上 下
14 / 21

侍女の告発

しおりを挟む

何がなんだかわからないが、とりあえず泣いている侍女をサーシャとサニアで宥めた。
意味がわからないナタリアは不愉快と顔全面に出している。

「一体どうしたというの?」
「ひぐっひっく・・・申し訳っ・・・ございません」
「何が申し訳ないの?何をしたというの?」

他の侍女たちも理解できていないようでオロオロしている。
泣き止まない侍女の背をサーシャはゆっくり摩り、優しく言った。

「何かしてしまったのね?話しにくいことならわたくしが二人だけで聞くわ。部屋を移動しますか?」

侍女は涙で濡れる顔をゆっくり上げてサーシャを見つめる。

「っく・・・いえ・・・ここでお話します」

侍女はゆっくり立ち上がった。サーシャはいまだ背を摩り続け、もう片方の手は侍女の手を握っている。

「それで・・・どうしたの?」
「はい・・・実は・・・ひっく。アンドレ殿下が召し上がるケーキには薬が仕込まれているんです」
「なんだと!?」

衝撃な告白に一同は驚きを隠せない。
中でも本人であるアンドレは大きく瞳を開き、側近であるレイルは大声を張り上げた。
その声に侍女はビクリと身体を揺らすが、続けた。

「び・・・媚薬を仕込めと・・・命令されて・・・」
「媚薬?一体誰が!何のために!」

侍女の肩をガシリと掴み揺らすレイル。
ガタガタと揺らすレイルにアンドレが苦言を呈す。

「おいレイル。そんなに揺らしては彼女が話せないだろ。少し落ち着け」
「これが落ち着いていられますか!!貴方は薬を盛られるところだったんですよ!」
「わかっている。だが今はそれより彼女の話を聞く方が優先だ。命令だ、彼女から離れろ」

命令と言われれば退くしかないレイルは渋々引き下がった。

「それで?誰に頼まれた?」

アンドレの冷たい瞳に見つめられた侍女は青ざめた顔でサーシャと繋いでいた手にギュッと力を込めた。

「はい・・・ナタリア様に・・・」
「はぁ!!?」

次いで大声を上げたのはナタリアだ。
一同の視線がナタリアに集まり、マルセルとサーシャは青ざめている。

「ちょっと!嘘言わないで!!私そんなこと頼んでないわ!」
「アンドレ殿下を手に入れるため・・・媚薬を盛って既成事実をつくると・・・仰って・・・」

ナタリアの叫びにも構わず侍女は話し続けた。

「私は嫌だったんです・・・でも、次期王妃になるナタリア様に逆らったらどうなるか・・・。でもっでもっやっぱり私、怖くなって・・・!」

そこでまた侍女は泣き出した。

「ナタリア・・・君・・・本当にそんなことをしたのか・・・?」

青ざめた顔をしたマルセルがナタリアに近づき、震える声で問いただす。

「そんなことするわけないでしょ!?大体こんな侍女、顔も知らないわよ!!」
「しかしナタリア嬢、貴女がアンドレ殿下に近付こうとしていたのは事実。貴女の証言だけでは信用できませんね」

冷たく言い放ったのはレイルだ。

「近付・・・?ナタリア、どういうことだ!?私が君を王妃にと必死になっている時に君はアンドレ殿に近付こうとしていたのか!?」

マルセルはナタリアの腕を強く掴み、迫った。

「うっさいわね!そうよ!マルセル様よりアンドレ様の方が私好みなの!自分だってその伯爵令嬢と仲良くしてるじゃない!」
「違う!彼女は・・・君が王妃になるために側室として来てもらえるよう取り計らっていただけだ!!」

なぜか話はマルセルの側室の話しに。
どうやらマルセルは勉強ができないナタリアを諦め、サニアを側室とし執務をさせるつもりだったらしい。

「そんな・・・!わたくしに愛していると言ったのは嘘だったんですか!?」
「愛しているなんて言っていない!君の力が必要だと言っただけだ!」

マルセルの言葉に泣き出すサニア。
楽しいはずのお茶会は混沌とした状態になる。
その時一人の男が手を上げ言った。

「とりあえずそのケーキに媚薬が入っているのか調べたら?」

リチャードのその一言で一時的に場は収まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄追追放 神与スキルが謎のブリーダーだったので、王女から婚約破棄され公爵家から追放されました

