花だって恋をする

第9話

「お邪魔だったかしら」

桃が出入り口で立ったまま口にすると林は立ち上がり桃に近づいた。

「もしかして見てました？」

「キスのこと？それとも林が藤に覆い被さってるところ？」

「あんな風になった理由があって足が痺れた藤さんが倒れかけようとしたから俺は支えようとして藤さんを覆い被さるようなことに…」

「言っとくけど藤には恋人がいるから」

「俺と同じパティシエなんでしょ、フランスに行くとか行かないとか」

「林に話したんだ」

「俺がパティシエだから」

「新作のケーキ？」

テーブルの上にある皿にのったケーキを見ながら桃が口にすると林が口を開いた。

「まだあるから食べてください」

「林」

「はい」

「私の予想だけど藤は恋人と別れるかも」

「フランス行きが原因で？」

林が目線を向けると桃も目線を向け頷いた。

「……」

無言で桃に向かってお辞儀をすると林は部屋を出ていき階段をおりた。

そして林は接客をしている藤の花の藤の姿を見つめるとその場を離れていった。

藤の花の藤が接客をし続け午後6時、仕事を終え店の前に出している花を中に入れると店を閉め階段をあがった。

そして藤の花の藤はドアを開き声をかけた。

「桃さん、店を閉めました」

「ありがとう」

ケーキを口にしながら桃が口にすると藤の花の藤が口を開いた。 

「林さんは？」

「帰ったわよ」

そう言ってケーキを食べ終えると桃は皿を片付け始めた。

藤の花の藤が部屋に入らず立っていると桃が声をかけた。

「何で中に入らないの？」

「和樹が心配するといけないから帰ります」

「わかった、気をつけてね」

「はい」

ドアを閉め階段をおりると藤の花の藤は歩きだし和樹の家に向かった。

「7時かまだ仕事してるよな」

そう言って藤の花の藤は家に向かわず和樹が働いている洋菓子店に向かった。

そして藤の花の藤は驚く光景を見た。

「和樹!」

「……」

女性のパティシエに唇を奪われた和樹は藤の花の藤の声に驚き和樹は女性のパティシエを慌てて離れさせ口を開いた。

「藤!」

「和樹さん、誰ですか？」

女性のパティシエが問いかけると和樹は返事をせず藤の花の藤を見つめた。

「藤…」

「……」

藤の花の藤は何も言わず歩きだし離れていった。

「藤!」

藤の花の藤を追いかけようと和樹が歩き出そうとしたその時、女性のパティシエが手首を掴んだ。

「行っちゃダメ」

「……」

「私、和樹さんが好きなの」

「……」

和樹が驚いた顔で見つめる頃、藤の花の藤は涙を流しながら歩いていた。

それから暫くして雨が降り出し藤の花の藤は雨に濡れながら歩いた。

「……」

「藤さん!」

「……」

立ち止まり振り向いた藤の花の藤は傘をさしながら近づいてくる林を見つめた。

「林さん!」

「傘もささないで歩いていると風邪をひきますよ」

そう言って林は藤の花の藤を側に引き寄せた。

「林さん、家に帰ったんじゃ」

「家に帰ろうとしたんだけど店に寄って仕事して家に帰ろうとしたら雨が降りだして店に傘があったからさして家に向かってたら藤さんを見かけて声をかけたんだ」

「林さんの家に行って良いですか？」

「何かあったんですか？」

「家に帰りたくないんです」

「わかりました、行きましょう」

涙を流す藤の花の藤の涙を手で拭うと林は藤の花の藤を連れて歩き出した。

その姿を雨に濡れながら和樹が見つめていた。