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第31話 バカップル
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「遊園地ー!ねぇ快斗、写真とろー!」
遊園地に着いた途端カレンは大はしゃぎだった。
「はいはい、待って待って。」
子供のようにはしゃぐカレンだが、見た目は超がつく可愛いJKだ。周りの大人もカレンの笑顔に釘付けだった。
ほら、あの子何者だ?と言わんばかりの皆の驚く声が聞こえてくる…
「おい、あの隣の男誰だよ、埋める?」
「不釣り合いにもほどがあるだろ、沈める?」
「あいつさえいなければあの子も俺たちと…燃やすか」
いや全部俺へ向けられたジェラシーじゃん!?
しかも俺どうあっても殺されるの?どうしてこんな平和な遊園地でそんな物騒なことばっかり言うんだよ…
まぁそれにも多少の理由はあるのだ…
この遊園地は、校長が運営する「落葉パーク」。五年前にこの街最大の目玉として開設された施設であり、あの夢の国の唯一のライバルと称されるとかなんとか(そんなわけあるか!)
確かにアトラクションも綺麗で豊富だし、十分楽しめるのだがあの校長の施設というだけで、見れる夢は悪夢しかないのではと思ってしまう…
「カレン、ここも校長の施設なんだろ?それなのに来たことはないのか?」
「うん、ここはフランチャイズ。じいが経営してる。」
「…え!?」
「じいのお給料少ないからって、パパが社長をじいにしたの」
「いやいや、寵愛受けすぎだろ!?それにアンは!?生活苦とか言ってたぞ!?もうちょっと給料上げろよ!」
いや贔屓を超えてこれももう差別だろ…
「快斗、あれ乗る!」
「ああ、メリーゴーランドか」
この遊園地もまた、カップルがイチャイチャできるような仕掛けが無数になされている。
普通メリーゴーランドも子供と以外は一人乗りなのだが、ここは二人乗りである。
更に意図的に揺れることで体を密着させカップルのムラムラを誘発する仕組みになっているのだとか…
「カレン、ちゃんと捕まっておけよ」
「えへへ、快斗の背中大きい」
あー、もう勃っちゃったよ!
しかしながらこの馬、かなりのじゃじゃ馬であった…
揺れるなんてもんじゃないぞこれ?
振り落とされかけて悲鳴をあげる客や泣きながら降ろしてと叫ぶ男女で、ここは恐怖の回転木馬と化していた…
かく言う俺ももう景色もクソもなく必死にしがみついていたので、首を痛めた…
カレンは…なんか楽しそうに俺にしがみついていた。
「はぁ…はぁ…いや絶叫マシーンより怖いわこれ!」
「楽しかったー。快斗、次あれ乗る!」
元気だなぁ…
でも、なんかほんとのカップルみたいだなこれ。
いや、クソ楽しい…
次に来たのはコーヒーカップだ…
もう回るやつ怖いんだけど…
これも同じくカップルで腰掛けたあと、絶妙な回転により男女を密着させる仕組みだというが、もう嫌な予感しかしない…
「なぁカレン、あれは目が回るから酔うぞ?」
「大丈夫、グルグルバットしても平気な人だから」
「え、あれ平気な人いるの!?三半規管どうなってんだお前!?」
お前は猫か!
無理矢理コーヒーカップに押し込まれ、カップが動き出したのだが、こっちの方が地獄だった。
もう優雅さや爽快さは一切なく、ただただ高速で回るカップに俺たちの平衡感覚はゴリゴリと削られていった…
既に吐いている人や中には回転で外に飛ばされる人までいた。もうただの拷問機械だった…
「おえー、まだクラクラする…」
「快斗大丈夫?」
気持ち悪そうにする俺にカレンがキスしてきた。
遊園地でキス…いやもう段階踏みまくってますよね!?
