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本編

捕獲

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あれから私は淡々とバイトをこなしていた。
色々あり過ぎてとてもじゃないけど夏休みを満喫しようだなんて思えなかったから。


未央ちゃんのお父さんがうちまで来て土下座した時には本当にびっくりした。
このままでは未央ちゃんは営利目的等略取及び誘拐罪という罪に問われる可能性が高いらしい。
私だけじゃなく、万里くんの件もある。
どうにか示談にできないか、と頭を下げに来た。

正直未央ちゃんには怒りしかない。
私があそこまでされるのは勿論の事、万里くんまで巻き込んで何がしたかったのか。

未央ちゃんのお父さんは何も悪くなくて申し訳ないけど、考えさせて下さいとだけ伝えた。


それから橘くんもうちに来た。

万里くんに顔を見せてやって欲しいって。
万純くんも気が動転していたからあんな事を言ってしまったけど、本心じゃなかったと。

必死に説得してくれているのは伝わってきたけど、私は首を縦に振る事はなかった。

お見舞いに行きたい気持ちはあるけど、今万里くんに会ってしまったら私の気持ちはもう止められない。
咲月さつきさんが言っていた通り、まだ引き返せる。きっと、この気持ちは時間が解決してくれるから。
そう思い、私はスマホからの連絡先を消した。



✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼



あの事件から一ヶ月経った。
結局私は示談に応じる事にした。
幸いにも私の怪我は軽く、男性に対する恐怖心などの後遺症もない。
だけど何だか疲れてしまった。

ほぼ毎日謝りに来る未央ちゃんのお父さん。
気持ちはわかるけど、もうほっといて欲しかった。

私の夢は平凡だけど幸せな将来であって、皇くんや藤井さんのような住む世界が違う人とは関わりたくない。
残りは両親と弁護士の先生にお任せして、私は自分の生活を第一に考えるようにした。


夏休みも終わり、また大学が始まる。
キェロ ベルテのマスターが夏休み後もバイトを続けないかと誘ってくれて、私は週二日だけ働かせて貰う事にした。

キェロ ベルテは色んな人に場所がバレているけど、あの空間は私にとって特別な物だ。
きっといつかこんな事もあったなと笑って過ごせる時がくる。
それまで私は静かに過ごそうと心に決めた。



久々の大学はまだ夏休み中の子もいるからだろう、あまり人がいなくて快適だった。
いつもならすぐ寄ってくる橘くんもまだ夏休み中。
一人で過ごす大学生活は気楽であり、淋しくもあった。
橘くんと未央ちゃんと過ごした時は思いの外、楽しかったのだと今更ながらに痛感した。


今日の講義は二時限までだったから早々と帰りの支度をする。
あの事件からお母さんは仕事を減らし、なるべく家にいるようにしてくれている。
今日もきっとお昼ご飯を用意して待っていてくれるだろう。
私は急いで大学を後にしようと、足早に門へと向かった。

門を潜り抜け、暫く歩くと見慣れた高級車が目に入った。
何度も会った運転手さんは運転席のドアの前に立ち、頭を下げる。

なぜ、そう思った時後ろから腕を回されふわりと抱きしめられた。

その腕には覚えがあって
その匂いも安心してしまう位好きで
でも、会いたくなかった人



「リリィちゃん、捕まえたァ」












八つ刻|ω・)法律に関しては適当です・・・すみません。
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