199 / 233
第3章
初めてです
しおりを挟む「…………申し訳ありませんでした」
事後、私はアカネに平謝りをしました。
途中からは乗り気だった彼女も、事が済めば恥ずかしさを思い出してきたらしく、また良いようにされたと拗ねてしまいました。そんな嫁も可愛いです。
……って言ったら、また怒られちゃいますかね?
「……恥ずかしかった」
「ほんと、申し訳ありません」
「謝るだけでは、衛兵はいらぬのじゃ」
どこかで聞いたような台詞ですね。
ですが、全くもってその通りでございます。
「でも気持ちよかったでしょう?」
「それは……っ、じゃが! それとこれとは別なのじゃ!」
体は正直でも、理性が……というやつでしょうか。
いやね。私も申し訳ないとは思っていますよ。
でも、最後の方はアカネさんだってノリノリだったじゃないですか。むしろ私のことを何度も求めてきたじゃないですか。これで私だけが責められるのは理不尽というか、ちょっとズルいというか……。
「なんじゃ」
「いいえ、なんでもありませんよ」
睨まれてしまいました。
流石はアカネさん。こちらが何を思っているのかお見通しですか。
「まぁ、妾が強く抵抗しなかったことも……その、悪いとは思っている」
最後の方はとても小さな呟きでした。
一応、自分も悪いとは思っているようですね。
これでは、私がアカネを指差して批難することができないじゃないですか。……ったく、そういうところがズルいんですよ。
「良いか。次からはもっと優しくするのじゃ。初めてであれは、妾には刺激が強すぎる!」
もう嫌だ、とは言わないのですね。
素直じゃないお嫁さんめ。
「ええ、かしこまりました。アカネの望む通りに」
大仰に一礼してみせます。
これで、とりあえずは機嫌を取り戻してくれたでしょうか?
「なんじゃ、リフィに良いように誤魔化されている気がするぞ」
「気のせいでは?」
私がアカネさんを良いように誤魔化すなんて、そんなことは…………少ししか思っていませんよ。ちゃんと考えているようで案外ちょろいとか、失礼なことを言うわけがないじゃないですか~。あはは。
とまぁ、茶番は置いておいて。
「アカネ、安心してください」
「なんじゃ」
「防音は完璧です。どんなに騒いでも気づかれることはありあだっ」
親指を立てたら、普通に頭を叩かれました。暴力反対です。
「まったく、ウンディーネの苦労が理解できるわ」
「え? どうしてです?」
「どうして、って……リフィはウンディーネと、いつもこのようなことをしていたのではないのか?」
「いいえ? あの子とは一度もやったことはありませんよ」
「……なんだと?」
ああ、なるほど。
アカネさんは私が経験豊富だと思っているのですね。
どうやら、すれ違いが起こっているようです。
「ウンディーネは恥ずかしがり屋で……何度か夜を共にしようかと思った時はあったのですが、本番になって緊張でいつも気絶してしまうんですよね。だから、あのような行いをするのはアカネが初めてです」
気絶しているウンディーネに無理矢理やるのも気が引けますし、仕方なく添い寝するだけに留まっていました。
最初がアカネさんだと知ったら、ウンディーネは拗ねるでしょうか?
ちょっとした修羅場になりそうですが、その時は二人一緒に楽しむとしましょう…………って、あれ? なんかこれだけ聞くと、私って普通にやり慣れている人では?
勘違いされそうなので言っておきますけど、私はさっきのが初めてです。
これでも相手を傷つけないようにと、そういう知識を頑張って勉強したんですよ。ウンディーネもアカネも、私にとってどちらも大切な人ですからね。
「そう、か……妾が、初めてか……ふふっ、そうかそうか」
あれ? なんか嬉しそう?
初めてを体験できるって、やっぱり嬉しいのですかね。私は別に、最初はどちらにあげても変わらないと思っていたのですが……これはウンディーネに申し訳ないことをしたかもしれません。
「仕方ない。今日のことは初めてに免じて許してやろう」
「はぁ、ありがとうございます……」
「じゃが、次はウンディーネにしてあげるのじゃぞ! でなければ、もう妾はやらないからな!」
「あ、はい」
謎の譲り合い精神を見せられた私ですが、一応返事はしておきます。
アカネさんの中では、順位のようなものがあるのでしょうか。
気にしなくていいのに……変に真面目な人ですからね。大方、ウンディーネから私を取ってしまったことに罪悪感でも抱いているのでしょう。私もウンディーネも、アカネさんのことが大好きだから手助けをして、彼女を受け入れているというのに。
いつか、このようなすれ違いも無くなるのでしょうか。
私の力量、なのでしょうね。
……うん。頑張りましょう。
お互いにギクシャクするのは望みません。
いつまでも三人で仲良くするのが、私の望みです。
ウンディーネが帰ってきたら、一緒にお話しするのもいいかもしれませんね。
久しぶりの女子会……いや、夫婦会(?)です。
だから、ウンディーネ。
──早く帰ってきてくださいね。
0
お気に入りに追加
1,620
あなたにおすすめの小説
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる