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第41話 アンのこと
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深夜の学校は静けさに満ちて…いないのがこの学校だ…
なんかカップルや怪しげな連中がまぁまぁな人数いる。
「いやこいつらを先に駆逐しろよ!風紀委員は何してるの!?」
「ほれ、校則に『深夜の学校は魅力にあふれている、行くべし』とあるじゃろ?じゃから校則違反ではないのじゃ」
「ないのじゃ、じゃねえよ!もうそれ校則なのか!?それにあんたの作った校則に従順だな風紀委員も!」
なぜか大石さんの方が先に到着していて、0時を過ぎたころにやっとアンが来た。
そして高村さんは…有給だという…
いやアンにも有給やれや!
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫か?試合の後だろ…」
「棚卸《たなおろし》だけしてきた」
「いやコンビニもブラックだな!」
世界がこいつを殺そうとしているのか…?
深夜の校舎の中は…さすがに静かだ。
「快斗、暗いの怖い…」
「大丈夫、離れないでね」
カレンの手を握りながら俺たちは中に入っていった。
誰もいないのかと慎重にライトを照らしながら歩いていると、誰か人の気配がした。
「誰だ!」
しかし人影はすぐに去っていった。
「お、追いかけましょう!あれ絶対怪しいですよ!」
そう言って振り返ったら…誰もいなかった。
「あ、あれ?カレン、みんなは?」
「さっきそこの落とし穴に落ちてた」
「いや落とし穴あるの学校に!?それにちょっとくらい驚いてあげてよ!」
少し戻ると確かに落とし穴があった…建築法とかは大丈夫なのかこの物件…
とりあえずライトを照らすと下が見えたので、梯子を持ってきて降りた。
「おーい、誰かー、みんなどこー?」
「快斗…」
「ど、どうした?なにかあったのか?」
「チューしたい」
「え、今!?今はちょっと…」
昨日夜道でキスしすぎて癖になったんだな…
今はダメといって機嫌を悪そうにするカレンを引っ張っていった。
すると写真が落ちていた…
「こ、これは…」
メラニーさんの写真だった…
前を照らすと等間隔に写真が落ちている。
これは罠…なのかほんとに…
こんな手に引っ掛かるやつはいないだろうと写真を横目に進んでいき角を曲がったところで、きれいに全員捕まっていた…
「いやアホだろ!?普通気づけや!そんで命先輩は自分の写真だろ!?校長、あんたは自分の嫁だろ!?」
アンまで捕まっていたのだから相当な威力なのだろう…
童貞には聞こえない周波音とか出てないよな?
「気を付けろ!これは敵の仕業だ」
「見たらわかるわ!」
なにか気配がしたので振り返ると人がいた。
「君が噂のチェリー君か、はじめまして。僕が風紀委員長の風紀守《かざのりまもる》だよ。」
色白で痩せていてきれいな女性のような顔立ちの男だ。
そしてなぜか学ランではないこの学校で学ランを着ていて学生帽まで被っている…
「あ、あのーもうやめてくれませんか?もともとこの学校無茶苦茶なんだし…」
「ダメだ、この学校を清く正しい在り方に戻すのだ。」
「なんでそこまでするんですか?そもそももっとちゃんとした学校行った方がよかったんじゃ…」
それにここの校則自体が大概おかしいのにそれはいいのか?
「僕はこの学園を理想郷に作り替えるのだ。そのためには君たちは少々目立ち過ぎだ。大丈夫、僕が君たちを真っ当な人間へと更生させてあげるよ」
冷たい目をしている…
こいつはやはり只者ではない…
すると学生帽がカレンに話し出した。
「僕はねカレンちゃん、君がほしいんだ。一目惚れだったよ。そして君が過ごすにはこの学校は危険すぎる。だから君のためにいい学校に作り替えて、平和な学校で僕と…僕と…ああ、これ以上は恥ずかしくて言えない…え、どうしよ、え、え、」
さっきまですごいラスボスムード漂ってたのに…
この学校のやつってすぐに自分で評価下げるよな…
「とにかくダメです、カレンはあげません!」
「それなら条件を出そうか?カレンちゃんをくれたら君の仲間のことは特別に見逃してあげるよ?それに君にも報奨金として3億円だそう。それくらいの心づもりはある。」
いやお前も自分の為かよ!
