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第2章 新人冒険者の奮闘
39.再会
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約2時間の魔法教室。
今日の時間内で魔力を感じる事は出来なかったが、レイナルドだけは非常に楽しかったようである。
「いやぁ、あんな真剣な顔をして……顔真っ赤にして……っくくく」
「笑い過ぎだと思います!」
「そう言うけどな、年齢相応で安心したっつーか、子どもに擬態するのは大変だと思うからさ」
「それは……まぁ」
ヤーオターオの加護のおかげとばかりは言えないが、よくよく考えてみると心と体と魂の安定ってどういうものなのかという疑問が湧いて来る。
25まで生きた成人の記憶、知識、そういったものがこうして残っている以上は言動にそれらが表れるのは仕方がないだろうし、どこをどう調整し、どうバランスを保つのか。
「けど、素でああいう言動が出るなら安心したよ」
「それなら良かった……です?」
「です? じゃねぇがな」
わははと笑いながらわしゃわしゃと髪を乱された。
納得しかねる部分もあるが、まぁ普通の子どもに見えたのなら結果オーライだ。
そんなわけで、お昼前に授業を終えたその足で薬草採取の指定地域に向かう。お昼ご飯は、今日は各自で持参だ。何時まで魔法教室かは事前に判っていたからね。
指定地域に着いてから、先人がランチ休憩のために設けたのだろう座り易い岩や丸太を集めた場所をレイナルドさんが教えてくれて、まずは腹ごしらえ。今日のメニューは『猿の縄張り』から出てすぐの、商通りに面したパン屋で購入したサンドイッチである。
この世界、食べるものが美味しいのは大変ありがたい。
「レイナルドさんもパーティの皆さんとクランハウスに住んでいるってことは、自炊するんですか?」
「まぁ出来ないわけではないな」
「微妙な表現ですね」
「出来ると、美味いは、別物だ」
「なるほど……」
他のメンバーとの顔合わせは週末になったとか、子どもがいるメンバーもいるとか。
そんな今後のことも含めた会話を楽しみながら昼食を終えた後はひたすら薬草採取。銅級ダンジョンの入り口に近付くほど薬草の色が深くなってたり、稀少性が上がったりすることに気付き、レイナルドに相談して奥に進む。
見つけた花や、実に、初見のものが増えて来たらウエストポーチ型の鞄から『初級図鑑』を取り出して確認作業を繰り返す。図鑑を見ても判らないものは『鑑定』する事も考えたけど、結局は未知のまま、戻ってから調べる事に決めた。生存率を高めるためのスキルだけど、今は冒険者としての活動中。ズルはしたくないって思うから。
「あ……もういっぱいか」
冒険者ギルドが貸し出してくれている鮮度保存の魔導具がいっぱいになったので、ゆっくりと立ち上がって体を伸ばす。
そうして初めて、決して近距離ではないものの自分以外にも薬草採取をしている人達が居る事に気付いた。
「おつかれ。だが、周りに全然気づいていなかったな」
レイナルドが苦笑交じりに言う。
「此処は街の中だし、魔物も出ない。レンの場合は主神様の加護もあるから命の危険はないだろうが、その集中し過ぎる癖はどうにかしないと一人で依頼を受けるのは危険だぞ」
「うっ……」
「魔力操作が出来るようになったら、索敵や気配探知を教えるからな」
「はい!」
学ぶ楽しみがまた一つ増えた。
そう思いつつ、どんな人達が薬草採取に来ているのか確かめたくて周りを見渡す。ダンジョンの入り口までは直線距離にして100メートルくらいだろうか。ここの入り口は洞窟みたいな造りだと聞いているけれど、木々が密集しているため視認出来るものはない。
薬草採取に来ている人の姿は、見える範囲に3組。
揃いのローブを羽織った若い男女の集団は薬師、かな?
