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第8章 金級ダンジョン攻略
248.設計図と素材と
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「花火」でダンジョン産設計図が登録されているかを確認して欲しいと頼んだ後、ウォーカーさんはレイナルドさんにメッセンジャーを送り、いまも町にいるヴァンさんに確認を依頼することになった。
ツリーハウスの中の探索を一日掛けて済ませ、森の入口に全員が集合したのはもう陽が沈もうという時間帯だった。
一通りの報告を終えた結論は。
「手掛かりになりそうなものは無かったな」
本当にその一言に尽きる。
俺たちが見て来た小屋の中もそうだったけど、備え付けの家具に焦げ跡や傷が残っていた以外は入手が容易な下級魔物や魔獣の素材、壊れた文具、たぶん食材だったんだろう成れの果てが見つかったくらいだ。
「備え付けの家具の高さから見るとキクノ大陸の生活様式が近い気もするんだが」
「木の上での生活もそれっぽい」
「けど、それだけで断定は出来んだろ」
「そもそもキクノ大陸の連中が隠れてこういうことするってのが、らしくないわ」
「それな」
「一先ず邸に戻ろう。もう暗くなる」
レイナルドさんに促され、全員で帰宅した。
「ありましたよ「花火」」
帰宅してすぐ、キッチン付きの部屋に全員が揃ったのを見てヴァンさんが報告した。
「登録名は「打ち上げ花火」。発見されたのは2年前の秋です。金級ダンジョン「トラントゥトロワ」の第47階層から第48階層に変わる辺りに宝箱があり、その中から発見されたそうです。設計図には大衆娯楽のためのアイテムとあり、担当官がそんなものに価値は無しという判断で下級設計図となっていました」
ヴァンさんは調べた内容を記載した紙面をレイナルドさんに手渡す。
「これがどういう経緯でカンヨン国を灰にするような武器になるのか、私には想像も出来ませんが」
「……え」
じっ……とみんなの視線が自分に集中するのが判って焦る。
俺もそこまで詳しいわけじゃない。
「えっと……」
「この花火が、ああいう火の武器になるのか?」
「花火は、こういう丸い球みたいな形をしていて、中に火薬と、火に色を付けるための化学薬品? とかが入ってて、筒に入れて、ドーンと空に打ち上げたら夜空に火の花が咲くんです」
「火の花……」
「火の色って魔力の多い少ないの違いじゃなくて?」
「こっちの世界ではそうなのかも。俺の故郷には魔力がないので、薬品……薬品以外にもあったのかもしれませんけど、とにかく一手間掛けて火に色を付けてました」
俺の説明が下手なら、皆は実物を見たことが無いんだから尚のこと混乱する。
「実際に作ってみるか? 素材が採れるのは何階層だ」
「設計図によると49階層以降だが」
「待ってくださいっ。火薬は本当に危なくて、花火なんて専門の職人じゃないと作れませんよ!」
「ふむ……その専門の職人って、例えばどういう職業だ?」
聞かれて、黙る。
さっぱり判らない。
なので全員で設計図を覗き込んで作り方を確認する。
「あ、俺ダメ」
「任せた」
「適材適所」
ゲンジャルさんとモーガンさん、ウーガさんが一抜けし、他のメンバーが笑いつつも読み進める。
「……これは、薬師もいけるんじゃないか?」
「ちょ……怖いんですけど!」
「セルリーさんなら喜んで挑戦しそう……」
「うわ……」
師匠なら絶対に挑戦する。
しかも彼女になし崩し的に協力させられる自分が見える。なんてこった。
「あとは魔法使い、魔道具師、……鍛冶師の協力も必要そうだな」
「必要な素材の数は25種類。全部トラントゥトロワで揃うが49階層以降ってことはしばらく先になるか」
「ぁ、あの! 作るのは良いんですがっ、万が一に備えて防御系の魔道具と、離れた場所に作業場を準備してくださいね」
「そこまで……あぁしかしカンヨンのアレに繋がるんだからいくら警戒してもし過ぎってことは無いか」
「です!」
なんとか説得出来たかな、と俺が一安心している間にも話は進み製造実験はプラーントゥ大陸で行われることが決まっていく。俺たちはこのまま金級ダンジョン「トラントゥトロワ」の攻略を進めて、素材採取だ。