どう言い訳してこの後ごまかそうかな…
でもキスをされたことで色々と元気になって、次のアトラクションに向かった。
「あ、なんかショーしてる!見たい!」
「ステージショーか、どんなのかちょっと気になるな。休憩がてら行ってみるか。」
普通ならヒーローショーであったり、アニメの舞台版みたいなのがしていたり、海賊がきて水を観客に飛ばしたりして盛り上がるのだろうが、やはりここは高村さんの遊園地だった…
『侠客《きょうかく》 仁義を貫く男たちの戦』と書かれていた。いやこれ遊園地でやったらダメだろ!?
「カレン、任侠ものだぞこれ?他のにしないか…」
「見るの!ショー見たい!」
「はいはい…」
不安げに中に入ると、なぜか親子連れがたくさんいた。
いや子供に見せるなよ!
何やら楽しげな親子の会話が聞こえてくる…
「ねえママ、どんな敵が出てくるのかなぁ?」
「そうねぇ、青服が旧式のニューナンブで立ち向かってくるだけでしょ?」
いやあんたらは極道側の人なの!?
子供に拳銃とか教えるなよ!
「なんだニューナンブかぁ、38口径なら安心だね。」
全然安心じゃねぇわ!
てかあんな子供がなんでそんな拳銃詳しいの!?
その子は後継者さんですか!?
「なんか危険な気がするぞここ…」
「危険?じい呼ぶ?」
「呼んだらなにかの抗争が始まりそうだよ!」
始まったショーは、終始淡々と進むのだが、なんとも脚本が面白くない…
ただ警察官がやられ、ヤクザ側が無双するというどっちの人が脚本を書いたのか一発でわかるような雑なものだった…
「なぁ、もう出ようよ…」
「しっ、今いいとこ」
え、どこが!?
なんか一方的に黒服たちに街を征服されてショーは幕を閉じた…
これなんかの洗脳教育なのか…?
「快斗、おもしろかった!」
「あ、そうですか…」
普段何を観てるんだこいつ?
園内持ち込みは禁止ということだったので、最後に観覧車に乗ってから外で持ってきたサンドイッチを食べることにした。
「あ、写真とってくれる!快斗、撮ってもらお!」
「おお、撮ろうか!」
撮影を頼むとアルバイトらしき若いカメラマンが俺たちに寄ってきた。女の子だが同い年くらいかな?
「カップルさんですかー、羨ましいですね。ささ、もっと寄って」
なんかやたら俺たちをくっつけたがるなこいつ…
「そうそう、もっと、なんならキスしちゃいますか!」
「しちゃいませんよ!人前でそんなんするのバカップルくらいだろ!」
しかしすぐにカレンにチューされて激写された…
バカップルじゃん…
観覧車からの景色はとても良かった。
今日唯一ここだけが良かった…
しかし疲れはピークに来ていて、ムードも何もないまま観覧車を降りた。
降りたところでさっきのバイトが写真を配っていた。
「はい、いい感じに撮れてますよ。」
俺は自分たちがチューした写真を渡された…
「これ…いる?」
「いる!」
は、はい…
他の人たちの写真はどんなんだろうと、前の人がもらった写真を覗き込んだらなんとその人も俺たちのキス写真を持っていた…
「いやいや、普通本人らの写真渡すだろ!?なんで俺の恥ずかしい写真を客にばら撒いてんの!?」
「ふふふ、ひっかかったわね。私は薬師寺様が部下、聡子《さとこ》よ!あんたらの恥ずかしい写真ばら撒いて学校に行けないようにしてやるわ!」
また変なのがきた…
休みの日くらい休めよお前らも…
「この写真を見た校長は、きっとあなたを退学にするでしょうね。なにせ愛娘とキスしてるところなんてあの人が許すはずもないもの!そしてショックを受けたあなたは、我々アマゾネスに寂しさの余り身を委ね…完璧な作戦よ!」
「いや、校長から許可もらってます…」
もうちょっと調べてからこいよ…
あと作戦の趣旨を敵にバラすな!
