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第8章 金級ダンジョン攻略
228.トラントゥトロワ(1)
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金級ダンジョンは60階層が最深部で、ボス部屋。
15階層ごどに一時帰還の魔法陣が設置されている。
「鉄級ダンジョンは30階層で5階層ごと、銅級ダンジョンは40階層で8階層ごと、銀級ダンジョンは45階層で10階層ごとだったから……特に決まりがあるわけじゃないんですね」
「決まり?」
「例えば倍ずつ増えるとか、決まった数が加算されるとか……」
あえて言うなら割り切れる数で転移陣が設置されていることだろうか。
俺とクルトさんの会話を、隣でバルドルさんが興味深そうに聞いている。
「神銀級と白金級ダンジョンは何階層まであるんですか?」
「神銀級は不明。踏破した奴がいないからな。ただし転移陣は3階層で見つかってる」
「へぇ!」
「白金級は80階層だよ。でも転移陣は5階層ごとにあるって」
バルドルさん、クルトさんが順番に教えてくれる。
その内容にちょっと驚いた。
80階層ある白金級ダンジョンの内部転移陣が、5階層ごとと、範囲を狭めて来た。神銀級が3階層ごとと聞いて「もしかして」って思ったけど、これだけで80階層以下とは確定にならなさそうだ。
10年経っても4階層までしか進めないっていうんだから、各階層がとんでもなく広いんだろうし……リーデン様が以前に、獣人族族は神様たちの予想に反して破竹の勢いでダンジョンを踏破していったけど神銀級の踏破には長い年月が掛かるだろうと言っていたのを思い出す。
むしろ80階層以上と考えた方が良いのかもしれない。
「同じ金級ダンジョンでも土地によって難易度が全然違うっていうのは……?」
「まずは広さ」
エニスさんが参加して来た。
「例えばマーヘ大陸には3つの金級ダンジョンがあって、そのうちの2つが未踏破だ。これはもう単純に、各階層が広すぎて次に進めないからだ。それでもカンヨン国内の方は31階層、スィンコ国内のは16階層まで進んでいるみたいだが」
「広くて、魔物が強い、とか?」
「まぁ魔物の強さは金級相当だから弱くはないけど、それはあまり問題にならないよ。そのための入場資格だし」
「いや、けど長期間倒されなかった魔物が強くなるってのはオセアンの銀級ダンジョンで証明されたから、いつまでも未踏破のダンジョンには強くて厄介な魔物がいるかもな」
バルドルさんの補足に「なるほど」と納得していたら今度はウーガさん。
「でも未踏破がいつまでも未踏破の最大の理由は、やっぱ広さだと思うな」
「根拠は?」
「階層が広いとさ、次に進むための道を探すだけで何日も掛かるでしょ」
「はい」
「そしたらいろいろと耐えられなくなるのさ。飯とか、飯とか、飯とか」
ご飯ばかりだった。
「それから寝床」
「自分の臭い!」
ゲンジャルさん、ミッシェルさん兄妹が加わって来た。
「プラーントゥ大陸の、俺たちが踏破を目指している金級ダンジョンも、2年経ってまだ31階層だ。毎度30階層の転移陣に飛んで、そこから31階層の途中だった地点に戻るまでにも数日掛かる。最低でも1ヵ月は籠らないと進度を進められないが、まともな食事、まともな寝床、まともな休息、そして番との癒しの時間も全部我慢して過ごす1ヵ月間の過酷さといったら!」
「うわぁ……」
吼えるゲンジャルさんから一歩退く。
彼らの場合はどうしても国との関りがあって、ダンジョンにばかり注力出来ないっていうのも大きな理由の一つな気がした。
とはいえ、彼らの訴えを聞いていると魔物の強さが欠片も問題になってなくて、それも驚く。
「つ・ま・り!」
「わっ」
背後からミッシェルさんに抱き着かれた。
「レンと、レンのテントが問題の大半を解決してくれちゃうから不安にならないでも大丈夫よ、ってこと」
「へ?」
思わず変な声が出た。
ミッシェルさんが首を傾げる。
「初めての金級ダンジョンが不安で情報収集しているんじゃないの?」
「あー……そう、ですね。事前に知っておきたい情報ではあったんですが」
ただの興味本位だと正直に言っていいものか。
迷っていたらレイナルドさん。
「こいつが今更そんなことで不安がるか?」
そんな疑わしそうな顔をしないでください。
その通りですけど!
