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第7話 遊園地編 1

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「ヒカルー、あれ乗ろーよー!」
「おいおい、走るなよ」

俺は今、マナと二人で遊園地に来ている。
マナと二人でどこかに行くことなんて別に特別なことでもなんでもない。
それでも遊園地に二人きりで来るのは初めてだ。

二人で遊園地にいたりすればそれこそ付き合ってるなんて勘違いされる。
でもまぁここは学校から離れてるし麻生さんなんかは絶対来たりしなさそうだから逆に安全地帯と言えると判断して渋々付き合ってやっている。(断るといたずらがエスカレートするし…でもマナはデートだというが俺はデートのつもりはない)

空を飛んでいく案は却下して、普通に電車に乗って隣町の遊園地まで来たのだが、そもそも遠出する機会が少ないためか、マナのテンションは上がる一方だ。

「なんかワクワクするねー!」
「はいはい、はしゃぎすぎて変なことするなよ?」
「はーい!あ、アイス食べたい!」
「お、いいね。俺はチョコにしようかな」

二人でアイスを買って食べながら歩いているとホラーハウスと書いた洋館を模した建物があった。

「お化け屋敷かー、行ってみるか?」
「え、うーん…後にしない?」
「あれ、怖いんだ?マナは子供だなぁ」
「むむ、聞き捨てならない!怖くないもんね!」

そうは言ってもアイスを持つ手がプルプル震えている。

「ま、無理しなくても良いんだ。怖そうだもんなー」
「怖くないもん!アイス食べたら入る…あっ」

しかしやはりマナは動揺していたのか、アイスを服にこぼしてしまった。

「あー、服に着いちゃった…」
「何やってんだよ、ほら拭いてやるからこっちこい」
「うん、拭いてー」
「ん?あっ」

よく見るとアイスが飛び立っていたのは胸元だった…
今日は休日なのでもちろん制服ではなく、マナの可愛らしいシャツの膨らみが少し濡れている…

「ほらっ、これで早く拭けよ!」
マナの胸元を見ないようにしながらマナにハンカチを渡した。

「あーあ、ちょっと濡れちゃった…ね、見て見て」
「ちょっとは恥じらいを持てよ!」
「私の胸にキョーミあるんだー」
「興味はない、見たくないだけだ」

昔は食べこぼしとかをよく拭いてやったけど、もうそんなの無理だな…

結局お化け屋敷に入ることになった。

「うわー、暗いなぁ…俺もちょっと怖いかも」
「ひ…いっ、や!?あーん、もう出たいよー…」

入り口の段階ですでにマナは竦《すく》んでいた…

「おい、くっつくなよ…」
「怖いんだもん…あ、なんか動いた!きゃっ」
「ががっ!いだだだっ!」

マナに力が入って思わず電気ショックを流された…

「痛いだろ!」
「だってなんか音がした…あーもう出たいよう…」

俺にしがみついたままブルブル震えるマナのテンションはダダ下がりだった。
でもマナからいい匂いがするから俺はそっちにばかり気をとられてしまう…
暗くてよく見えないけど、胸当たってないよな…なんか柔らかいものが腕に…

その時後ろからガタガタと音がした。

「え、なんか後ろから来てない?」
「キャー、怖い怖い怖い!やー!」
「ぎゃー!」「ぎゃー」

俺のほかにもう一人の悲鳴が聞こえた。
お化けに扮して追いかけてきた係の人が電撃の巻き添えになって気絶していた…

「おい、お化け屋敷でお化け退治するやつなんか聞いたことないぞ!?」
「怖いんだもん…」
「お前の方がよっぽど怖いわ…」

先に進むと何やら水の音がする。

「あ、池がある。こっからカッパが飛び出してきたりするのかな?」
「カッパって可愛いやつだよね?」
「うーん、デフォルメされた絵しかイメージないけど結構リアルなのは…うわっ!」

