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第3章

これが無限ループですか

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 子供が居なければ変に思われると考えての言葉だったのですが、私としたことがついうっかり言葉を端折ってしまいました。てへぺろ。……はい、似合わないのでやめます。


『リーフィア!? い、今……こここ子供って……!!』

 私の衝撃発言に、外に出て街の景色を見て楽しんでいたウンディーネが戻って来てしまいました。
 かなり興奮した様子で頬を硬直させてますが、なぜこうも反応がいいのでしょう?

『リーフィアの子なら、う、うう、うちも……! でもうちは後回しでいいけれど、それでもやっぱり一番に欲しいというか、その……いつでも準備は出来てあああああ……!』

「はいはい、落ち着きましょうねぇ」

 暴走気味に入ってきて、色々とお茶の間に放送できない言葉を言い始め、最終的に何を言っているのかわからなくなってきた辺りで、彼女にお水の入ったコップを差し出しました。

 水の精霊に水を与えれば大人しくなるかなと思っての行動でしたが、どうやら効果はあったようです。



「申し訳ありません。私達は女同士なので、この先ずっと子供が出来なければアカネのご両親から変に見られてしまうのではないかと、そう考えての言葉だったのですが……」

『あ、そうだったんだ……良かった。リーフィ……リフィが急に変になっちゃったかと思って、心配したよ……』

 そこまで思われていたとは心外です。
 ……いや、確かにいきなり「子供が欲しい」と言われたら、そう思われるのは仕方ありませんよね。

 これは私の落ち度でした。



「まぁ、そういうわけです。だからどうしようかなぁと思って相談しようとしたのですが、アカネはどうす…………アカネ?」

 見ると、彼女は真顔になってピクリとも動かなくなっていました。
 間近で手を振っても、息を吹きかけても、何一つ眉を動かしません。

「ウンディーネどうしましょう。アカネが動かなくなってしまいました」

『えぇ? うーん、これは気絶している、ね』

「…………わーお」

『わーお、じゃないよ……!』

 脳の処理が追いつかなくなり、最終手段で意識を放り投げてしまった……と、そんなところでしょうかね。


「じゃあミリアさんの方は、」

「あばばばばばばばば」

「放置でいきましょう」

 バグっている魔王を即座に切り捨て、私はアカネさんの介護に回ります。


「さて、どうしましょうか」

『顔にお水掛けてみる?』

「お化粧が落ちそうですね。最後の手段にしましょう」

 折角、今日のためにおめかししてくれたのです。
 それを崩してしまうのは、勿体無いと思いました。

 なので却下です。

『うーん……じゃぁ叩いてみる?』

「先程から風を操ってやっているのですが、ダメそうですね」

 ペチンペチンでは意味が無いと思い、少し強めにやっていますが……これも効果無しです。これ以上強くやると彼女の頬が赤く腫れてしまいそうなので、仕方なくこの手段は諦めます。


『甘く囁いてみるとか?』

「採用」

『え?』

 それを採用するの? と言いたげなウンディーネを横目に、私はアカネさんの耳に顔を近づけます。

 いつもなら飛び退かれる近さなのですが、ここまで来ても反応が無いということは、本当に気絶しているのですね……。まさか私の子供発言がここまで混乱を招くとは、流石に予想していませんでした。


「アカネ、そろそろ起きてください」

 驚かさないように、優しく囁きます。
 ……ですが、これでも反応は返ってきません。

「早く起きないと、」

 私は、更に顔を近づけます。
 そして────





「食べちゃいますよ?」





 カプッと、彼女の耳たぶを唇で挟みます。
 想像していたよりもちもちしていて、噛みごたえがありますね。

「…………、…………っ……ぐはぁ!」

「アカネ!?」

 今ちょっと動いたかと思ったら、急に血反吐を吐かれました。
 これには私も驚き、慌てて回復魔法を掛けます。

「し、死ぬかと思った……」

 はぁはぁと荒く呼吸しながら、アカネさんはそう言いました。

「いや、死なないでください。困ります」

 その一歩手前まで行っていたのは、内緒にしておきましょう。

 気絶されるとは思っていませんでしたし、血反吐を吐かれたのは予想外すぎました。その上で心臓まで飛び出たら、本気で驚いてしまいます。


「何か……とんでも無いことを言われた気がするぞ…………だが、うーむ、なぜか思い出せない」

 記憶が飛ぶほどの衝撃でしたか。
 それは面白──ゲフンゲフン。大変ですね。

「リフィ、何か妾に言ったか?」

 そう言われ、私は悩みました。

 果たして彼女に正しいことを言っていいのでしょうか。
 また同じことを言って驚かれたら、今度こそ危ないかもしれません。



 ……いえ、たとえ記憶は無くても、二度も聞いたのです。
 彼女ならば受け入れてくれるはずだと信じて、本当のことを言いましょう。



「ええ、私達の子供が欲しいと──」

「ぐはぁ!」

「やっぱりダメでしたか」

 これが無限ループですか。
 もう、これどうしましょうかね?


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