「ギルドへ設計図の確認に行きましたから、ついでにゼスという男についても調べてきましたよ」
「どうだった?」
「いまはギァリッグ大陸から派遣されたギルド職員ということでこの町に滞在していますが、元々はインセクツ大陸の出身者のようです」
インセクツといえば、今回の大陸連合には加わらなかった南の大陸だ。
「ギァリッグ大陸の方へ確認もしていますが、これには少し時間が掛かります。判明次第お知らせします」
「そうしてくれ」
「それからレンくんが気にしていた件ですが」
ちらと見られる。
気にしていたって言ったら……。
「残念ながらカンヨン国があの状態ですし、今日皆さんが探索に向かった樹上の村のように地図に載っていない町や村を探し出すには人手も時間も足りませんから、花火を作成中に爆発を起こしたかもしれない場所というのを見つけるのはかなり難しいと言わざるを得ません」
「そうなんですね」
マーヘ大陸の人たちが火薬の可能性に気付いたきっかけは気になるが、元が「打ち上げ花火」だと判明した以上は手間暇かけて調べる必要はないかな……と思ったら。
「とはいえ、あんな恐ろしい火の武器が秘密裏に製造されているとしたら放ってはおけませんので、今後はマーヘ大陸だけでなく、他所の土地も含めて調査を進めます。件の土地が判明したら、こちらもすぐにお知らせしますね」
「あ、はい。お願いします」
なるほど、そういう可能性もあるんだなぁと学んでいる間にも話は進み、レイナルドさんがいろいろ決定していく。その辺は俺に口出しできることではないので静かに聞き流す。
最終的にはこのまま町にいてもゼスという男を含む面倒ごとに関わる可能性が高いことから、早々にダンジョンに戻ろうって結論に至った。
俺たちの場合は神具『野営用テント』があるから、他のパーティに比べて疲労が蓄積するってこともない。町に出てくる度に面倒に巻き込まれるくらいなら1ヵ月くらい籠った方がよほど居心地が良いってもんだ。さすがに大々的にそうは言えないけれど。
「さくっと49階層目指すか」
「申し訳ないけどその途中で抱き枕もお願いしマッス!」
ウーガさんが勢いよく手を挙げた。
それもあったか、って皆が笑った。
ツリーハウスの中の探索を一日掛けて済ませ、森の入口に全員が集合したのはもう陽が沈もうという時間帯だった。
一通りの報告を終えた結論は。
「手掛かりになりそうなものは無かったな」
本当にその一言に尽きる。
俺たちが見て来た小屋の中もそうだったけど、備え付けの家具に焦げ跡や傷が残っていた以外は入手が容易な下級魔物や魔獣の素材、壊れた文具、たぶん食材だったんだろう成れの果てが見つかったくらいだ。
「備え付けの家具の高さから見るとキクノ大陸の生活様式が近い気もするんだが」
「木の上での生活もそれっぽい」
「けど、それだけで断定は出来んだろ」
「そもそもキクノ大陸の連中が隠れてこういうことするってのが、らしくないわ」
「それな」
「一先ず邸に戻ろう。もう暗くなる」
レイナルドさんに促され、全員で帰宅した。
「ありましたよ「花火」」
帰宅してすぐ、キッチン付きの部屋に全員が揃ったのを見てヴァンさんが報告した。
「登録名は「打ち上げ花火」。発見されたのは2年前の秋です。金級ダンジョン「トラントゥトロワ」の第47階層から第48階層に変わる辺りに宝箱があり、その中から発見されたそうです。設計図には大衆娯楽のためのアイテムとあり、担当官がそんなものに価値は無しという判断で下級設計図となっていました」
ヴァンさんは調べた内容を記載した紙面をレイナルドさんに手渡す。
「これがどういう経緯でカンヨン国を灰にするような武器になるのか、私には想像も出来ませんが」
「……え」
じっ……とみんなの視線が自分に集中するのが判って焦る。
俺もそこまで詳しいわけじゃない。
「えっと……」
「この花火が、ああいう火の武器になるのか?」
「花火は、こういう丸い球みたいな形をしていて、中に火薬と、火に色を付けるための化学薬品? とかが入ってて、筒に入れて、ドーンと空に打ち上げたら夜空に火の花が咲くんです」
