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第8章 金級ダンジョン攻略

252.プラーントゥ大陸に戻ったら

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 完全復活には少し時間が必要だったけど、気持ちの整理はついた。
 意を決して最初にツキを。
 それからユキを顕現する。

「……初めまして。これからよろしくね」

 あの日までの子たちとは顔付きが少し違う。
 かと言って顕現し始めた頃より魔石の等級が上がっているせいか能力値は初期に比べるとかなり高く、凡そ5割強といったところか。人の魔力による顕現を代々続けることでより強くなるなら、この子たちはあの子たちの子どもかな。

「名前は……風神・雷神にします」
「フージン?」
「ライジン?」

 ユキが風神。
 ツキが雷神。

「元の世界の風と雷の神様です。すばしっこいこの子たちにはお似合いかなって」
「ハナも名前を変えた方が良いか?」
「それはレイナルドさんにお任せします。呼び易い名前が良いですよ」
「ふむ……」

 考える素振りを見せるレイナルドさんに、この人に預けて良かったと思う。
 名前がどうでもきっと大切にしてくれる。

「あとは……」

 両側におとなしくお座りしている魔豹ゲパールの視線を感じながら手の上の魔石を見つめる。
 魔力だけだとダンジョンで見た姿になり、恐らく30分程度で環境に馴染めず消えてしまうと思われる。であれば何割くらいを神力に変えるのか、だが。
 魔豹ゲパールを100%神力で顕現したら大きさは倍以上になった。神具『住居兼用移動車両』Ex.の居間でやらかしたものだから、家具が全部端に追いやられて片付けが大変だったのは良い思い出だ。
 3メートルあった白梟が倍の大きさ……船内でそれは、さすがによろしくない。
 いや、普通に3メートルでも相当である。

「ちょっとデッキで試しても良いですか? この子の大きさを考えると屋内は厳しい気がして来ました」
「そういえばデカかったな」
「えっ。魔豹ゲパールが3頭もいる!」

 レイナルドさんと話していたら、出入口の方からウーガさんの喜色に満ちた声。エニスさんとドーガさんも一緒だ。

「どうして! レン、大丈夫なの?」
「思っていたよりは。お待たせしてごめんなさいでしたが……この子、雷神です。今日から一緒に寝ますか?」
「……いいの?」

 不安そうに、本当に大丈夫なのかと確認して来るウーガさん。
 その気持ちが嬉しい。

「はい。今日からまた戦闘でも力になってもらう子たちですし、仲間同士コミュニケーションは取っておいた方がいいですよね」
「は……ははっ」

 びっくりした後で、笑う。
 泣きそうにも見える笑顔だったけど「ありがとう」と言ってくれた。

「レンありがとう、これでも俺も手足を伸ばして寝れる……!」
「寝不足も解消される」

 ドーガさんとエニスさん。
 うん、二人には俺も感謝してる。魔豹ゲパールを顕現出来なくなっても二人は何も言わずにいてくれたんだから。

「その手の魔石は?」
「トラントゥトロワのボスの魔石です。あの梟はもふもふだったから、神力で顕現させたら環境に馴染んでくれないかな……と」

 3人に説明している内に、次々とパーティメンバーが食堂にやって来る。
 30分後に集合と事前に知らせてあるのだから当然だ。
 彼らは一様に魔豹ゲパール3頭いることに驚いて、俺を心配して、もう大丈夫だと知って喜んでくれた。

「デッキに行くのは後だな」
「ですね」

 全然オッケーです。




 食堂で話し合っている間に船は港を出発した。
 話し合いの内容は主に今後のスケジュールについてだった。
 船にいる間は自由。
 港町ローザルゴーザに到着したら荷を下ろしている間に俺たちは他所で食事を済ませ、トゥルヌソルに向かう。その後はレイナルドさんが王城に向かわないとならないので、グランツェパーティとバルドルパーティは休暇。9月初め頃を目途に例の未踏破金級オーァルダンジョンに挑む。

「いよいよだな」

 ニヤリと興奮した様子で笑うゲンジャルさん。
 ゴンッと両手の拳を強くぶつけたウォーカーさん。
 二人の顔を見るだけでも、そのダンジョンの踏破を彼らがどれだけ望んでいるのか見て取れた。

「そういえば次に挑むダンジョンの名前はなんていうんですか?」
「セーズだ」
「セーズ……」
金級オーァルダンジョンの中でも難易度が高い。あれを経験していると、トラントゥトロワは銀級アルジョンのようだった」
「そこまでですか」
「とっくに攻略されていて地図があったからってのも大きいけどな」

 内心でひぃっと悲鳴を上げつつ話を聞いていると、9月まで休暇と言われて本当に休む人はいなさそうだ。俺も師匠セルリーのところで僧侶としても薬師としてもまだまだ自分を成長させたい。

「あ、それと」

 ふと思い出したようにレイナルドさん。

「おまえたちも金級オーァル冒険者になったんだ。ギルドでも今までとは扱いが変わるから気を付けろよ」
「あ……」

 こちらもいま思い出したバルドルさん達が面倒臭そうな顔を見合わせていた。昇級おめでとうってお祝いしてくれる人ばかりじゃない。特例での昇級なんだからあれこれ言ってくる人も多いと思う。だからってあの日、特例を受け入れて昇級するんじゃなかったとは思わない。

「まあ仕方ないな」
「甘んじて受け入れるしかない」

 諦め顔の面々に年上組が笑っていた。
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