こいつら更生させるとかはどこいったんだよ!?
ブレブレじゃないか…
それに3億円って高校生がサラッと出せるの!?
もうこの学校にいたら金銭感覚がどんどんおかしくなっていく…
でもみんなの居場所は元通りになるのか…
俺は後ろをチラッと見た。
命先輩、大石さん、薬師寺さん、校長、アン…
こいつらの為に…
…って一切ならんわ!
別にこいつらがどうなっても知らんし!
どーでもええわ天秤にかけるわけないだろ!
「カレンは渡さない!」
かっこよくいってみたが当たり前だろ!
なんでこんなアホな先輩らを庇わにゃならんのだ…
後ろで縛られた連中がワーワー言っている…
「おい、それでも仲間か!?」
「俺たちは同じ釜の飯を食べた戦友だろうが!?」
「うるさいわ!勝手に居座っといて何が仲間じゃい!」
マジで自分勝手な人たちだな…
校長まで「人でなし」とか言っている…
いやお前娘より自分がかわいいんか!
「そうか、残念だ。じゃあ君にもそこで大人しくしてもらうよ。」
そう言って俺に迫ってくる風紀委員をみてカレンが怯えている。
「怖いよ…」
「大丈夫、俺がなんとかする!俺が守る!」
俺がそう言った瞬間に後ろで何かブチっと音がした。
アンがロープをちぎって立っていた…なぜか目が光っている…
「男だな、快斗」
そう言ってアンは利き足とは違う左足を使って飛び蹴りをかました。
「ぐはっ」
風紀委員はアンの手によって沈んだ…
「アン!どうやってロープを?」
「愛と勇気」
「あ、そ…」
持つべきものはそう、アンである…
白い、いや少し黄ばんだ歯を見せてアンが微笑んでいた。
何はともあれ風紀委員は倒れた。
校長を解放して風紀守を差し出した。
「よくやった快斗くん。これでこの学校も元に戻るじゃろう。しかしアンの左足を発動させるとはの」
「え、あれってなんか特別だったんですか?」
「うむ、特別な条件下の元でないと発動せんアンの『ミラクルレフト』じゃ。」
「ちなみにどんなことで発動するの…?」
「君の愛と勇気じゃ」
「いや言ってて恥ずかしくない!?言われてる俺はめっちゃ恥ずかしいわ!」
俺とカレンは無事平穏を取り戻した。
校長とアンと四人で地上に戻りそれぞれ帰路に就いた。
先輩方はあまりに露骨な掌返しが鬱陶しかったので、縛ったまま放置しておいた。
どうせあの人らならどうにかするでしょ…
「やたー!みんないなくなる!快斗と二人!イチャイチャ!」
「ようやく平穏な日常が戻るのか…カレン、今日は思いっきりイチャイチャするぞー!」
なんか知らんけど解放された俺たちはその日、死ぬほどイチャついた。
次の日からは先輩方を追い出す作業に必死だった。
命先輩の簡易スタジオ設備や機材を運び出すのに丸3日かかったし、大石さんの部屋には既にパソコンと無数の回線が引かれていたので解約作業と撤去工事に丸2日とられた…
薬師寺さんの部屋にはもう何人か女が住み着いていた…
そいつらを追い出すのにまた3日かかった…
蓮水さんよくこんな部屋に泊まったな!
いやマジで居候のくせに好き勝手やりすぎだろ!!
