あなたが必要

福猫

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第3話

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「タケル、どうした」

「……」

「タケル?」

茉莉が身体に触れようとしたその時、タケルの顔が猫の顔になり化物に変身した。

「元に戻ったのに何で」

驚いた顔で茉莉が見つめると化物になったタケルは茉莉を押し倒し覆い被さった。

「タケル…」

「俺、化物人間になってしまった」

「……」

「……」

タケルは茉莉から離れ立ち上がると口を開いた。

「こんな俺、必要か?」

「……」

無言で茉莉が立ち上がると再びタケルが口を開いた。

「茉莉、人間界に帰って普通の人間と結婚し幸せな人生を送れ」

「タケル…」

「化物になった俺は幸せになれない、百合の元に逝って詫びるよ」

そう言ってタケルが歩き出そうとしたその時、茉莉が叫んだ。

「百合は生きてる」

「生きてる…」

背を向けたままタケルは立ち止まり口を開いた。

「茉莉、百合を頼む」

「タケル!」

走っていくタケルの姿を茉莉はじっと見つめ立ち尽くした。

そこへルタが現れた。

「茉莉、タケルは?」

「……」

「茉莉?」

背後からルタが身体に触れると茉莉は涙を流しながら振り向きルタは驚いた。

「どうした、なぜ泣いてるんだ」

「タケルが…」

「タケルがどうしたんだ、タケルはどこだ」

「元に戻ったのに化物人間になっちゃった」

「え…」

「ルタ、どうしょう俺、タケルを助けることができない」

「茉莉…」

悔し涙を流す茉莉の姿を見つめながらルタは茉莉を抱きしめ口を開いた。

「茉莉とってタケルは必要なんだろ、愛してるんだろ、化物人間になってもタケルはタケルだろ側にいてやれ」

「ルタ」

「……」

茉莉から離れルタは優しく微笑みながら口を開いた。

「タケルに伝えておいてくれ百合のことや城のことは心配するなと」

「……」

「それともし城に戻りたくなったら遠慮せず戻ってこいと伝えてくれ」

「わかった」

「茉莉、タケルのこと頼むな」

涙を流す茉莉の涙を手で拭いながらルタが口にすると茉莉が口を開いた。

「タケルのこと思ってる俺と何で付き合ってくれたんだ?」

「あの時は本気で茉莉のこと愛してたから茉莉の気持ちをタケルから俺に向けたかっただから何度も何度もお前に告白をしお前を手に入れた…だけど俺達は別れた」

「…ゴメン…」

「何で謝るんだ」

「城に戻るよ」

「ありがとうルタ」

背を向けるとルタは百合の元に向かい茉莉はタケルの元に向かった。

その頃、タケルは弱い心で現れた森林の中を歩いていた。

「……」

異変に築いたタケルは立ち止まりまわりを見渡した。

「ここはどこだ」

「お前の弱い心で現れた森林だ」

「誰だ」

警戒をしながらまわりを見渡していると近づいてくる自分の姿にタケルは驚いた。

「俺がもう1人で…どうなってんだ」

「お前は茉莉を愛しているのにわざと茉莉を避けている」

「避けるに決まってるだろこんな猫の顔…化物人間なんて誰が愛してくれるんだ…」

「他の者達はどうか知らないが1人だけで愛してくれる者がいるじゃないか」

「そんな者いるわけ」

そう言って自分に目線を向けたタケルは森林ではなくただの道端に驚いた。

「森林が消え俺も消えた、どうなってんだ」

「タケル!」

「……」

茉莉に目線を向けたタケルは逃げようと背を向け歩き出した。

「待てよ」

茉莉はタケルに駆け寄り手首を掴むと動きを止めた。

「手を離せ」

顔を合わせないままタケルが口にすると茉莉が口を開いた。

「離さない、この手を離したらタケルに会えないような気がするから」

「……」

「タケルが行くところ俺もついていく」

「今の俺は化物だ、俺と一緒にいたら危険な目に遭うぞ」

「……」

タケルの手首から手を離すと茉莉はタケルの前に立ち見つめた。

「……」

今の顔を見られたくないタケルは顔をそらした。

その姿を見て茉莉は口を開いた。

「顔をそらすな、俺を見ろ」

「……」

言われてもタケルは顔をそらし続けた。

そんな態度に茉莉はタケルの顔を掴み自分の方に向かせ手を離すと見つめた。

「……」

「見るな」

再びタケルが顔をそらすと茉莉が口を開いた。

「俺は猫の顔、好きだよ」

「俺に気をつかうな」

「気をつかってないよ、俺は本気で言ってる」

「……」

そらしている顔をタケルは茉莉に向け見つめた。

その後、タケルと茉莉は無言で見つめ合い続けた。

それから暫くして茉莉が行動を起こした。

それは…。

「好きだよ」

愛の告白を口にすると茉莉はタケルに顔を近づけ唇を重ねた。

「……」

「……」

唇を離すと茉莉は驚いた顔で見つめるタケルに口を開いた。

「俺はタケルが必要だから側にいさせて」

そう言って茉莉は再びタケルに顔を近づけ唇を重ねた。

その後、茉莉は唇を離しタケルを見つめた。

「タケル」

「元の顔に戻るかわらないんだぞ、一生この顔…化物かもしれないんだぞ…それでもお前は俺の側にいたいと言うのか」

「側にいたい」

真剣な顔で茉莉が見つめるとタケルの目から涙が流れた。

その涙に茉莉は驚き声をかけた。

「どうしたんだ?」

「お前の言葉が嬉しくて涙が流れたんだ」

「……」

茉莉は手を伸ばしタケルの涙を拭った。

「ありがとう茉莉」

そう言ってタケルは茉莉を抱きしめた。

その後、タケルと茉莉は見つめ合い顔を近づけ唇を重ねた。

ー城の中ー

ルタの部屋のベッドで百合は眠っていた。

「うう~ん」

ゆっくり目を開くと百合はゆっくり身体を起こした。

「ここはルタの部屋」

「百合、目が覚めたか」

「ルタ、あなたが私の身体と傷を手当てしてくれたの」

「具合はどうだ」

ベッドにルタが近づくと百合が口を開いた。

「何で助けたの」

「え…」

「タケルに傷をつけられた時、死ぬ覚悟はできてた、あの時、タケルに殺されるなら本望だと思った」

「百合…」

「タケルに殺されるほどのことを私はタケルにしたんだもの」

そう言って百合の目から涙が流れた。

その姿を見てルタは百合を抱きしめた。

「ルタ、何を」

「百合、お前は俺が守るから泣くな」

「ルタ…」

「タケルのこと忘れるまで側にいるから」

そう言ってルタは百合の顔を見つめた。

百合は涙を拭い口にした。

「ありがとうルタ」

「百合」

「ルタ」

ルタと百合は見つめ合いその後、口づけを交わした。

その頃、タケルと茉莉は歩きの途中で見つけた小屋の中で座りながら休んでいた。

「タケル、お腹空いてないか」

「茉莉は?」

「お腹空いた」

「俺が食べ物を取ってくるから茉莉はここにいろ」

そう言ってタケルが立ち上がると茉莉も立ち上がり口を開いた。

「気をつけていってこいよ」

「あぁ」

返事をしタケルが出かけていくと茉莉も近くで食べ物を探すため出かけた。

「果物とかあったら良いよな」

キョロキョロしながら歩いていると突然、現れた海賊服の男性とぶつかり茉莉は倒れた。
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