「……これから挑むトラントゥトロワは既に踏破済みのダンジョンだ。大陸連合の制圧が始まってからは入場も制限されていたが、正しい道が敷かれているし、情報も出揃ってる。2か月もあれば攻略出来る」
「それでも2か月か……」
ウォーカーさんが貴重な情報をくれた。
1階層を移動するのに1日掛かる計算だけど、それも神具『野営用テント』があるからこそ出来る荒業を駆使して達成できる期間だろう。
「それに、金級ダンジョンは、魔剣や魔弓といった魔法武具もドロップする可能性がある」
「魔法武具!」
アッシュさんの補足にウーガさんの目が輝いた。
いつも欲しがってましたもんね。
「魔法武具を持っていないのはバルドル、エニス、ウーガ、ドーガ、レン、それからヒユナか」
金級ダンジョンの経験の有無ではっきり分かれている。クルトさんは宝箱からのゲットで運を使い果たしたって言ってたが、今回のダンジョンで魔法武具を獲得できる可能性は高いってこと。
「また楽しみが増えましたね」
言ったら、特にバルドルパーティの皆が良い笑顔だった。
浄化の旅の間に、俺たちが乗っていた船の人たちに頼んで2か月分の食材をプラーントゥ大陸から仕入れて来てもらったので、ダンジョンに入る前にそれらをテントに運び込んだ。
容量無限・時間停止のパントリーは本当にありがたい。
着替え良し。
防寒具良し。
防寒具は、このダンジョンには極寒の階層が複数あるからだ。情報を纏めて必要な人に売ってくれる冒険者ギルドにも感謝感謝である。暖炉で使う薪なども準備した。
師匠は今回は不在だけど、テントは最大人数の17人用で固定。
全員で一緒に食事が出来るよう3つの丸型の食卓に、椅子が6脚ずつ。
広いキッチン。
大きなパントリー。
全員でくつろいでもまだ余裕がある広いリビングは40帖くらい?
暖炉、ソファ、毛足の長い絨毯。
棚にはボードゲームやカードゲームも置いてある。
出入り口の脇には17個の魔石。
それぞれに転移陣が刻まれていて個室へ移動出来るようになっている他、登録した魔力以外は受け付けないから間違った部屋に入ってしまう心配もない。ただし手を繋ぐなど接触していれば魔力の持ち主と一緒に転移することは可能だ。
個室にはベッドと、トイレ、シャワー室。
クローゼット。
カーテン。
大きな窓は開閉不可だけど空調機能完備。
内装は全部屋共通で、窓から見える景色がテントの正面なのも同じだ。
広さは水回りも全部含めて6帖くらいだと思う。
「いつ見ても思うんですけど、もうテントじゃないですよねこれ」
ヒユナさんが恐ろしいものを見るような顔をしている。
「でもこれなら女性も金級ダンジョンの制覇を目指し易いだろ」
ドーガさんが宥めるように言う。
俺も同意見だし、ヒユナさんも頷かざるを得ない。
準備は終わった。
本命、プラーントゥ大陸の未踏破ダンジョンに挑む前の肩慣らし。
トラントゥトロワ攻略のスタートだ。
15階層ごどに一時帰還の魔法陣が設置されている。
「鉄級ダンジョンは30階層で5階層ごと、銅級ダンジョンは40階層で8階層ごと、銀級ダンジョンは45階層で10階層ごとだったから……特に決まりがあるわけじゃないんですね」
「決まり?」
「例えば倍ずつ増えるとか、決まった数が加算されるとか……」
あえて言うなら割り切れる数で転移陣が設置されていることだろうか。
俺とクルトさんの会話を、隣でバルドルさんが興味深そうに聞いている。
「神銀級と白金級ダンジョンは何階層まであるんですか?」
「神銀級は不明。踏破した奴がいないからな。ただし転移陣は3階層で見つかってる」
「へぇ!」
「白金級は80階層だよ。でも転移陣は5階層ごとにあるって」
バルドルさん、クルトさんが順番に教えてくれる。
その内容にちょっと驚いた。
80階層ある白金級ダンジョンの内部転移陣が、5階層ごとと、範囲を狭めて来た。神銀級が3階層ごとと聞いて「もしかして」って思ったけど、これだけで80階層以下とは確定にならなさそうだ。
10年経っても4階層までしか進めないっていうんだから、各階層がとんでもなく広いんだろうし……リーデン様が以前に、獣人族族は神様たちの予想に反して破竹の勢いでダンジョンを踏破していったけど神銀級の踏破には長い年月が掛かるだろうと言っていたのを思い出す。
むしろ80階層以上と考えた方が良いのかもしれない。
「同じ金級ダンジョンでも土地によって難易度が全然違うっていうのは……?」
「まずは広さ」
エニスさんが参加して来た。
「例えばマーヘ大陸には3つの金級ダンジョンがあって、そのうちの2つが未踏破だ。これはもう単純に、各階層が広すぎて次に進めないからだ。それでもカンヨン国内の方は31階層、スィンコ国内のは16階層まで進んでいるみたいだが」
「広くて、魔物が強い、とか?」
「まぁ魔物の強さは金級相当だから弱くはないけど、それはあまり問題にならないよ。そのための入場資格だし」