克全
ファンタジー
小国の公爵家長男で王女の婿になるはずだったが……

所詮、愛を教えられない女ですから

cyaru
恋愛
オコット公爵家のジャクリーンは妃教育も終えて1年後の成婚の儀を控えたある日、王宮に呼ばれた。 申し渡されたのは「婚約の白紙撤回」 何の問題も無かったはずの王太子アルバートとの関係。 数日前にも自分たちの代になれば国をどうするか話をしたばかり。 婚約白紙の理由をアルバートから聞かされたジャクリーンは困惑した。 その理由はなんと・・・。 「何もしなかった」からだと言う。 何をしなかったのかと言えば「アルバートに愛を教えられなかった」なのだとか。 そんなアルバートに愛を教えたのは実妹のアビゲイル。 アビゲイルには帝国第4皇子ウォレスとの縁談が持ち上がっていたが、話は棚上げになっていた。 冷酷非情で血を浴びるのが大好きというウォレスとの婚約をどうにかしたいアビゲイルは落としやすいアルバートをちゃっかり寝取っていた。 アルバートへの恋心もすっかり消えたジャクリーンはアビゲイルと入れ替わりでウォレスとの婚約が結ばれた。 もう国にも居たくないのに「お姉様には祝福して頂きたいの」とアビゲイルの言葉でアルバートとアビゲイルの成婚の儀の後の出立となったジャクリーンはウォレスから届く手紙にささくれる心を癒される日々を過ごす。 成婚の儀も終わり、ウォレスの元に出立したジャクリーンだったが、そこに待ち受けていたのは、手紙のやり取りですっかりジャクリーンに恋をしたウォレスは初見なのに「愛してる!」「大好きだ!」「我が妻は可愛いな」と全身全霊で愛を向けてきて重く暑苦しい。 意外と快適な生活を満喫するジャクリーンだったが、反対にアビゲイルとアルバートは窮地に陥って行くのだった・・・。 ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★5月31日投稿開始、完結は6月2日22時22分ニャーン! ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。

マイナーゲーム世界で人生を切り拓く〜気がつけばそこは、誰も知らないドマイナーソシャゲの世界でした〜

潟湖
ファンタジー
ディーノのライト―――それが、この世界で与えられた俺の名前だ。生まれて間もなく両親と死に別れ、両親の幼馴染に引き取られて育った、一見何の変哲もない平民。 だが、そんな俺には誰にも言えない秘密があった。そう、それは「こことは違う世界の記憶を持っている」ということ。 今、俺の目の前に広がる世界と景色は、前世でこよなく愛したソシャゲ【ブレイブクライムオンライン】だった。 100人に一人どころか1万人に一人知ってりゃいいほうじゃねぇの?と思われそうな、ドが100個はつきそうなマイナーゲーム。 だが、そこは勝手知ったるこの世界、ならばこそ生き延びることができるはず!むしろ楽しんでしまえばいいんじゃね!? 普段はのんびり、適度に冒険、そして時折世界の謎やら話のあらすじ、大きな流れに挑み抗いながらも、やはり基本は平和に暮らしたい、そんな男と愉快な仲間達の物語。 ※ハーレム要素薄いです。  何でか女の子キャラ増えません。増やしたいのになかなか増えません。全くいない訳ではないんですが。でも、多少女の子キャラ増えたところで、ハーレム発展する可能性はかなり低いです。 ※主人公は前世記憶持ちなので、多少のチート要素はあります。  が、主人公を上回るチート性能持ちの現地人が主人公のすぐ横にいるせいで、あまり目立ちません。 ※ザマァ要素ほぼありません。  ザマァされるような屑い胸糞キャラを主人公の周りに侍らせたくない、というのが作者の根底にあります。今後も絶対に未来永劫ザマァ案件は起こらない!とまでは断言できませんが。 ★重要告知★  最初のうちこそ世界観構築のため、人死に等の若干鬱寄りの暗い過去の話が続きますが、第9話で構築完了します。  第10話以降は暗い話はほぼなく、むしろ笑えるシーンがどんどん増えていきますので、是非とも第10話以降まで読み進めていただければありがたいです。  何なら第10話以降から読んでくださっても構いません。その上で、内容を面白いと思っていただけましたら、改めて前振りや続きを読んでくださると嬉しいです。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しています。