「な、なんですって!?親公認とか聞いてないわよ!?それじゃこの写真を全国放送されてもあなたは平気ということ!?」
「いや全国はやめて!さすがに社会で生きづらくなるわ!」
全国公認のバカップルにはなりたくねーよ…
カメラマンの女はショックで動けそうもなかったので、放ってかえった。
出口付近で清掃をしているおじさんが転んだところを見た。すごい剣幕で先輩に怒られている…
「おい、お前ほんとグズだな!ゴミ拾いくらいさっさとしろ!」
「…」
よくみるとアン・ジールだった…
「アンお前ここでもバイトしてんの!?ていうか高村さんの従業員なわけ!?」
「お金がいる」
「な、なにか特別な事情でもあるのか?」
「生活苦」
「いやもう誰か正社員で雇ってやれよ!」
哀れな世界チャンピオンだな…
今度会ったらラーメンくらいはご馳走しよう…
お昼は近くの公園で二人で作ったサンドイッチを食べた。
「あ、これ美味しい。カレンやっぱり料理うまいなぁ」
「快斗のも美味しい。はい、あーん」
ああ、なんという素晴らしい休日なんだ…
もう一億円いらないから、退学でもいいからカレンとどうにかなりたいよ…
楽しい時間はあっという間というが、本当にすぐに夕方になった。
寮に着くまでの間は何も…ないわけがなかった。
まず空から槍が降ってきて、「早くアンの連絡先を教えろ」と槍文《やりぶみ》で恐喝された…いや、せめてこれやるのは学校内だけにしてくれ!
そして薬師寺さんは刺客をよこしながらもボス自ら前線に赴くという謎のスタイルで今日も話しかけてきたが、俺は当然無視した。
エッチのことしか頭にない人と話すことはないと突き放すと、「たった5165人との関係で人をヤリチンみたいに言うな」と怒ってきた。
いや絶対そうだし!それにまた増えてるよペースおかしくない!?
最後に純也から電話がきて、さっきのキスの写真がインスタにアップされていると言われて開くと250万人のフォローがついていた…
全国に晒されてしまった…
でもカレンだけは嬉しそうだった。
「あー疲れたー…。でもなんだかんだ遊園地は楽しかったな。」
「また行きたい!またあのショーみたい」
え、あれが一番ないだろ…
「今日は面倒だから出前とるか」
「またピザ食べる」
「気に入ったんだな…」
ギャラクシーピザに電話を入れると混み合ってると言うのでしばらくゆっくりすることにした。
「快斗、明日のライブいくの?」
「え、なんで!?いや、行かないって言っただろ?」
「でも行きたそうだった。」
「あ、いやそんなことは…」
蓮水さんとと言うよりは単にライブに行きたいってだけなんだけど…そんなこと信用してくれないもんな…
「行ってもいいよ?」
「え!?ほんと!?」
「ほら、行きたいんだ」
…カレンにカマかけられるとは…
ちょっと拗ねてしまったカレンだが、今日は遊園地のおかげでかそれでも機嫌がよさそうだった。
しばらくすると玄関を叩く音がした。出前かな?
「はーい…ってええ?」
アンがピザを持ってきた。
「いやいや、お前さっきまで遊園地いたじゃん?」
「かけもち」
「いやほんと一緒にピザ食べてかえる!?」
なんか申し訳ないわ…
「あ、そういえば海神《わだつみ》さんがアドレス教えてくれって言ってたぞ?」
「やり女か、どーしてもなら別にいいけど」
「なんか上からだな!?お前女に関してはまぁまぁ強気だよな!」
タイプじゃない…ということか?
「ギャルが好き」
「ああ、そうみたいだな…蓮水さんとか超タイプだろ?」
「さん?蓮水様と呼べ!」
「え、がっつりファンなの!?」
アンは得意げにファンクラブの会員証を見せてきた。
会員ナンバーは10052だった。
え、そんなにいるの!?蓮水さんすげーな!
