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理想と現実
しおりを挟む翌日にはマルセルとサーシャの婚約は白紙へ戻った。恐らく侯爵が陛下を脅・・・説得したのだろう。
後はナタリアとの婚約を結ぶだけだが、陛下がいい顔をしない。
そこで侯爵はマルセルと二人で陛下を説得することにした。
マルセルは如何に自分がナタリアを愛しているかということ、ナタリアの足りない部分は自分が補うと熱く語った。
そんなマルセルに陛下は不承不承ながら折れ、やっとナタリアとの婚約を結んだ。
ナタリアは大層喜び、未来の王妃だからと更に我儘三昧な日々を過ごしている。数日後には王城での生活が始まるのだ。このままではいけないとサーシャはナタリアを窘めた。
「ナタリア、貴女は妃になるのですよ?皆の見本になるよう振る舞いなさい」
「大丈夫よ、おねー様。マルセル様が守って下さるわ。それに私は王妃になるんだから、何も言われる筋合いはないわ!それはおねー様も同じよ!」
フンッと鼻を鳴らし部屋を後にするナタリアの背中をサーシャは淋しそうな瞳で見た。
ーー殿下、頑張って下さいましね。
その淋しそうに見えた瞳はマルセルへの同情の念だった。
✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼
ナタリアが予定通り王城へ上がり一ヶ月程経った頃、マルセルはイライラしながら執務をこなしていた。
「殿下!ナタリア嬢が泣き止みません!一緒に来て頂けませんか?」
「またか!今度は一体何なのだ!」
焦ったように叫ぶその女性はナタリアの教育係の一人だった。聞けばマナーの授業でカップの持ち方がなっていないと掌をペチンと叩いただけで痛い痛いと泣き出したそうだ。
泣きたいのはこっちだとマルセルは頭を抱えた。
この一ヶ月こんなことが毎日なのだ。
一緒に食事をする時もカチャカチャと音を立て、嫌いな材料が入っている品には手をつけず料理人に文句を言う。
おかげで料理は偏り、最近身体の調子があまり良くない気がするのだ。
マルセルは癒されるどころかストレスがどんどん溜まっていた。
しかし自分が言い出した婚約だ。ナタリアを立派な淑女にするほかない。
執務室からナタリアのいる勉強室に向かうと、まだナタリアは泣いていた。しくしくとではない。わんわんとまるで幼い子のように泣いているのだ。
顔はぐちゃぐちゃで鼻水まで垂らしている。
素直で表情がころころと変わるところが可愛いと思っていたマルセルも、さすがに少し引いた。
「ナタリア、何が気に入らないんだい?」
マルセルはそっとナタリアの肩に手を起き、なるべく優しく聞こえるように声をかける。
「気に入らないとかじゃないですわ!・・・ぐすっ。この人・・・暴力を振るうんですもの!」
「暴力と言っても鞭を使われたわけではないだろう?」
ナタリアの教育係は皆マルセルが幼い頃教わっていた者たちばかりだ。鞭を使ったり、汚い言葉などを使うことはないことをマルセルが一番理解している。
「鞭じゃなければ・・・ぐすっ暴力を振るってもいいと言うんですか!?」
「いやそうじゃない。ただナタリアは他の人より少し・・・頑張らねばいけないんだ。王妃になって私を支えてくれるんだろう?」
「うっうっ・・・はい・・・」
「じゃあもう少し頑張って。後で一緒にお茶をしよう」
宥め、なんとか泣き止んだナタリアを勉強室に残し執務室へ戻る最中マルセルは大きなため息を吐いた。
いつも笑顔だったナタリア。偶にしか会えないからこそその一面しか見えていなかった。まさかこんなにも癇癪もちで我儘だったとは・・・
婚約を結んでからまだたったの一ヶ月。
既にマルセルは自分の行動に後悔し始めていた。
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