婚約破棄計画書を見つけた悪役令嬢は

編端みどり
恋愛
婚約者の字で書かれた婚約破棄計画書を見て、王妃に馬鹿にされて、自分の置かれた状況がいかに異常だったかようやく気がついた侯爵令嬢のミランダ。 婚約破棄しても自分を支えてくれると壮大な勘違いをする王太子も、結婚前から側妃を勧める王妃も、知らん顔の王もいらんとミランダを蔑ろにした侯爵家の人々は怒った。領民も使用人も怒った。そりゃあもう、とてつもなく怒った。 計画通り婚約破棄を言い渡したら、なぜか侯爵家の人々が消えた。計画とは少し違うが、狭いが豊かな領地を自分のものにできたし美しい婚約者も手に入れたし計画通りだと笑う王太子の元に、次々と計画外の出来事が襲いかかる。 ※説明を加えるため、長くなる可能性があり長編にしました。

愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす

リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」  夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。  後に夫から聞かされた衝撃の事実。  アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。 ※シリアスです。 ※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。

6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった

白雲八鈴
恋愛
 私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。  もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。  ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。 番外編 謎の少女強襲編  彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。  私が成した事への清算に行きましょう。 炎国への旅路編  望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。  え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー! *本編は完結済みです。 *誤字脱字は程々にあります。 *なろう様にも投稿させていただいております。

《完結》転生令嬢の甘い?異世界スローライフ ~神の遣いのもふもふを添えて~

芽生 (メイ)
ファンタジー
ガタガタと揺れる馬車の中、天海ハルは目を覚ます。 案ずるメイドに頭の中の記憶を頼りに会話を続けるハルだが 思うのはただ一つ 「これが異世界転生ならば詰んでいるのでは?」 そう、ハルが転生したエレノア・コールマンは既に断罪後だったのだ。 エレノアが向かう先は正道院、膨大な魔力があるにもかかわらず 攻撃魔法は封じられたエレノアが使えるのは生活魔法のみ。 そんなエレノアだが、正道院に来てあることに気付く。 自給自足で野菜やハーブ、畑を耕し、限られた人々と接する これは異世界におけるスローライフが出来る? 希望を抱き始めたエレノアに突然現れたのはふわふわもふもふの狐。 だが、メイドが言うにはこれは神の使い、聖女の証? もふもふと共に過ごすエレノアのお菓子作りと異世界スローライフ! ※場所が正道院で女性中心のお話です ※小説家になろう! カクヨムにも掲載中

【完結】豚令嬢と呼ばれた美貌の公爵令嬢の真実の愛

青空一夏
恋愛
 私はアデリン・コプルストン。グリンデルバルト王国の公爵令嬢で王太子殿下の婚約者です。王立貴族学院に通う二年生で、友人も多く楽しい学園生活を送っていました。家族仲も姉妹仲も良くて、王太子殿下からはとても大事にされ愛されていると思っていました。  ところが、深刻な困った状況が起こります。なんと、私の食欲が止まらなくなったのです。いくら食べても満足することができませんでした。痩せ型だった私の身体が少しふっくらした頃までは、皆好意的に受け止めてくれました。 「前がほっそりしすぎていたものね。女の子はそれぐらいふっくらしていたほうが可愛いわ」    そのように言ってくれたのですが、どんどん私の身体は大きくなっていき、王太子殿下の心は離れていきました。学院の友人たちからも蔑まれ、私は孤立していきました。妹の誕生日を祝うパーティでは王太子殿下から婚約破棄され・・・・・・  これは魔法が当たり前にある異世界の物語。才色兼備だったヒロインが豚のようになったことから周りの状況が変わっていき、虐げられるようになりますが・・・・・・真実の愛を見つけて幸せになります。 ※魔法ありの異世界。コメディー調。摂食障害っぽい描写あり。

処理中です...