その間カレンとのイチャイチャどころではなく、またしてもカレンのストレスが溜まっていたので、俺は落ち着いてから毎日ラーメンとピザで機嫌を取りまくった…
学校は平和?を取り戻していつもの不健全な日常に逆戻りした…
でもこれがこの学校らしいと普通に思えてしまうあたり、俺の頭はもう相当なところまでやられてるのだと、かろうじて自覚はできた…
そしてしばらくはカレンも疲れていたのか大人しかったが、6月も中旬を過ぎた頃、雨が降るその日にまた難題が俺を襲う…
「えー、皆さんも知っての通り、この学校は7月の初旬より長い夏休みに入ります。しかしながら、期末試験を突破できないものについては、夏休み中も補習授業に参加してもらいます。来週からのテストに向けて勉強を怠らないように。以上!」
全校朝礼の後で学年主任がそう話した。
この学校は学生の本分がズレているので、夏休みが長い。
しかし期末試験を通過しないと地獄の補習が待っている…
いや、俺全然勉強とかしてないからやばいかも…
その日の放課後、校長室に呼ばれた。
「失礼します…っておい!」
「へーい、カイトー!今日は早いじゃないか!」
校長がハワイアンスタイルになっている。
部屋にヤシの木とか置いちゃってるし…
「いや風紀委員いなくなったら好き放題ですね!?」
「そらそうじゃ。今まで我慢させられた反動かの?それより期末試験は大丈夫かな?」
「あ、そうだった。まぁ補習は去年も受けなくて済んだけど…で、今日はなんの用ですか?」
「ふむ、カレンのことなのじゃが、娘は勉強ができんのじゃ…じゃからなんとしても試験を通過させてやってくれい。」
期末試験
学期末に行われるその期の集大成である試験は、いつの時代も学生たちを苦しめる。
しかし一学期は比較的問題が簡単なことが多く、またそれが終われば夏休みということもありモチベーションは比較的高く勉強できるのだが…
「別にダメなら補習受けさせたらいいじゃないですか?それに娘なら下駄を履かせるとか…」
「だめじゃ、テストは他の先生が管理しておるから不正はできん。それに補習授業の担当である谷村先生は、別名『JKハンター』と呼ばれておっての、去年も補習に送り込まれた生徒が見事その毒牙にかかったのじゃ。あと『JKキラー』の異名を持つ奈良先生まで加わるというからそりゃ危険なのじゃ」
「いやここの先生、生徒に欲情しすぎだろ!?それ絶対だめだよね!?世間でよく叩かれずにここまで経営できたなこの学校!」
わいせつ教師軍団じゃねぇか…
なんで雇ってんだ!?
「しかし校則に『身分の差で恋愛を禁ずるなどもってのほか』と書いてある以上は先生と生徒ということだけで取り締まることができんのじゃ」
「だからなんでそんなルール作るの!?ワンチャン自分もとか思ってないよね!?それにここで取り締まれなくても世間が取り締まってくれるわ!」
はぁ…次から次へと変な人間ばっか…
「とにかく俺もカレンとの夏休みを邪魔されたくはないですし、勉強は一年のだったらなんとかできますよ。」
「そうかそうか。もし手に負えん場合は家庭教師を派遣するが、なるべく君の手でカレンを教育してやってくれ」
勉強ねぇ…人に教える余裕なんてあったかな…
寮に戻りカレンと早速勉強会を始め…ようとするがカレンが駄々をこねる…
「うう、勉強やだ。イチャイチャしたい」
「ダメ!夏休みイチャイチャできなくなるぞ!?そういえば授業でやるテストとかはちゃんと出来てるのか?」
「見たことない」
「いや全部寝てただろ!」
とりあえず教科書を広げて簡単な問題から出していった。
「カレン『克己』の読み方は?」
「カッコ」
「…本能寺の変で倒された人は?」
「スケートの人」
「…日本の首都は?」
「ミッ○ーいるとこ」
「全部間違いだよ!読み方はコッキだよ!スケートの人は子孫だよ!それにミッ○ーいるとこは隣の県だよ!なんもあってないわ!」
全くやる気ないなこいつ…
「カレン、一つ正解したら休憩させてやる」
「…イチャイチャできる?」
「…ああ」
「わかった!」
お、やる気でたな。これなら…
「I have no holiday を訳しなさい。」
「アンのこと」
「絶対意味わかってるよね!?自覚あるならなんとかしてやれ!」
こんなんで大丈夫なのか…?
次回 カレンの甘々な勉強会 正解する度に!?
家庭教師は誰がくる?