でも脅迫文お前じゃないだろうな…
アンは次の出前の電話が入ったようで帰っていった。
過労のせいでフラフラしているようにも見えた…
誰か彼を救ってやってくれ…
ピザを食べ終えてしばらくすると、また誰か来た。
最近来客が多すぎるだろ…
「はーい。ん?どちら様?」
「拙者は蓮水様ファンクラブ 会長、太田釧根《おおたくしね》と申す。貴様が蓮水様を拐かす女衒師、桜庭だな?」
ずんぐりむっくりなメガネのチェックシャツの男がきた。
なんかすんごいオタクみたいな人出てきたぞ…?
しかも名前はオタクシネ?もう自己否定が甚だしいな…
「明日の蓮水様とのデート、どうするつもりだ?」
「え、行かないつもりだけど?」
「何!?じゃあチケット譲れ!」
「いやなんで!?お前は誘われてないだろ!」
待ち合わせ場所にこいつきたら蓮水さんビビるだろうなぁ…
「むむ、それなら明日の朝、蓮水さんを賭けて勝負しろ!貴様が負けたら蓮水さんから手を引け!」
「いや、だから行かないって言っただろ!聞いてた!?まぁ…どうせ聞いてくれないんだろうけど…何で勝負するの?」
「うむ、勝負はこいつでどうだ?」
出してきたのはダーツの矢だった…
「え、ダーツするの!?なんか全然イメージと違うんですけど!?もっとオタクなやつじゃないの?遊○王カードとか、てっきりそんなんかと思ったわ!」
「クリケットとゼロワンどっちが好きだ?」
「なんかその見た目で言われたらイラッとくるな!」
またまた意味不明な勝負を朝からすることになった…
「快斗、ダーツってなに?」
奥で会話を聞いていたカレンに聞かれた
「ああ、動画見てみるか?ほら、こうやって的に矢を投げて刺すんだ。」
「股に矢をぶっさす」
「全然違うわ!」
なんかムラムラしてんのかこいつ?
お互い疲れてたので早めに寝ることにしたが、翌朝のダーツ勝負にはまさかの相手がやってきた…
次回 ダーツで勝ったらライブデート!?
対戦相手はまさかのお前かよ…
そしてカレンのヤキモチが爆発します…
遊園地に着いた途端カレンは大はしゃぎだった。
「はいはい、待って待って。」
子供のようにはしゃぐカレンだが、見た目は超がつく可愛いJKだ。周りの大人もカレンの笑顔に釘付けだった。
ほら、あの子何者だ?と言わんばかりの皆の驚く声が聞こえてくる…
「おい、あの隣の男誰だよ、埋める?」
「不釣り合いにもほどがあるだろ、沈める?」
「あいつさえいなければあの子も俺たちと…燃やすか」
いや全部俺へ向けられたジェラシーじゃん!?
しかも俺どうあっても殺されるの?どうしてこんな平和な遊園地でそんな物騒なことばっかり言うんだよ…
まぁそれにも多少の理由はあるのだ…
この遊園地は、校長が運営する「落葉パーク」。五年前にこの街最大の目玉として開設された施設であり、あの夢の国の唯一のライバルと称されるとかなんとか(そんなわけあるか!)
確かにアトラクションも綺麗で豊富だし、十分楽しめるのだがあの校長の施設というだけで、見れる夢は悪夢しかないのではと思ってしまう…
「カレン、ここも校長の施設なんだろ?それなのに来たことはないのか?」
「うん、ここはフランチャイズ。じいが経営してる。」
「…え!?」
「じいのお給料少ないからって、パパが社長をじいにしたの」
「いやいや、寵愛受けすぎだろ!?それにアンは!?生活苦とか言ってたぞ!?もうちょっと給料上げろよ!」
いや贔屓を超えてこれももう差別だろ…
「快斗、あれ乗る!」
「ああ、メリーゴーランドか」
この遊園地もまた、カップルがイチャイチャできるような仕掛けが無数になされている。
普通メリーゴーランドも子供と以外は一人乗りなのだが、ここは二人乗りである。
更に意図的に揺れることで体を密着させカップルのムラムラを誘発する仕組みになっているのだとか…
「カレン、ちゃんと捕まっておけよ」
「えへへ、快斗の背中大きい」
あー、もう勃っちゃったよ!