予想通りリアルなカッパが飛び出してきた。

「ぎゃー、怖い怖い怖い!」
「マナ、こらやめろ!」

何かの爆発によって屈強そうなカッパの人形はバラバラに吹き飛ばされた…

「ふう、もう安心だね」
「このあとどれくらい弁償させられるか不安しかないわ!」
「大丈夫バレないってー」
「いやいい加減バレるって…」

カッパ退治に成功したおかげでマナも少しだけ怖さに慣れてきたようだ。

「あ、出口だ!案外短かったなー」
「ようやくシャバの空気吸えるー」
「シャバとか言うな!」

いや本当は器物破損でブタ箱行きだろお前…

しかし出口の寸前で天井からぬるぬるした血まみれの幽霊が降ってきた。

「うわっ」
「ぎゃー、いやいやいや!」
「あぢぢぢぢ!」

俺と幽霊役の人は火をつけられて逃げ惑った。
急いでマナに水をかけてもらってなんとかお化けにならずに済んだが、それで全部水に流すなんてわけもなかった。

「マナ!こんなんだともう帰るぞ!」
「だって怖いのにヒカルが行こうって言うからだもん…」
「こんなことになるなら待っとけよ、一人でいくから!」
「ヤダよ…今日はずっと一緒がいいもん…」
「!?」
  
お化け屋敷の恐怖と俺からの説教で小さくなったマナがまた可愛いモードだ…
しかも今日はなんか可愛い私服着てる(いつも休日はジャージで遊びにくる)から雰囲気違うし余計可愛く見えてくる…

「べ、別に今日は二人で来てるんだから一緒も何もないだろ?」
「ふふふ、ヒカル照れたー」
「照れてない!」

マナに服を乾かしてもらってから今度はメリーゴーランドに向かった。

「幼稚な気がするけどなぁ、見ててやるから乗ってくれば?」
「えー、もしかして怖いのー?」
「メリーゴーランドでそのいじりは無駄だと思うぞ…」

結局マナと二人で木馬にまたがった。

「おーいヒカルー、すごーい!」

回転しながら俺の前ではしゃぐマナを見ていると、なんか癒される。
魔法使いとか意味不明な能力あるけど、マナもこうしてると普通の可愛い女の子だもんな…
今日はゆっくり付き合ってやるか…

そんなことを思っていると何か違和感に気がついた…
メリーゴーランドが止まらない、いや加速している…

「お、おいマナ!なんかしただろ!」
「もっと早い方が楽しいもーん!えーい!」

優雅なメリーゴーランドは高速拷問回転木馬に変貌した…

他の客も怖さでしがみついている…

「や、やめろもう振り落とされるって!」
「もうちょっとだけー!えーい!」

メリーゴーランドの速度がもう一段階上がったその時、俺はある人が遊園地を歩いていたのが見えた。

麻生さんが一人で歩いてる?

「マ、マナ!麻生さんが、ががー」
「なにー?聞こえなーい!」

結局何十周したことか…
この先こんな乗り物に二度と乗るものかと思えるほどに俺たちは回転した…

「あー、まだクラクラする…」
「楽しかったねー!」
「泣いてる人いたぞ!危ないから魔法は禁止だ!」
「ちぇー」

そしてメリーゴーランドを降りて少ししてから麻生さんが見えたことを思い出した。

「あ、麻生さんが見えたんだよ!多分遊園地にきてる…」
「玲子ちゃんが?絶対見間違いだよー」
「そ、それもそうだな。さすがに一人では…」

その時一人でアイスクリームを買う麻生さんを見つけてしまった。

「マナ、やっぱり麻生さんだ!」
「あ、ほんとだ!おーい、んぐっ」

俺はマナの口を塞いだ。

「ヒカル、何するのよー」
「だって麻生さんに二人でいるところ見られたらデートとか勘違いされるだろ?」
「デートじゃん」
「…俺は認めてない!」

しかしこっちに向かって麻生さんが歩いてくる…

ど、どうする俺…




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