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お茶会

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形上ナタリア主催のお茶会は王城の客間の一つ、ナタリアが滞在している部屋で行われることになった。
当初の予定では庭園でと言っていたのだが、ナタリアが何か仕出かした時のため却下となった。

サーシャはその客間でぎこちない、固い笑顔を浮かべていた。

今回のお茶会のメンバーはサーシャやアンドレ、ナタリアの他にマルセル、リチャード、レイル、そして伯爵令嬢のサニアがいた。

ーー他の方はまだしもなぜサニア様が・・・?

サニアはニコニコとマルセルの横で微笑んでいるが、サーシャには状況を理解できずにいた。

因みにリチャードは舞踏会でお茶会の件を聞き、無理やり参加してきたのだ。

「なんか予定より人数多くないですか?」

ナタリアはブスッとしながら言う。ナタリアの中ではアンドレと二人でお茶をする予定だったからだ。

「まあまあナタリア。さすがに婚約者の君とアンドレ殿を二人にはできないだろう?」
「私もマルセル殿に誤解されるのはごめんですからね」

宥めるマルセルに笑うアンドレ。どうやらアンドレは王子の仮面をまた被っているらしい。

「・・・じゃあ皆さん座りましょう」

ナタリアの一言でそれぞれがソファに腰を落とした。
ナタリア側のソファに左から、サニア、マルセル、ナタリア、アンドレ。
サーシャ側のソファには左からリチャード、サーシャ、レイルの順番だった。

「おいレイル。なぜ貴様がそこに座る」
「殿下、仮面。勿論今日の主催はナタリア嬢ですからね。お誘いを受けたアンドレ殿下が隣に座るのは当然かと」

最初の一言は二人にしか聞こえないような小さな声でレイルは諌めた。
苦虫を噛み潰したような顔でアンドレはレイルを睨み続けている。
そんな二人を放置し、サーシャとリチャードは挨拶をしていた。

「ナタリア、今日はお招きありがとう」
「別に招いてないわ」

ナタリアはフンッと鼻を鳴らす。

「ナタリア嬢、公爵家のリチャードです。姉君とは仲良くさせてもらってます。本日のお茶会楽しみにしていました」
「公爵家?へ~おねー様ってば公爵家の人にも粉かけてたの?やるじゃない」
「な、なんて言い方してるんですか!」

ニヤリと笑ったナタリアにサーシャが顔を赤くして反論する。

「それが本当ならいいのですが・・・実際は私が口説いている最中なんです」
「リチャード様っ!何を!」
「本当のことでしょう?」

更に顔を赤くしたサーシャと優しく微笑むリチャードを見て、アンドレは面白くないと顔を歪ませた。

「なぁんだ、おねー様にはちゃんといい人がいたのね。焦って損しちゃった」
「わたくしとリチャード様はそんな関係じゃないわ!」
「えぇ。これからなる予定です」
「もう!リチャード様は黙ってて下さいな!」

和気あいあい?とした会話が続く中、侍女たちは準備ができたお茶をそれぞれの前に運んでくる。

「ふふふ、リチャード様とサーシャ様はとっても仲がよろしいのですね」

運ばれたお茶に口をつけながらサニアはにこりと微笑んだ。

「あ・・・サニア様、お久しぶりです。失礼ですが、今日はなぜサニア様も・・・?」
「あぁサニア嬢を誘ったのは私だ。女性が多い方が華やかだろう?」

そう答えたのはマルセルだった。

「はぁ・・・そうですわね」
「まぁサーシャ様、わたくしお邪魔だったでしょうか?」

心配そうな顔をするサニアにサーシャは慌てて否定した。

「いいえ!突然だったものですから驚いただけです」
「それなら良かったですわ」

ホッとしたサニアに何かを謀るようには見えない。純粋に参加しただけのようでサーシャは安心した。

それぞれお茶を楽しみ、ナタリアがお勧めだという菓子が運ばれてきた。侍女が手にしているのはタルトケーキだ。

「この間とある人に教えてもらったの。とーっても美味しかったのよ!」

テーブルの上に置かれていくタルトケーキ。そんな中一人の侍女の顔色が悪く、心做しか手も震えているように見える。

「あなた・・・」

どうしたの?とサーシャが問いかけようとしたその時、侍女はビクッと震え、みるみるうちに瞳には涙が溜まっていく。
サーシャは呆然とその侍女を見ているしかなかった。

「も・・・申し訳ございませんんんん!!!」

突然泣き崩れた侍女。お茶会に参加している全員が唖然とした。
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