しかしながらこの馬、かなりのじゃじゃ馬であった…
揺れるなんてもんじゃないぞこれ?
振り落とされかけて悲鳴をあげる客や泣きながら降ろしてと叫ぶ男女で、ここは恐怖の回転木馬と化していた…
かく言う俺ももう景色もクソもなく必死にしがみついていたので、首を痛めた…
カレンは…なんか楽しそうに俺にしがみついていた。
「はぁ…はぁ…いや絶叫マシーンより怖いわこれ!」
「楽しかったー。快斗、次あれ乗る!」
元気だなぁ…
でも、なんかほんとのカップルみたいだなこれ。
いや、クソ楽しい…
次に来たのはコーヒーカップだ…
もう回るやつ怖いんだけど…
これも同じくカップルで腰掛けたあと、絶妙な回転により男女を密着させる仕組みだというが、もう嫌な予感しかしない…
「なぁカレン、あれは目が回るから酔うぞ?」
「大丈夫、グルグルバットしても平気な人だから」
「え、あれ平気な人いるの!?三半規管どうなってんだお前!?」
お前は猫か!
無理矢理コーヒーカップに押し込まれ、カップが動き出したのだが、こっちの方が地獄だった。
もう優雅さや爽快さは一切なく、ただただ高速で回るカップに俺たちの平衡感覚はゴリゴリと削られていった…
既に吐いている人や中には回転で外に飛ばされる人までいた。もうただの拷問機械だった…
「おえー、まだクラクラする…」
「快斗大丈夫?」
気持ち悪そうにする俺にカレンがキスしてきた。
遊園地でキス…いやもう段階踏みまくってますよね!?
どう言い訳してこの後ごまかそうかな…
でもキスをされたことで色々と元気になって、次のアトラクションに向かった。
「あ、なんかショーしてる!見たい!」
「ステージショーか、どんなのかちょっと気になるな。休憩がてら行ってみるか。」
普通ならヒーローショーであったり、アニメの舞台版みたいなのがしていたり、海賊がきて水を観客に飛ばしたりして盛り上がるのだろうが、やはりここは高村さんの遊園地だった…
『侠客《きょうかく》 仁義を貫く男たちの戦』と書かれていた。いやこれ遊園地でやったらダメだろ!?
「カレン、任侠ものだぞこれ?他のにしないか…」
「見るの!ショー見たい!」
「はいはい…」
不安げに中に入ると、なぜか親子連れがたくさんいた。
いや子供に見せるなよ!
何やら楽しげな親子の会話が聞こえてくる…
「ねえママ、どんな敵が出てくるのかなぁ?」
「そうねぇ、青服が旧式のニューナンブで立ち向かってくるだけでしょ?」
いやあんたらは極道側の人なの!?
子供に拳銃とか教えるなよ!
「なんだニューナンブかぁ、38口径なら安心だね。」
全然安心じゃねぇわ!
てかあんな子供がなんでそんな拳銃詳しいの!?
その子は後継者さんですか!?
「なんか危険な気がするぞここ…」
「危険?じい呼ぶ?」
「呼んだらなにかの抗争が始まりそうだよ!」
始まったショーは、終始淡々と進むのだが、なんとも脚本が面白くない…
ただ警察官がやられ、ヤクザ側が無双するというどっちの人が脚本を書いたのか一発でわかるような雑なものだった…
「なぁ、もう出ようよ…」
「しっ、今いいとこ」
え、どこが!?
なんか一方的に黒服たちに街を征服されてショーは幕を閉じた…
これなんかの洗脳教育なのか…?
「快斗、おもしろかった!」
「あ、そうですか…」
普段何を観てるんだこいつ?
園内持ち込みは禁止ということだったので、最後に観覧車に乗ってから外で持ってきたサンドイッチを食べることにした。
「あ、写真とってくれる!快斗、撮ってもらお!」
「おお、撮ろうか!」
撮影を頼むとアルバイトらしき若いカメラマンが俺たちに寄ってきた。女の子だが同い年くらいかな?
