をまとった龍、金龍。
かつて文献でスイが見たその姿は、お伽話か神話か。
そういった書物においてのみ語られていた存在だ。
確かに現在に於いても竜は存在しているが、巨大な翼を携えた『飛龍種』などと呼ばれる龍は存在していない。
竜とは巨大なトカゲのようなものであり、それだけでも脅威ではあるが、龍では話が違ってくる。
絶対的な空の覇者。
天魔よりも珍しく、神話では自尊心の強い最強の種族とまで謳われている。
そんな存在が、〈使い魔〉として契約するなど、有り得ないだろう。
――終わった。
カンディスは眼前の光景を見つめて、心の中で呟いた。
文字通りに、間違いなくスイは――逆鱗に触れたと言ってもいいだろう。
グルルルと喉を鳴らしながら金龍はスイを見つめ、紅玉のような赫灼とした瞳を細めて顔を近づけた。
《――銀色の髪に蒼い瞳。なるほど、喚び出したのはおまえか》
金龍――ファラはこうして、スイとの邂逅を果たし、彼と共に歩く決意をするのであった。
《――遠い約束が、ようやく果たされる》
この時、ファラが呟いた一言。
その言葉が意味するものを、この時のスイは知る由もなかった。
金龍――ファラが〈使い魔〉となった後も、スイの生活はあまり変化しなかった。
―――――とは言え、生徒会に入ったり、王城で一悶着を起こしたりと、やはり普通の生徒とは違った方向で動いてはいるものの、これまでマンツーマン制の授業しかしてこなかったスイに、『生徒にとっての常識』というものが一切通じていないのは事実である。
自分が携わってきた一件などが、決してそういった事実の範疇を飛び出しているなどと気付くはずもなく、そもそもスイに協調性といったものはどこか欠けている。
ファラの召喚であったり、レイアとの決闘騒動の発端ともなった、生徒会への特殊な立ち位置での参加など、彼を取り巻く環境は普通とは到底言い難いのだが、当の本人はどこ吹く風とでも言わんばかりにお構いなしだ。
どこか周囲とはずれたスイの日々は、また王立図書館で一つの騒動を起こすことになるのであった。
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