そして夏休みも目前! どんな夏休みが二人を待っているのか!?
なんかカップルや怪しげな連中がまぁまぁな人数いる。
「いやこいつらを先に駆逐しろよ!風紀委員は何してるの!?」
「ほれ、校則に『深夜の学校は魅力にあふれている、行くべし』とあるじゃろ?じゃから校則違反ではないのじゃ」
「ないのじゃ、じゃねえよ!もうそれ校則なのか!?それにあんたの作った校則に従順だな風紀委員も!」
なぜか大石さんの方が先に到着していて、0時を過ぎたころにやっとアンが来た。
そして高村さんは…有給だという…
いやアンにも有給やれや!
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫か?試合の後だろ…」
「棚卸《たなおろし》だけしてきた」
「いやコンビニもブラックだな!」
世界がこいつを殺そうとしているのか…?
深夜の校舎の中は…さすがに静かだ。
「快斗、暗いの怖い…」
「大丈夫、離れないでね」
カレンの手を握りながら俺たちは中に入っていった。
誰もいないのかと慎重にライトを照らしながら歩いていると、誰か人の気配がした。
「誰だ!」
しかし人影はすぐに去っていった。
「お、追いかけましょう!あれ絶対怪しいですよ!」
そう言って振り返ったら…誰もいなかった。
「あ、あれ?カレン、みんなは?」
「さっきそこの落とし穴に落ちてた」
「いや落とし穴あるの学校に!?それにちょっとくらい驚いてあげてよ!」
少し戻ると確かに落とし穴があった…建築法とかは大丈夫なのかこの物件…
とりあえずライトを照らすと下が見えたので、梯子を持ってきて降りた。
「おーい、誰かー、みんなどこー?」
「快斗…」
「ど、どうした?なにかあったのか?」
「チューしたい」
「え、今!?今はちょっと…」
昨日夜道でキスしすぎて癖になったんだな…
今はダメといって機嫌を悪そうにするカレンを引っ張っていった。
すると写真が落ちていた…
「こ、これは…」
メラニーさんの写真だった…
前を照らすと等間隔に写真が落ちている。
これは罠…なのかほんとに…
こんな手に引っ掛かるやつはいないだろうと写真を横目に進んでいき角を曲がったところで、きれいに全員捕まっていた…
「いやアホだろ!?普通気づけや!そんで命先輩は自分の写真だろ!?校長、あんたは自分の嫁だろ!?」
アンまで捕まっていたのだから相当な威力なのだろう…
童貞には聞こえない周波音とか出てないよな?
「気を付けろ!これは敵の仕業だ」
「見たらわかるわ!」
なにか気配がしたので振り返ると人がいた。
「君が噂のチェリー君か、はじめまして。僕が風紀委員長の風紀守《かざのりまもる》だよ。」
色白で痩せていてきれいな女性のような顔立ちの男だ。
そしてなぜか学ランではないこの学校で学ランを着ていて学生帽まで被っている…
「あ、あのーもうやめてくれませんか?もともとこの学校無茶苦茶なんだし…」
「ダメだ、この学校を清く正しい在り方に戻すのだ。」
「なんでそこまでするんですか?そもそももっとちゃんとした学校行った方がよかったんじゃ…」
それにここの校則自体が大概おかしいのにそれはいいのか?
「僕はこの学園を理想郷に作り替えるのだ。そのためには君たちは少々目立ち過ぎだ。大丈夫、僕が君たちを真っ当な人間へと更生させてあげるよ」
冷たい目をしている…
こいつはやはり只者ではない…
すると学生帽がカレンに話し出した。
「僕はねカレンちゃん、君がほしいんだ。一目惚れだったよ。そして君が過ごすにはこの学校は危険すぎる。だから君のためにいい学校に作り替えて、平和な学校で僕と…僕と…ああ、これ以上は恥ずかしくて言えない…え、どうしよ、え、え、」
さっきまですごいラスボスムード漂ってたのに…
この学校のやつってすぐに自分で評価下げるよな…
「とにかくダメです、カレンはあげません!」
「それなら条件を出そうか?カレンちゃんをくれたら君の仲間のことは特別に見逃してあげるよ?それに君にも報奨金として3億円だそう。それくらいの心づもりはある。」
いやお前も自分の為かよ!
