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第2章
修羅場です
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その後、ミリアさんと夕食時まで部屋でゆっくり時間を潰し、ヴィエラさんが呼びに来たタイミングで移動となりました。
最近になってミリアさん達と夕食を共にする機会が増えました。
本当は部屋に運んで来てもらい、ほとんど動かずに食事を取りたいのですが……断ったら主にミリアさんが面倒なので、仕方ないと諦めています。
でも、いつも困るのは…………やはりミリアさんです。
彼女は美味しいものがあると、必ず私と共有しようとしてきます。
私はミリアさんほど大食いではなく、むしろ量をあまり取る方ではありません。
なので、何でもかんでも共有しようとされると、すぐにお腹がいっぱいになってしまいます。
懐かれている証拠で可愛いと思えばそうなのですが……こっちが腹一杯でも御構い無しに一緒に食べようとしてくるので、ちょっとは空気を読んでほしいと切に思います。
そして今日も────
「リーフィア、これも美味しいぞ!」
「ええ、そうですね」
「これも美味いな!」
「……ええ、そうですね」
「あ、あとこれも!」
「──うっぷ」
いつもならギリギリまで耐えられるのですが、今日は夕食前にお菓子を沢山食べたのが影響したのでしょう。
すぐに腹が限界を迎えますが、ミリアさんはそれに気付かず次々と料理を持ってきます。
「ミリアさん。すいません……私、そろそろお腹いっぱいです」
これ以上はお茶の間に見せられないことになりそうだったので、正直にギブアップを口にしました。
するとミリアさんは怪訝な表情になり、『これ美味しい攻撃』は一時的に止まってくれました。
「何だ。もう腹一杯になったのか?」
「ええ、今日はあまりお腹が空いていないみたいです」
「しかし、これと、これも美味しいのだが……」
「ミリア様。美味しいのはわかりますが、無理に共有するのもリーフィアが可哀想です」
と、そこでヴィエラさんから救いの手……もとい救いの言葉が。
「むぅ、リーフィアにもこの美味しさを知ってほしかったのだが……そうだな。無理して食べさせるのは、確かにダメだな」
ミリアさんも指摘されたことでようやく理解してくれました。
少し落ち込んだ様子でシュンとされると、こっちが悪いことをしたみたいに思えてしまいますが、リバースする未来を回避出来たことに、私は内心ホッとしていました。
でも、それも束の間、ミリアさんは「だが……」と言葉を続けました。
「リーフィアも食が細いな。食事前に菓子を食ったのが悪いのではないか?」
瞬間、空気が凍りつきました。
…………いえ、ヴィエラさんの魔力に呼応して、燃え上がるような熱さになったと言い換えた方が適しているでしょうか?
「リーフィア?」
いつも通りの私を呼ぶ声なのに何故か、とても恐れる『何か』が含まれているような気がしてしまうのは、どうしてなのでしょうね?
「ねぇリーフィア?」
「……はい何でしょうか?」
「ちょっと、こっち向いてくれるかい?」
「嫌です」
「どうしてだい? いつも顔を見ている中じゃないか、ほら早くこっち向きな?」
「……どうしてでしょうね。振り向いたら死ぬ。そんな予感がしてならないのです」
久しぶりに私の『完全反応』が危険を察知しています。
それがヴィエラさんがいるであろう方向から、もうビンビンに感じています。
…………え、私殺されるの?