「いや、けど長期間倒されなかった魔物が強くなるってのはオセアンの銀級ダンジョンで証明されたから、いつまでも未踏破のダンジョンには強くて厄介な魔物がいるかもな」
バルドルさんの補足に「なるほど」と納得していたら今度はウーガさん。
「でも未踏破がいつまでも未踏破の最大の理由は、やっぱ広さだと思うな」
「根拠は?」
「階層が広いとさ、次に進むための道を探すだけで何日も掛かるでしょ」
「はい」
「そしたらいろいろと耐えられなくなるのさ。飯とか、飯とか、飯とか」
ご飯ばかりだった。
「それから寝床」
「自分の臭い!」
ゲンジャルさん、ミッシェルさん兄妹が加わって来た。
「プラーントゥ大陸の、俺たちが踏破を目指している金級ダンジョンも、2年経ってまだ31階層だ。毎度30階層の転移陣に飛んで、そこから31階層の途中だった地点に戻るまでにも数日掛かる。最低でも1ヵ月は籠らないと進度を進められないが、まともな食事、まともな寝床、まともな休息、そして番との癒しの時間も全部我慢して過ごす1ヵ月間の過酷さといったら!」
「うわぁ……」
吼えるゲンジャルさんから一歩退く。
彼らの場合はどうしても国との関りがあって、ダンジョンにばかり注力出来ないっていうのも大きな理由の一つな気がした。
とはいえ、彼らの訴えを聞いていると魔物の強さが欠片も問題になってなくて、それも驚く。
「つ・ま・り!」
「わっ」
背後からミッシェルさんに抱き着かれた。
「レンと、レンのテントが問題の大半を解決してくれちゃうから不安にならないでも大丈夫よ、ってこと」
「へ?」
思わず変な声が出た。
ミッシェルさんが首を傾げる。
「初めての金級ダンジョンが不安で情報収集しているんじゃないの?」
「あー……そう、ですね。事前に知っておきたい情報ではあったんですが」
ただの興味本位だと正直に言っていいものか。
迷っていたらレイナルドさん。
「こいつが今更そんなことで不安がるか?」
そんな疑わしそうな顔をしないでください。
その通りですけど!
「……これから挑むトラントゥトロワは既に踏破済みのダンジョンだ。大陸連合の制圧が始まってからは入場も制限されていたが、正しい道が敷かれているし、情報も出揃ってる。2か月もあれば攻略出来る」
「それでも2か月か……」
ウォーカーさんが貴重な情報をくれた。
1階層を移動するのに1日掛かる計算だけど、それも神具『野営用テント』があるからこそ出来る荒業を駆使して達成できる期間だろう。
「それに、金級ダンジョンは、魔剣や魔弓といった魔法武具もドロップする可能性がある」
「魔法武具!」
アッシュさんの補足にウーガさんの目が輝いた。
いつも欲しがってましたもんね。
「魔法武具を持っていないのはバルドル、エニス、ウーガ、ドーガ、レン、それからヒユナか」
金級ダンジョンの経験の有無ではっきり分かれている。クルトさんは宝箱からのゲットで運を使い果たしたって言ってたが、今回のダンジョンで魔法武具を獲得できる可能性は高いってこと。
「また楽しみが増えましたね」
言ったら、特にバルドルパーティの皆が良い笑顔だった。
浄化の旅の間に、俺たちが乗っていた船の人たちに頼んで2か月分の食材をプラーントゥ大陸から仕入れて来てもらったので、ダンジョンに入る前にそれらをテントに運び込んだ。
容量無限・時間停止のパントリーは本当にありがたい。
着替え良し。
防寒具良し。
防寒具は、このダンジョンには極寒の階層が複数あるからだ。情報を纏めて必要な人に売ってくれる冒険者ギルドにも感謝感謝である。暖炉で使う薪なども準備した。
師匠は今回は不在だけど、テントは最大人数の17人用で固定。
全員で一緒に食事が出来るよう3つの丸型の食卓に、椅子が6脚ずつ。
広いキッチン。
大きなパントリー。
全員でくつろいでもまだ余裕がある広いリビングは40帖くらい?
暖炉、ソファ、毛足の長い絨毯。
棚にはボードゲームやカードゲームも置いてある。
出入り口の脇には17個の魔石。
それぞれに転移陣が刻まれていて個室へ移動出来るようになっている他、登録した魔力以外は受け付けないから間違った部屋に入ってしまう心配もない。ただし手を繋ぐなど接触していれば魔力の持ち主と一緒に転移することは可能だ。
個室にはベッドと、トイレ、シャワー室。
クローゼット。
カーテン。
大きな窓は開閉不可だけど空調機能完備。
内装は全部屋共通で、窓から見える景色がテントの正面なのも同じだ。
広さは水回りも全部含めて6帖くらいだと思う。
「いつ見ても思うんですけど、もうテントじゃないですよねこれ」
ヒユナさんが恐ろしいものを見るような顔をしている。
「でもこれなら女性も金級ダンジョンの制覇を目指し易いだろ」
ドーガさんが宥めるように言う。
俺も同意見だし、ヒユナさんも頷かざるを得ない。
準備は終わった。
本命、プラーントゥ大陸の未踏破ダンジョンに挑む前の肩慣らし。
トラントゥトロワ攻略のスタートだ。
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