こいつら更生させるとかはどこいったんだよ!?
ブレブレじゃないか…
それに3億円って高校生がサラッと出せるの!?
もうこの学校にいたら金銭感覚がどんどんおかしくなっていく…
でもみんなの居場所は元通りになるのか…
俺は後ろをチラッと見た。
命先輩、大石さん、薬師寺さん、校長、アン…
こいつらの為に…
…って一切ならんわ!
別にこいつらがどうなっても知らんし!
どーでもええわ天秤にかけるわけないだろ!
「カレンは渡さない!」
かっこよくいってみたが当たり前だろ!
なんでこんなアホな先輩らを庇わにゃならんのだ…
後ろで縛られた連中がワーワー言っている…
「おい、それでも仲間か!?」
「俺たちは同じ釜の飯を食べた戦友だろうが!?」
「うるさいわ!勝手に居座っといて何が仲間じゃい!」
マジで自分勝手な人たちだな…
校長まで「人でなし」とか言っている…
いやお前娘より自分がかわいいんか!
「そうか、残念だ。じゃあ君にもそこで大人しくしてもらうよ。」
そう言って俺に迫ってくる風紀委員をみてカレンが怯えている。
「怖いよ…」
「大丈夫、俺がなんとかする!俺が守る!」
俺がそう言った瞬間に後ろで何かブチっと音がした。
アンがロープをちぎって立っていた…なぜか目が光っている…
「男だな、快斗」
そう言ってアンは利き足とは違う左足を使って飛び蹴りをかました。
「ぐはっ」
風紀委員はアンの手によって沈んだ…
「アン!どうやってロープを?」
「愛と勇気」
「あ、そ…」
持つべきものはそう、アンである…
白い、いや少し黄ばんだ歯を見せてアンが微笑んでいた。
何はともあれ風紀委員は倒れた。
校長を解放して風紀守を差し出した。
「よくやった快斗くん。これでこの学校も元に戻るじゃろう。しかしアンの左足を発動させるとはの」
「え、あれってなんか特別だったんですか?」
「うむ、特別な条件下の元でないと発動せんアンの『ミラクルレフト』じゃ。」
「ちなみにどんなことで発動するの…?」
「君の愛と勇気じゃ」
「いや言ってて恥ずかしくない!?言われてる俺はめっちゃ恥ずかしいわ!」
俺とカレンは無事平穏を取り戻した。
校長とアンと四人で地上に戻りそれぞれ帰路に就いた。
先輩方はあまりに露骨な掌返しが鬱陶しかったので、縛ったまま放置しておいた。
どうせあの人らならどうにかするでしょ…
「やたー!みんないなくなる!快斗と二人!イチャイチャ!」
「ようやく平穏な日常が戻るのか…カレン、今日は思いっきりイチャイチャするぞー!」
なんか知らんけど解放された俺たちはその日、死ぬほどイチャついた。
次の日からは先輩方を追い出す作業に必死だった。
命先輩の簡易スタジオ設備や機材を運び出すのに丸3日かかったし、大石さんの部屋には既にパソコンと無数の回線が引かれていたので解約作業と撤去工事に丸2日とられた…
薬師寺さんの部屋にはもう何人か女が住み着いていた…
そいつらを追い出すのにまた3日かかった…
蓮水さんよくこんな部屋に泊まったな!
いやマジで居候のくせに好き勝手やりすぎだろ!!