「カップルさんですかー、羨ましいですね。ささ、もっと寄って」
なんかやたら俺たちをくっつけたがるなこいつ…
「そうそう、もっと、なんならキスしちゃいますか!」
「しちゃいませんよ!人前でそんなんするのバカップルくらいだろ!」
しかしすぐにカレンにチューされて激写された…
バカップルじゃん…
観覧車からの景色はとても良かった。
今日唯一ここだけが良かった…
しかし疲れはピークに来ていて、ムードも何もないまま観覧車を降りた。
降りたところでさっきのバイトが写真を配っていた。
「はい、いい感じに撮れてますよ。」
俺は自分たちがチューした写真を渡された…
「これ…いる?」
「いる!」
は、はい…
他の人たちの写真はどんなんだろうと、前の人がもらった写真を覗き込んだらなんとその人も俺たちのキス写真を持っていた…
「いやいや、普通本人らの写真渡すだろ!?なんで俺の恥ずかしい写真を客にばら撒いてんの!?」
「ふふふ、ひっかかったわね。私は薬師寺様が部下、聡子《さとこ》よ!あんたらの恥ずかしい写真ばら撒いて学校に行けないようにしてやるわ!」
また変なのがきた…
休みの日くらい休めよお前らも…
「この写真を見た校長は、きっとあなたを退学にするでしょうね。なにせ愛娘とキスしてるところなんてあの人が許すはずもないもの!そしてショックを受けたあなたは、我々アマゾネスに寂しさの余り身を委ね…完璧な作戦よ!」
「いや、校長から許可もらってます…」
もうちょっと調べてからこいよ…
あと作戦の趣旨を敵にバラすな!
「な、なんですって!?親公認とか聞いてないわよ!?それじゃこの写真を全国放送されてもあなたは平気ということ!?」
「いや全国はやめて!さすがに社会で生きづらくなるわ!」
全国公認のバカップルにはなりたくねーよ…
カメラマンの女はショックで動けそうもなかったので、放ってかえった。
出口付近で清掃をしているおじさんが転んだところを見た。すごい剣幕で先輩に怒られている…
「おい、お前ほんとグズだな!ゴミ拾いくらいさっさとしろ!」
「…」
よくみるとアン・ジールだった…
「アンお前ここでもバイトしてんの!?ていうか高村さんの従業員なわけ!?」
「お金がいる」
「な、なにか特別な事情でもあるのか?」
「生活苦」
「いやもう誰か正社員で雇ってやれよ!」
哀れな世界チャンピオンだな…
今度会ったらラーメンくらいはご馳走しよう…
お昼は近くの公園で二人で作ったサンドイッチを食べた。
「あ、これ美味しい。カレンやっぱり料理うまいなぁ」
「快斗のも美味しい。はい、あーん」
ああ、なんという素晴らしい休日なんだ…
もう一億円いらないから、退学でもいいからカレンとどうにかなりたいよ…
楽しい時間はあっという間というが、本当にすぐに夕方になった。
寮に着くまでの間は何も…ないわけがなかった。
まず空から槍が降ってきて、「早くアンの連絡先を教えろ」と槍文《やりぶみ》で恐喝された…いや、せめてこれやるのは学校内だけにしてくれ!
そして薬師寺さんは刺客をよこしながらもボス自ら前線に赴くという謎のスタイルで今日も話しかけてきたが、俺は当然無視した。
エッチのことしか頭にない人と話すことはないと突き放すと、「たった5165人との関係で人をヤリチンみたいに言うな」と怒ってきた。
いや絶対そうだし!それにまた増えてるよペースおかしくない!?
