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第1話 君に話がある

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俺は桜庭快斗《さくらばかいと》、この春高校2年生になる。

俺が通う私立 落葉武帝《らくようぶてい》高校は、通称ラブ高と呼ばれ、他の高校生から揶揄されている。

安易な省略に思えるだろうが、案外この呼び名は言い得て妙なのである。

10年前に創立されたこの高校の創始者であり校長の名は、落葉武帝。
ラブコメ界では知らぬ人はいないと言われる超売れっ子作家で、その潤沢な資金から学校を創立した。

しかしラブコメ脳な校長が作った校則はひどいもので、集まる生徒たちも全国の中学校のヤリチンとビッチばかりが集う。

全校生徒1000人がいるこの学校の未経験者率はなんと0.01%と言われており、ほとんどが入学前にことを済ませている奴らばかりだ。

以上の理由からラブ高と呼ばれるこの学校の希少種と称される童貞の俺は、新学期早々に校長室に呼び出されていた。

「失礼します。」

重厚な扉を開け校長室に入ると、そこには威厳のある校長の姿があった。
この人が落葉武帝か…こんないかつい人があんな甘々なラブコメを描いているとは想像もつかない…

「君が桜庭くんか。まぁかけたまえ。」

俺は緊張していた。
なぜならこの学校は異常に退学者が多いのだ。

校則は緩いはずなのに謎の失踪を遂げる生徒が続出し、噂では成績の悪い生徒などが強制的に退学させられているという話も聞く。

俺もまた成績は下から数えた方が早く、まさか強制的に退学させられるのではと不安になっていた。

「君を呼んだのは他でもない。」

校長が俺の正面に腰掛けた。


「君に課題を出す。私の娘の処女を守り抜くのじゃ。」


…は?

いい歳をしたおっさんが何を言っているのか、聞き間違いかと思った。

「娘?しょ、処女!?」

「そうじゃ、私の娘カレンは最近になって性に目覚めてしまった。しかしそれは断じて許さん!だがここの生徒は皆ケダモノばかりじゃ。そこで君に娘の貞操を守り抜く課題を与える。」

校長の娘、落葉カレンは春からこの学校に入学する新1年生だという。
写真を見せてもらったが、名前の通りハーフで青い目をしたフランス人形のような美人なので、それはそれは中学から男に狙われてきたそうだ。
しかし本人の性格かそれともこの校長の過保護のせいかとりあえず処女を守っているらしい。

「いやいやなんで俺!?俺も男ですよ?」

「君にしか頼めんのじゃ。」

校長からお前しかいないと言われるとどんなことでも悪い気はしないが、その理由を聞くとただ恥ずかしかった。

「君はこの学校唯一の童貞じゃ。他の連中はヤリチンばかりで娘を預けることなどできん。」

俺唯一だったんだ…仲間の一人や二人はいると思っていた俺が恥ずかしい…

「いやいや、そんなの校長がやってくださいよ!」

もうなんの話かもさっぱりすぎて俺も返す言葉がうまく出てこなかった。

「これ以上退学者を出したらこの学校の経営に関わる!娘に手を出したら退学だと散々言っておるのにあやつらは刺し違える覚悟で娘を犯しにくる…しかもカレンが中学生なのに遠征までしてじゃぞ!もうどうにもならん!」

退学者が多い原因はそれかよ…
ていうかあんたの作った学校だろうが…

「そ、それなら家に匿ってたらいいじゃないですか!?」

「いかんのじゃ…うちに置いておくことはできん…」

何か深刻な事情があるのか?

「校長?なにか深いワケがあるんですか?」

「うちの妻はな…ビッチなのじゃ!」
「聞きたくないわそんな話!」

なんの話なんだ…

「うちの妻はビッチじゃから娘にセックスを勧めてくるのじゃ。もはや周りには敵しかおらん。君だけが頼りなんじゃ」

「いや、奥さんがビッチを二回も言わないで…それに俺がそれをする得がないじゃないですか!」

「ふむ、得とな…」

「そうです、俺も何も見返りなしにそんな意味不明な課題を受けるつもりはありません!」

「1年間守ってくれたら1億円やろう」
「やります」

1億円という言葉に俺は引っかかってしまった。

「そうか、やってくれるか。それは頼もしい。早速君のために寮を用意しよう。そこでカレンと生活しながら昼夜彼女を守ってくれ。」

寮?生活?

「いやいや、同棲!?俺カレンさんと話したこともないですよ?それに俺も男なんですから俺がカレンさんを襲うとか考えないんですか!?」

「いや、君はこの学校創立以来最高の逸材じゃ。この環境で誰とも交われず童貞を拗らせている君に娘をどうこうできるわけがないと私は確信しておる。君にしかできん、頼んだぞ!」

ここまで全幅の信頼を得ながらクソ味噌に貶されることなどあっていいのか…

「でも校長…」

「君も退学になりたいかね?」


俺は気がついたら用意されるという寮に向かわされていた。

くそ、大人の権力使いやがって…

そして寮に着くと、そこはボロボロの建物だった。

『ようこそ落葉武帝寮へ』

と書かれた歪んだ木の看板に、ガラスの割れた引き戸の玄関はもはや人が住むところには見えなかった。

だいたいなんでこの学校に入れるんだよ…
他の学校に行かせた方が良かったのではという疑問は今は愚痴っても仕方ないだろう。

「お邪魔しまーす。」

誰もいないのか?
そりゃそうだよな、こんなところに人なんて…

「はーい?」

暗い廊下から出てきたのは、青い透き通るような目の金髪の少し小柄な美少女だった。

「あ、君が快斗?パパから聞いた。よろしくね。」

校長、俺、この子とここで二人で暮らすんですか…?

「ねえ快斗」

早速俺の名をバンバン呼び捨てで呼んでくるカレンに俺は気がついたら見惚れてしまっていた。

「あ、ああ済まない。どうした?」

「セックスしてみない?」

校長先生、この課題キツすぎませんか…!?

俺とカレンの寮生活は始まった瞬間から狂っていた…


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