その間カレンとのイチャイチャどころではなく、またしてもカレンのストレスが溜まっていたので、俺は落ち着いてから毎日ラーメンとピザで機嫌を取りまくった…
学校は平和?を取り戻していつもの不健全な日常に逆戻りした…
でもこれがこの学校らしいと普通に思えてしまうあたり、俺の頭はもう相当なところまでやられてるのだと、かろうじて自覚はできた…
そしてしばらくはカレンも疲れていたのか大人しかったが、6月も中旬を過ぎた頃、雨が降るその日にまた難題が俺を襲う…
「えー、皆さんも知っての通り、この学校は7月の初旬より長い夏休みに入ります。しかしながら、期末試験を突破できないものについては、夏休み中も補習授業に参加してもらいます。来週からのテストに向けて勉強を怠らないように。以上!」
全校朝礼の後で学年主任がそう話した。
この学校は学生の本分がズレているので、夏休みが長い。
しかし期末試験を通過しないと地獄の補習が待っている…
いや、俺全然勉強とかしてないからやばいかも…
その日の放課後、校長室に呼ばれた。
「失礼します…っておい!」
「へーい、カイトー!今日は早いじゃないか!」
校長がハワイアンスタイルになっている。
部屋にヤシの木とか置いちゃってるし…
「いや風紀委員いなくなったら好き放題ですね!?」
「そらそうじゃ。今まで我慢させられた反動かの?それより期末試験は大丈夫かな?」
「あ、そうだった。まぁ補習は去年も受けなくて済んだけど…で、今日はなんの用ですか?」
「ふむ、カレンのことなのじゃが、娘は勉強ができんのじゃ…じゃからなんとしても試験を通過させてやってくれい。」
期末試験
学期末に行われるその期の集大成である試験は、いつの時代も学生たちを苦しめる。
しかし一学期は比較的問題が簡単なことが多く、またそれが終われば夏休みということもありモチベーションは比較的高く勉強できるのだが…
「別にダメなら補習受けさせたらいいじゃないですか?それに娘なら下駄を履かせるとか…」
「だめじゃ、テストは他の先生が管理しておるから不正はできん。それに補習授業の担当である谷村先生は、別名『JKハンター』と呼ばれておっての、去年も補習に送り込まれた生徒が見事その毒牙にかかったのじゃ。あと『JKキラー』の異名を持つ奈良先生まで加わるというからそりゃ危険なのじゃ」
「いやここの先生、生徒に欲情しすぎだろ!?それ絶対だめだよね!?世間でよく叩かれずにここまで経営できたなこの学校!」
わいせつ教師軍団じゃねぇか…
なんで雇ってんだ!?
「しかし校則に『身分の差で恋愛を禁ずるなどもってのほか』と書いてある以上は先生と生徒ということだけで取り締まることができんのじゃ」
「だからなんでそんなルール作るの!?ワンチャン自分もとか思ってないよね!?それにここで取り締まれなくても世間が取り締まってくれるわ!」
はぁ…次から次へと変な人間ばっか…
「とにかく俺もカレンとの夏休みを邪魔されたくはないですし、勉強は一年のだったらなんとかできますよ。」
「そうかそうか。もし手に負えん場合は家庭教師を派遣するが、なるべく君の手でカレンを教育してやってくれ」
勉強ねぇ…人に教える余裕なんてあったかな…
寮に戻りカレンと早速勉強会を始め…ようとするがカレンが駄々をこねる…
「うう、勉強やだ。イチャイチャしたい」
「ダメ!夏休みイチャイチャできなくなるぞ!?そういえば授業でやるテストとかはちゃんと出来てるのか?」
「見たことない」
「いや全部寝てただろ!」
とりあえず教科書を広げて簡単な問題から出していった。
「カレン『克己』の読み方は?」
「カッコ」
「…本能寺の変で倒された人は?」
「スケートの人」
「…日本の首都は?」
「ミッ○ーいるとこ」
「全部間違いだよ!読み方はコッキだよ!スケートの人は子孫だよ!それにミッ○ーいるとこは隣の県だよ!なんもあってないわ!」
全くやる気ないなこいつ…
「カレン、一つ正解したら休憩させてやる」
「…イチャイチャできる?」
「…ああ」
「わかった!」
お、やる気でたな。これなら…
「I have no holiday を訳しなさい。」
「アンのこと」
「絶対意味わかってるよね!?自覚あるならなんとかしてやれ!」
こんなんで大丈夫なのか…?
次回 カレンの甘々な勉強会 正解する度に!?
家庭教師は誰がくる?
そして夏休みも目前! どんな夏休みが二人を待っているのか!?
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