「じゃあそのまま聞いてくれる? ──あ、耳塞いだりしたらヤるから」
一体何を? とは問いません。
それを聞いてしまったら、私はきっと引き籠ってしまう気がしたので。
「私さ、夕食前にお菓子は食べたらダメだって言わなかったっけ?」
「さ、さぁ何のことか──」
言葉はそこで中断されました。
私の手前、テーブルのスレスレのところに、手元の部分が溶解しかけたフォークが『カンッ』という音を立てて刺さったのです。
「…………み、」
「み。何だって?」
「ミリアさんも、食べました」
「リーフィアぁあああ!?!!?!? おまっ、余を売りおったな! 最低な奴だなお前ぇ!」
「売ったのではありません。私だけ怒られるのは腑に落ちなかっただけです」
「それでもお前、黙っておくとか────」
ミリアさんの言葉は、そこで強制的に遮られました。
彼女の座るテーブルの前に、完全に溶解して捻じ曲がったフォークがぶっ刺さっていました。
私とミリアさんはゆっくりと首を回し──そこに修羅を見ました。
「二人とも?」
ヴィエラさんはニッコリと笑い、人差し指を下に向けました。
「正座」
「「…………はい」」
私は、二度と夕食前にお菓子を食べないと誓ったのでした。
最近になってミリアさん達と夕食を共にする機会が増えました。
本当は部屋に運んで来てもらい、ほとんど動かずに食事を取りたいのですが……断ったら主にミリアさんが面倒なので、仕方ないと諦めています。
でも、いつも困るのは…………やはりミリアさんです。
彼女は美味しいものがあると、必ず私と共有しようとしてきます。
私はミリアさんほど大食いではなく、むしろ量をあまり取る方ではありません。
なので、何でもかんでも共有しようとされると、すぐにお腹がいっぱいになってしまいます。
懐かれている証拠で可愛いと思えばそうなのですが……こっちが腹一杯でも御構い無しに一緒に食べようとしてくるので、ちょっとは空気を読んでほしいと切に思います。
そして今日も────
「リーフィア、これも美味しいぞ!」
「ええ、そうですね」
「これも美味いな!」
「……ええ、そうですね」
「あ、あとこれも!」
「──うっぷ」
いつもならギリギリまで耐えられるのですが、今日は夕食前にお菓子を沢山食べたのが影響したのでしょう。
すぐに腹が限界を迎えますが、ミリアさんはそれに気付かず次々と料理を持ってきます。
「ミリアさん。すいません……私、そろそろお腹いっぱいです」
これ以上はお茶の間に見せられないことになりそうだったので、正直にギブアップを口にしました。
するとミリアさんは怪訝な表情になり、『これ美味しい攻撃』は一時的に止まってくれました。
「何だ。もう腹一杯になったのか?」
「ええ、今日はあまりお腹が空いていないみたいです」
「しかし、これと、これも美味しいのだが……」
「ミリア様。美味しいのはわかりますが、無理に共有するのもリーフィアが可哀想です」
と、そこでヴィエラさんから救いの手……もとい救いの言葉が。
「むぅ、リーフィアにもこの美味しさを知ってほしかったのだが……そうだな。無理して食べさせるのは、確かにダメだな」
ミリアさんも指摘されたことでようやく理解してくれました。
少し落ち込んだ様子でシュンとされると、こっちが悪いことをしたみたいに思えてしまいますが、リバースする未来を回避出来たことに、私は内心ホッとしていました。
でも、それも束の間、ミリアさんは「だが……」と言葉を続けました。
「リーフィアも食が細いな。食事前に菓子を食ったのが悪いのではないか?」
瞬間、空気が凍りつきました。
…………いえ、ヴィエラさんの魔力に呼応して、燃え上がるような熱さになったと言い換えた方が適しているでしょうか?
「リーフィア?」
いつも通りの私を呼ぶ声なのに何故か、とても恐れる『何か』が含まれているような気がしてしまうのは、どうしてなのでしょうね?
「ねぇリーフィア?」
「……はい何でしょうか?」
「ちょっと、こっち向いてくれるかい?」
「嫌です」
「どうしてだい? いつも顔を見ている中じゃないか、ほら早くこっち向きな?」
「……どうしてでしょうね。振り向いたら死ぬ。そんな予感がしてならないのです」
久しぶりに私の『完全反応』が危険を察知しています。
それがヴィエラさんがいるであろう方向から、もうビンビンに感じています。
…………え、私殺されるの?
「じゃあそのまま聞いてくれる? ──あ、耳塞いだりしたらヤるから」
一体何を? とは問いません。
それを聞いてしまったら、私はきっと引き籠ってしまう気がしたので。
「私さ、夕食前にお菓子は食べたらダメだって言わなかったっけ?」
「さ、さぁ何のことか──」
言葉はそこで中断されました。
私の手前、テーブルのスレスレのところに、手元の部分が溶解しかけたフォークが『カンッ』という音を立てて刺さったのです。
「…………み、」
「み。何だって?」
「ミリアさんも、食べました」
「リーフィアぁあああ!?!!?!? おまっ、余を売りおったな! 最低な奴だなお前ぇ!」
「売ったのではありません。私だけ怒られるのは腑に落ちなかっただけです」
「それでもお前、黙っておくとか────」
ミリアさんの言葉は、そこで強制的に遮られました。
彼女の座るテーブルの前に、完全に溶解して捻じ曲がったフォークがぶっ刺さっていました。
私とミリアさんはゆっくりと首を回し──そこに修羅を見ました。
「二人とも?」
ヴィエラさんはニッコリと笑い、人差し指を下に向けました。
「正座」
「「…………はい」」
私は、二度と夕食前にお菓子を食べないと誓ったのでした。
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