最後に純也から電話がきて、さっきのキスの写真がインスタにアップされていると言われて開くと250万人のフォローがついていた…
全国に晒されてしまった…
でもカレンだけは嬉しそうだった。
「あー疲れたー…。でもなんだかんだ遊園地は楽しかったな。」
「また行きたい!またあのショーみたい」
え、あれが一番ないだろ…
「今日は面倒だから出前とるか」
「またピザ食べる」
「気に入ったんだな…」
ギャラクシーピザに電話を入れると混み合ってると言うのでしばらくゆっくりすることにした。
「快斗、明日のライブいくの?」
「え、なんで!?いや、行かないって言っただろ?」
「でも行きたそうだった。」
「あ、いやそんなことは…」
蓮水さんとと言うよりは単にライブに行きたいってだけなんだけど…そんなこと信用してくれないもんな…
「行ってもいいよ?」
「え!?ほんと!?」
「ほら、行きたいんだ」
…カレンにカマかけられるとは…
ちょっと拗ねてしまったカレンだが、今日は遊園地のおかげでかそれでも機嫌がよさそうだった。
しばらくすると玄関を叩く音がした。出前かな?
「はーい…ってええ?」
アンがピザを持ってきた。
「いやいや、お前さっきまで遊園地いたじゃん?」
「かけもち」
「いやほんと一緒にピザ食べてかえる!?」
なんか申し訳ないわ…
「あ、そういえば海神《わだつみ》さんがアドレス教えてくれって言ってたぞ?」
「やり女か、どーしてもなら別にいいけど」
「なんか上からだな!?お前女に関してはまぁまぁ強気だよな!」
タイプじゃない…ということか?
「ギャルが好き」
「ああ、そうみたいだな…蓮水さんとか超タイプだろ?」
「さん?蓮水様と呼べ!」
「え、がっつりファンなの!?」
アンは得意げにファンクラブの会員証を見せてきた。
会員ナンバーは10052だった。
え、そんなにいるの!?蓮水さんすげーな!
でも脅迫文お前じゃないだろうな…
アンは次の出前の電話が入ったようで帰っていった。
過労のせいでフラフラしているようにも見えた…
誰か彼を救ってやってくれ…
ピザを食べ終えてしばらくすると、また誰か来た。
最近来客が多すぎるだろ…
「はーい。ん?どちら様?」
「拙者は蓮水様ファンクラブ 会長、太田釧根《おおたくしね》と申す。貴様が蓮水様を拐かす女衒師、桜庭だな?」
ずんぐりむっくりなメガネのチェックシャツの男がきた。
なんかすんごいオタクみたいな人出てきたぞ…?
しかも名前はオタクシネ?もう自己否定が甚だしいな…
「明日の蓮水様とのデート、どうするつもりだ?」
「え、行かないつもりだけど?」
「何!?じゃあチケット譲れ!」
「いやなんで!?お前は誘われてないだろ!」
待ち合わせ場所にこいつきたら蓮水さんビビるだろうなぁ…
「むむ、それなら明日の朝、蓮水さんを賭けて勝負しろ!貴様が負けたら蓮水さんから手を引け!」
「いや、だから行かないって言っただろ!聞いてた!?まぁ…どうせ聞いてくれないんだろうけど…何で勝負するの?」
「うむ、勝負はこいつでどうだ?」
出してきたのはダーツの矢だった…
「え、ダーツするの!?なんか全然イメージと違うんですけど!?もっとオタクなやつじゃないの?遊○王カードとか、てっきりそんなんかと思ったわ!」
「クリケットとゼロワンどっちが好きだ?」
「なんかその見た目で言われたらイラッとくるな!」
またまた意味不明な勝負を朝からすることになった…
「快斗、ダーツってなに?」
奥で会話を聞いていたカレンに聞かれた
「ああ、動画見てみるか?ほら、こうやって的に矢を投げて刺すんだ。」
「股に矢をぶっさす」
「全然違うわ!」
なんかムラムラしてんのかこいつ?
お互い疲れてたので早めに寝ることにしたが、翌朝のダーツ勝負にはまさかの相手がやってきた…
次回 ダーツで勝ったらライブデート!?
対戦相手はまさかのお前かよ…
そしてカレンのヤキモチが爆発します…
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