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第8章 金級ダンジョン攻略
閑話:ダンジョン近くの町で(4) side:ウーガ
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朝からレンが来てくれたおかげで朝ごはんはとても美味しかった。
食べながら話を聞いていたらレンは朝早くからヒユナと庭で薬草採取デートをしていたらしく、弟の間の悪さには苦笑するしかない。まぁ相手がレンなら何の心配もないけど。
「今日の予定はー?」
「お昼にレイナルドさんをあっちに送ります!」
それ以外はフリーだっていうレンに、昨日の町散策の話をする。
果実水の専門店。
衣料や食材、雑貨の店。
武器や防具。
町の外での薬草採取――。
「どれも気になります」
「町の外で採取するなら、ついでにギルドで依頼があるかどうかも見て来ない? なんとなく冒険者の数そのものが少ない気がするし、薬草関係は不足してるかも」
「あ」
いま気付いたという顔を見合わせるレンとヒユナ。
「ダンジョンに近いんだから病院はありますよね? そこの様子も知りたいです」
レンの言葉に、エニス。
「ならレイナルドを送った後はレンを連れてもう一度町を回ったらいいんじゃないか。気になるもの全部見て回っても2~3時間で済む」
「ああ確かに。町自体そこまで大きくないしね」
俺も賛成しておく。
金級ダンジョンに挑んでいるのは俺たちだけって事前情報もあるし、病院に寄るにしたって僧侶が忙殺される心配はないはず。
「つーか、昼までだってまだ2時間以上あるんだから今の内にギルドだけ行って来よう。依頼や、町に不足しているものを先に確認しておけば今後の予定も立てやすくなるだろうし」
バルドルがリーダーらしく纏める。
色ボケしてるように見えてこういうところはちゃんとしてるから敵わないよね。
「じゃあ早速行こか」
「おう」
みんなが装備を整えている間に、レンが「みんなで町に行ってきます。お昼までには戻ります」とレイナルドに書き置きを残した。
装備と言っても散策用の簡易的なもの。
俺もいつもの弓じゃなく上着の下に投擲用の小型ナイフを仕込んでいて、あとは財布。冒険者のタグに刻んだ証紋で買い物出来るのが一般的だけど土地によっては現金だけって場合もあるからね。
邸からギルドまでは歩いて15分。
バルドルパーティ6人プラスヒユナで移動した。
最近は他所の冒険者が入って来ること自体珍しいのか道行く人たちからの視線が集まって何となく居心地が悪い。別に悪意を向けられているわけではないんだけど。
あー……でもまぁ大陸を制圧した余所者には違いないからジロジロ見られるくらいは仕方ないか。
「あそこがさっき言った果実水の店で、向こうが雑貨屋」
「おー……趣のある店構えですね」
ぼろいって言わないのがレンの良いところだ。
内心で苦笑しつつ、いざギルドへ。
昨日は外で待機していた面々も今日は中に入って、何とも言えない顔で辺りを見渡している。大通りの店構えだけじゃなく此処もそう。人気はそれなりにあるし汚いとかじゃないんだけど、金級ダンジョンの最寄りの町とは思えないくらい寂れているんだよね。
「トゥルヌソルと比べるべきでないのは理解しているが……此処まで違うものか?」
トゥルヌソルは街の中に鉄級と銅級ダンジョンがあって、外には銀級が2か所、更に未踏破の金級ダンジョン最寄りの街でもあるから賑わいが他の比にならないのは当然なんだけど、それにしたって閑散とし過ぎなんだよ。
「……何かおかしくないですか?」
「んー……レイナルドさんも昨日から一人でいろいろ調べてるっぽいし、アッシュさんの旦那さんたちも何か気になるみたいだったし……」
レンとヒユナが小声で囁く。
ふーん。
上の人たちは何かしら察してて動き始めてるってことかな。
「それならそれでいいんじゃない? 正式に任務として言い渡されるまでは邪魔しないのが一番だもん。指示があるまでは休暇楽しも!」
「……ですね」
というわけで依頼書が張り出された掲示板を見てみるけど、こっちも閑散としていた。
薬草関係はいつでも持ち込み歓迎、報酬に些少の上乗せありという表記から、不足しているけど資金にはそれほど余裕が無いのが見て取れる。
依頼が少ないのは、何かを必要とする人がいない。
つまり助けを必要とするほど求められるものがないってことだ。……金級ダンジョン最寄りの町なのに?
皆で顔を見合わせた。
うん、これオカシイわ。
「あれ?」
ふと背後から声が掛かる。
「君らレイナルドパーティの子たちだよな」
「え……」
振り返ったら若い男の二人組。
しかも顔見知りだったので一気に高まった警戒心は霧散する。
「ケヴィンさんとルドルフさん」
金級ダンジョンの入退場を監視しているギルド職員たちだ。出身はグロッド大陸だったっけ。
「せっかくの休みなのに依頼か?」
「家で寝てばっかいるわけにもいかないだろ」
バルドルが前に出て対話役を買って出た。
「あんま楽しい依頼はないぞ」
「そうらしい。此処はいつもこんなか?」
「まぁそうだな。今後はどうか判らんが」
ニヤッて意味深に笑われた。
これは、あれかな。
とっくにレイナルドとは情報共有済みって感じ?