「火の花……」
「火の色って魔力の多い少ないの違いじゃなくて?」
「こっちの世界ではそうなのかも。俺の故郷には魔力がないので、薬品……薬品以外にもあったのかもしれませんけど、とにかく一手間掛けて火に色を付けてました」
俺の説明が下手なら、皆は実物を見たことが無いんだから尚のこと混乱する。
「実際に作ってみるか? 素材が採れるのは何階層だ」
「設計図によると49階層以降だが」
「待ってくださいっ。火薬は本当に危なくて、花火なんて専門の職人じゃないと作れませんよ!」
「ふむ……その専門の職人って、例えばどういう職業だ?」
聞かれて、黙る。
さっぱり判らない。
なので全員で設計図を覗き込んで作り方を確認する。
「あ、俺ダメ」
「任せた」
「適材適所」
ゲンジャルさんとモーガンさん、ウーガさんが一抜けし、他のメンバーが笑いつつも読み進める。
「……これは、薬師もいけるんじゃないか?」
「ちょ……怖いんですけど!」
「セルリーさんなら喜んで挑戦しそう……」
「うわ……」
師匠なら絶対に挑戦する。
しかも彼女になし崩し的に協力させられる自分が見える。なんてこった。
「あとは魔法使い、魔道具師、……鍛冶師の協力も必要そうだな」
「必要な素材の数は25種類。全部トラントゥトロワで揃うが49階層以降ってことはしばらく先になるか」
「ぁ、あの! 作るのは良いんですがっ、万が一に備えて防御系の魔道具と、離れた場所に作業場を準備してくださいね」
「そこまで……あぁしかしカンヨンのアレに繋がるんだからいくら警戒してもし過ぎってことは無いか」
「です!」
なんとか説得出来たかな、と俺が一安心している間にも話は進み製造実験はプラーントゥ大陸で行われることが決まっていく。俺たちはこのまま金級ダンジョン「トラントゥトロワ」の攻略を進めて、素材採取だ。
「ギルドへ設計図の確認に行きましたから、ついでにゼスという男についても調べてきましたよ」
「どうだった?」
「いまはギァリッグ大陸から派遣されたギルド職員ということでこの町に滞在していますが、元々はインセクツ大陸の出身者のようです」
インセクツといえば、今回の大陸連合には加わらなかった南の大陸だ。
「ギァリッグ大陸の方へ確認もしていますが、これには少し時間が掛かります。判明次第お知らせします」
「そうしてくれ」
「それからレンくんが気にしていた件ですが」
ちらと見られる。
気にしていたって言ったら……。
「残念ながらカンヨン国があの状態ですし、今日皆さんが探索に向かった樹上の村のように地図に載っていない町や村を探し出すには人手も時間も足りませんから、花火を作成中に爆発を起こしたかもしれない場所というのを見つけるのはかなり難しいと言わざるを得ません」
「そうなんですね」
マーヘ大陸の人たちが火薬の可能性に気付いたきっかけは気になるが、元が「打ち上げ花火」だと判明した以上は手間暇かけて調べる必要はないかな……と思ったら。
「とはいえ、あんな恐ろしい火の武器が秘密裏に製造されているとしたら放ってはおけませんので、今後はマーヘ大陸だけでなく、他所の土地も含めて調査を進めます。件の土地が判明したら、こちらもすぐにお知らせしますね」
「あ、はい。お願いします」
なるほど、そういう可能性もあるんだなぁと学んでいる間にも話は進み、レイナルドさんがいろいろ決定していく。その辺は俺に口出しできることではないので静かに聞き流す。
最終的にはこのまま町にいてもゼスという男を含む面倒ごとに関わる可能性が高いことから、早々にダンジョンに戻ろうって結論に至った。
俺たちの場合は神具『野営用テント』があるから、他のパーティに比べて疲労が蓄積するってこともない。町に出てくる度に面倒に巻き込まれるくらいなら1ヵ月くらい籠った方がよほど居心地が良いってもんだ。さすがに大々的にそうは言えないけれど。
「さくっと49階層目指すか」
「申し訳ないけどその途中で抱き枕もお願いしマッス!」
ウーガさんが勢いよく手を挙げた。
それもあったか、って皆が笑った。
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