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第3章

囁くのは、あなたに

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注意)描写が過激かもしれません。
   酒に酔った勢いでの出来事でした。
   後悔も反省もしていません。むしろ清々しい気持ちです。




 ──── ◆◇◆ ────




「はぁ……結婚ですかぁ……」

 自室に戻り、私は天井を見上げていました。

「結婚式は人生の大舞台。そのために遠出して来たとは言え、改めてその日が近づいていると知ると、緊張しますねぇ」

 アカネさんの花嫁姿。
 きっと、それはそれは美しいことでしょう。

 そんな人が、私のお嫁さんになる。
 素直に喜んでいいことです。

 当日までにウンディーネが戻ってきてくれると嬉しいのですが、あの子は大丈夫でしょうか?

 私達は深い部分で繋がっているので、危険な目にあっていないことは理解しています。でも、やはり元気な姿を見ていないと心から安堵するのは難しいですね。

 ──っと、今は花嫁のことに集中しましょう。

 ウンディーネも、折角の式を台無しにしないようにと気を遣ってくれました。その気持ちに甘えることにして、私は気楽に彼女のことを待ちます。



「その、リフィ……?」

 戸惑うような声は、私の腕の中から聞こえました。

「どうしました? アカネ」

「どうした、じゃない。妾達はどうしてこのような格好になっているのじゃ?」


 首をかしげます。

 アカネさんは今、私の腕の中にいます。
 彼女のことを後ろから抱きしめている形ですね。


 それのどこが変なのでしょうか?


「変じゃろう!」

 私の内心を悟ったのか、アカネさんは声を荒げます。

 その拍子に、洗剤の良い匂いが鼻腔を通ります。
 とても安心する花の甘い香りです。私の好みに合わせて洗剤を使ってくれているのでしょう。

 ぎゅっと締め付けを少し強めると、悶えるような可愛らしい声が聞こえました。

「私、今とっても暇じゃないですか」

「なにを、急に──ひゃうっ」

「それに、先日のデートの疲れがまだ取れていないのですよ」

「あ、あんなに、眠っておいて……まだ疲れている、と?」

 絞り出したような、か細い声。

 トクンットクンッ……と、心臓の音がしました。
 密着しているからか、余計にそれは大きく聞こえます。

「ええ、私って瞬発力はあっても持久力がないんですよね。だから動く気力もなくて困っています」

「それと、妾の体に触れることと、何の関係が、っ、ん……!」

「わかりませんか?」

「わかるわけがないだろう!」

 怒られちゃいました。
 私の嫁になるのだから、この程度は理解してほしいです。

 ……まぁアカネさんは純情ですからね、仕方ありませんね。


「ウンディーネだったら、この程度のことは何も言わずに受け入れてくれますよ」

「だからって、妾にも同じことをする必要は──」

「嫌ですか?」

「っ!」

 着物がはだけて露出した背中を、ツゥとなぞります。
 ビクンッ、と体が震えました。

「答えが聞こえませんね。どうなのですか?」

 拘束を解きます。
 でも、アカネさんは動きませんでした。

 私から逃れる唯一のチャンスです。
 聡明な彼女が、それを無駄にするなんてあり得ませんよね。

「…………や……で、ない」

「もっと強く言ってください」


 ──じゃないと聞こえないでしょう?
 顔を近づけ、吐息交じりに囁きます。


「リフィ、は……いじわるだ」

「あなたにだけ、ですよ」

 性格は悪いと自負していますが、別に誰かをいじめるのが好きなわけではありません。

 でも、どうしてでしょうね。
 アカネさんをいじめるのは、楽しいと思えてしまいます。

 恥ずかしがる姿を見ると、体がゾクゾクします。
 赤くなる頬を眺めると、その顔がどこまで羞恥に染まるのか気になってしまいます。
 普段は凛とした態度の彼女が、小動物のような震えた声を出す様は、言い知れぬ快感を覚えます。まるで私が肉食になったような感覚です。


「さぁ、アカネ? 言って?」

 顔を覗き込みます。
 アカネの瞳はうるうると揺れ動き、唇は艶があります。

 今までで一番の色気を感じられる姿に──私はとっくに我慢の限界を迎えていました。


「いや、じゃない」

 先程よりははっきりと聞こえました。
 ──でも、まだ小さいですね。

 私はニコニコと、微笑むだけです。
 それでは足りないと言いたいのだと、アカネさんは悟ったのでしょう。絶望したような表情は、すぐに見えなくなりました。

「逃げられると思いましたか?」

 そっと顎を掴み、強制的にこちらへ顔を合わせます。


「い、いやじゃない! もっと、してほしい! ……でも、」

「でも。なんです?」

「優しく、してくれ……」


 私のお嫁さんはわがままです。
 ほくそ笑み、頷きます。


「仰せのままに、私のお姫様」

「…………あ、……」

 向きを変え、ベッドに押し倒します。
 いくら純情なアカネさんとは言え、この後の展開を想像できないわけがありません。

 抵抗はされませんでした。
 了承の意だと捉え、私は────

「大好きです」

 何度も、愛を囁いたのでした。

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