となると何かしらまた厄介ごとに巻き込まれるかなぁ……なんて思ってたら。
「君、名前は?」
「へ?」
ルドルフに声を掛けられて少し驚いた。こっちだけ名前知っているのもなんだから教えるのは構わないんだが。
「ウーガ、です」
「ウーガか。じゃあウーガ、この町に滞在している間だけ俺と付き合わない?」
「は?」
「えっ」
声は背後から、しかも複数。
驚いたのは俺だけじゃなかったらしい。
食べながら話を聞いていたらレンは朝早くからヒユナと庭で薬草採取デートをしていたらしく、弟の間の悪さには苦笑するしかない。まぁ相手がレンなら何の心配もないけど。
「今日の予定はー?」
「お昼にレイナルドさんをあっちに送ります!」
それ以外はフリーだっていうレンに、昨日の町散策の話をする。
果実水の専門店。
衣料や食材、雑貨の店。
武器や防具。
町の外での薬草採取――。
「どれも気になります」
「町の外で採取するなら、ついでにギルドで依頼があるかどうかも見て来ない? なんとなく冒険者の数そのものが少ない気がするし、薬草関係は不足してるかも」
「あ」
いま気付いたという顔を見合わせるレンとヒユナ。
「ダンジョンに近いんだから病院はありますよね? そこの様子も知りたいです」
レンの言葉に、エニス。
「ならレイナルドを送った後はレンを連れてもう一度町を回ったらいいんじゃないか。気になるもの全部見て回っても2~3時間で済む」
「ああ確かに。町自体そこまで大きくないしね」
俺も賛成しておく。
金級ダンジョンに挑んでいるのは俺たちだけって事前情報もあるし、病院に寄るにしたって僧侶が忙殺される心配はないはず。
「つーか、昼までだってまだ2時間以上あるんだから今の内にギルドだけ行って来よう。依頼や、町に不足しているものを先に確認しておけば今後の予定も立てやすくなるだろうし」
バルドルがリーダーらしく纏める。
色ボケしてるように見えてこういうところはちゃんとしてるから敵わないよね。
「じゃあ早速行こか」
「おう」
みんなが装備を整えている間に、レンが「みんなで町に行ってきます。お昼までには戻ります」とレイナルドに書き置きを残した。
装備と言っても散策用の簡易的なもの。
俺もいつもの弓じゃなく上着の下に投擲用の小型ナイフを仕込んでいて、あとは財布。冒険者のタグに刻んだ証紋で買い物出来るのが一般的だけど土地によっては現金だけって場合もあるからね。
邸からギルドまでは歩いて15分。
バルドルパーティ6人プラスヒユナで移動した。
最近は他所の冒険者が入って来ること自体珍しいのか道行く人たちからの視線が集まって何となく居心地が悪い。別に悪意を向けられているわけではないんだけど。
あー……でもまぁ大陸を制圧した余所者には違いないからジロジロ見られるくらいは仕方ないか。
「あそこがさっき言った果実水の店で、向こうが雑貨屋」
「おー……趣のある店構えですね」
ぼろいって言わないのがレンの良いところだ。
内心で苦笑しつつ、いざギルドへ。
昨日は外で待機していた面々も今日は中に入って、何とも言えない顔で辺りを見渡している。大通りの店構えだけじゃなく此処もそう。人気はそれなりにあるし汚いとかじゃないんだけど、金級ダンジョンの最寄りの町とは思えないくらい寂れているんだよね。
「トゥルヌソルと比べるべきでないのは理解しているが……此処まで違うものか?」
トゥルヌソルは街の中に鉄級と銅級ダンジョンがあって、外には銀級が2か所、更に未踏破の金級ダンジョン最寄りの街でもあるから賑わいが他の比にならないのは当然なんだけど、それにしたって閑散とし過ぎなんだよ。
「……何かおかしくないですか?」
「んー……レイナルドさんも昨日から一人でいろいろ調べてるっぽいし、アッシュさんの旦那さんたちも何か気になるみたいだったし……」
レンとヒユナが小声で囁く。
ふーん。
上の人たちは何かしら察してて動き始めてるってことかな。
「それならそれでいいんじゃない? 正式に任務として言い渡されるまでは邪魔しないのが一番だもん。指示があるまでは休暇楽しも!」
「……ですね」
というわけで依頼書が張り出された掲示板を見てみるけど、こっちも閑散としていた。
薬草関係はいつでも持ち込み歓迎、報酬に些少の上乗せありという表記から、不足しているけど資金にはそれほど余裕が無いのが見て取れる。
依頼が少ないのは、何かを必要とする人がいない。
つまり助けを必要とするほど求められるものがないってことだ。……金級ダンジョン最寄りの町なのに?
皆で顔を見合わせた。
うん、これオカシイわ。
「あれ?」
ふと背後から声が掛かる。
「君らレイナルドパーティの子たちだよな」
「え……」
振り返ったら若い男の二人組。
しかも顔見知りだったので一気に高まった警戒心は霧散する。
「ケヴィンさんとルドルフさん」
金級ダンジョンの入退場を監視しているギルド職員たちだ。出身はグロッド大陸だったっけ。
「せっかくの休みなのに依頼か?」
「家で寝てばっかいるわけにもいかないだろ」
バルドルが前に出て対話役を買って出た。
「あんま楽しい依頼はないぞ」
「そうらしい。此処はいつもこんなか?」
「まぁそうだな。今後はどうか判らんが」
ニヤッて意味深に笑われた。
これは、あれかな。
とっくにレイナルドとは情報共有済みって感じ?
となると何かしらまた厄介ごとに巻き込まれるかなぁ……なんて思ってたら。
「君、名前は?」
「へ?」
ルドルフに声を掛けられて少し驚いた。こっちだけ名前知っているのもなんだから教えるのは構わないんだが。
「ウーガ、です」
「ウーガか。じゃあウーガ、この町に滞在している間だけ俺と付き合わない?」
「は?」
「えっ」
声は背後から、しかも複数。
驚いたのは俺だけじゃなかったらしい。
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