もう一組は獣人族の少年二人で、たぶん俺と同じように鉄級の依頼を受けて来ているんだと思う。
そしてもう一組は、個人だ。
「ぁ……」
なんで、とか。
どうして、とか。
そんな疑問よりも先に声が出た。
「クルトさん!」
銀級冒険者のクルト・デガータが、自分よりダンジョン入り口に近い範囲で採取した薬草を抱えていた。
今日の時間内で魔力を感じる事は出来なかったが、レイナルドだけは非常に楽しかったようである。
「いやぁ、あんな真剣な顔をして……顔真っ赤にして……っくくく」
「笑い過ぎだと思います!」
「そう言うけどな、年齢相応で安心したっつーか、子どもに擬態するのは大変だと思うからさ」
「それは……まぁ」
ヤーオターオの加護のおかげとばかりは言えないが、よくよく考えてみると心と体と魂の安定ってどういうものなのかという疑問が湧いて来る。
25まで生きた成人の記憶、知識、そういったものがこうして残っている以上は言動にそれらが表れるのは仕方がないだろうし、どこをどう調整し、どうバランスを保つのか。
「けど、素でああいう言動が出るなら安心したよ」
「それなら良かった……です?」
「です? じゃねぇがな」
わははと笑いながらわしゃわしゃと髪を乱された。
納得しかねる部分もあるが、まぁ普通の子どもに見えたのなら結果オーライだ。
そんなわけで、お昼前に授業を終えたその足で薬草採取の指定地域に向かう。お昼ご飯は、今日は各自で持参だ。何時まで魔法教室かは事前に判っていたからね。
指定地域に着いてから、先人がランチ休憩のために設けたのだろう座り易い岩や丸太を集めた場所をレイナルドさんが教えてくれて、まずは腹ごしらえ。今日のメニューは『猿の縄張り』から出てすぐの、商通りに面したパン屋で購入したサンドイッチである。
この世界、食べるものが美味しいのは大変ありがたい。
「レイナルドさんもパーティの皆さんとクランハウスに住んでいるってことは、自炊するんですか?」
「まぁ出来ないわけではないな」
「微妙な表現ですね」
「出来ると、美味いは、別物だ」
「なるほど……」
他のメンバーとの顔合わせは週末になったとか、子どもがいるメンバーもいるとか。
そんな今後のことも含めた会話を楽しみながら昼食を終えた後はひたすら薬草採取。銅級ダンジョンの入り口に近付くほど薬草の色が深くなってたり、稀少性が上がったりすることに気付き、レイナルドに相談して奥に進む。
見つけた花や、実に、初見のものが増えて来たらウエストポーチ型の鞄から『初級図鑑』を取り出して確認作業を繰り返す。図鑑を見ても判らないものは『鑑定』する事も考えたけど、結局は未知のまま、戻ってから調べる事に決めた。生存率を高めるためのスキルだけど、今は冒険者としての活動中。ズルはしたくないって思うから。
「あ……もういっぱいか」
冒険者ギルドが貸し出してくれている鮮度保存の魔導具がいっぱいになったので、ゆっくりと立ち上がって体を伸ばす。
そうして初めて、決して近距離ではないものの自分以外にも薬草採取をしている人達が居る事に気付いた。
「おつかれ。だが、周りに全然気づいていなかったな」
レイナルドが苦笑交じりに言う。
「此処は街の中だし、魔物も出ない。レンの場合は主神様の加護もあるから命の危険はないだろうが、その集中し過ぎる癖はどうにかしないと一人で依頼を受けるのは危険だぞ」
「うっ……」
「魔力操作が出来るようになったら、索敵や気配探知を教えるからな」
「はい!」
学ぶ楽しみがまた一つ増えた。
そう思いつつ、どんな人達が薬草採取に来ているのか確かめたくて周りを見渡す。ダンジョンの入り口までは直線距離にして100メートルくらいだろうか。ここの入り口は洞窟みたいな造りだと聞いているけれど、木々が密集しているため視認出来るものはない。
薬草採取に来ている人の姿は、見える範囲に3組。
揃いのローブを羽織った若い男女の集団は薬師、かな?
もう一組は獣人族の少年二人で、たぶん俺と同じように鉄級の依頼を受けて来ているんだと思う。
そしてもう一組は、個人だ。
「ぁ……」
なんで、とか。
どうして、とか。
そんな疑問よりも先に声が出た。
「クルトさん!」
銀級冒険者のクルト・デガータが、自分よりダンジョン入り口に近い範囲で採取した薬草を抱えていた。
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