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第2章
エルフについての考察です
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「まず簡潔に言います。エルフと魔女は確かに関係しています」
結論から話した私に、ヴィエラさんは難しい顔をしました。
きっと彼女の脳内では、様々な考えが巡っていることでしょう。
このまま話しを進めてしまおうか。そう思っていた時、ヴィエラさんが発言権を求めるように軽く挙手しました。
「リーフィアがそう思った、そして確信した理由を聞かせてくれるかい?」
「では、まずはそう思った理由から話しましょうか」
私はゆっくりと、思い出すように話し始めました。
「私が両者の関係を疑ったのは、ボルゴース王国にあった書物が原因でした。それはウンディーネがメモを残してくれた物ですが、後でじっくり見直しても納得のいく内容が記されていたのです」
「……その内容というのを、詳しく話してくれ」
ヴィエラさんは怪訝に、ですが真剣に私の考えを聞こうとしてくれました。
今まで何の手がかりも掴めなかったエルフの秘術に関しての、大きな一歩。
ですがそれはあまりにも急展開すぎます。
彼女も半信半疑だったのでしょう。しかし、私がそんな半端なことで意見して来るとは思わず、他のことで忙しい中、わざわざ私の部屋まで来てくれただけではなく、こうして正当に判断してくれようとしていました。
私はそのことに内心感謝しつつ、そう思った理由を話します。
「最大の理由は、魔女の出現とエルフが繁栄した時期が同じ。という点です」
「繁栄? エルフがかい?」
「……すいません、繁栄……というのは少しここらでは意味が異なるのでしょう。エルフにとっての繁栄とは、停滞と安定。つまりエルフ族が何の悲劇も出さず、その時代を生き抜いたという証です」
今の時代も過去の時代も、大戦中でさえもエルフは繁栄を可能にした。
それは話に聞いていた『エルフの秘術』にそっくりです。
「その繁栄っていうのと、魔女の出現が同じ時期に発生していると?」
ヴィエラさんの質問に頷きました。
「ですが、魔女らしき者が確認されたのは、ほんの一瞬だと聞きました」
「だったら、見間違いという線は?」
「それはないでしょう。魔女の出現とエルフの秘術の発生には、ある決まりがあるのです」
「決まり?」
「それは一定の周期に起こるのと、決まって魔女の出現の方が少しだけ早い。ということです」
ヴィエラさんは難しい表情で考え込みました。
「…………つまり、エルフの秘術は魔女が引き起こしている。リーフィアはそう思ったんだね?」
「それか何らかの形で関係している。私はそう判断しました」
その文献があったのは、図書館の中でも特に古い場所でした。
何も一冊だけにこれが記されていた訳ではありません。
ウンディーネが監視の目を盗んで数冊読み、気になった箇所をメモに残してくれたおかげで、私はこれに気づけたのです。
本当に、ウンディーネ様様です。
「でも、どうしてボルゴース王国にそれが?」
「私にもそれはわかりません。かの国は昔からその秘術について研究していたのか、ただの偶然なのか。その判断は、今となっては出来ません」
聞こうにも、もうボルゴース王国は滅びました。
まだ辛うじて残っていたとしても、あの馬鹿王は何も知らないでしょう。
だから、誰の目にもつかないような図書館の奥底に眠っていた。
「……これを見つけてくれたウンディーネには、感謝だね」
「信じてくださるのですか?」
「信じるさ。リーフィアはいい加減に考えない。君の言うことには納得する部分が多かったし、私もそれを見たら二つの共通点を確信していただろう」
これでも私達は、君を信頼しているんだ。
ヴィエラさんはそう言い、微かに微笑みました…………が、すぐに真剣な眼差しに切り替わりました。
「それで、リーフィアはそこまでを考えていたけれど、その時はまだ確信はしていなかった。違いない?」
「ええ、その通りです」
「それじゃあ、次は確信に至った経緯を話してもらおう」
「元よりそのつもりですよ。その確信に至った出来事なのですが」
私は言葉を区切り、一呼吸。
「先程、エルフの管理者と会ったと話しましたよね? その時、色々と情報を聞き出したのです」
「……エルフの管理者というのは、本当なのかな。身分を偽っている可能性は?」
「エルフという種族は、上下関係が絶対の種族です。わざわざ下の者が上の者の身分を偽る。ましてやわざと下に見られるように偽ることはしないと、私はそう判断しました」
なのでダインさんが『エルフの管理者』だというのは、嘘ではないでしょう。
それにはヴィエラさんも納得したように、同意してくれました。
「だが、それなら更に疑問が残る。エルフは秘匿主義が特に強い種族でもある。その管理者ともあろう者が、たとえ同種族だとしても部外者であることには変わりないリーフィアに、そう簡単に情報を話すだろうか?」
「ああ、そこら辺に関しては、やはりエルフは馬鹿だと思っていただければ……」
「相変わらず、エルフに容赦ないね」
「事実なので」
私がキッパリといえば、ヴィエラさんは諦めたように乾いた笑いを浮かべます。
「でも、本当に色々と喋ってくれましたよ」
思い返せば、様々な箇所にヒントが散りばめられていました。
私はそれらを統合して、これを確信したのです。
「エルフは魔女に御執心でした。どんな手を使ってでも魔女を連れ帰ろうとして、連れ帰られないのであれば殺す。……相当焦っているようにも見えましたね」
執念深く連れ帰ると言っていたと思ったら、次は必要ないから殺すと……その決断の早さは慣れているようにも感じられました。
もしや、過去に魔女になることを嫌がった誰かを……?
…………いえ、流石にそれを決めつけるのは早すぎますね。
でも、もしそれが真実であったのならば、『魔女』というしがらみで運命を左右したエルフ達を、私は許さないでしょう。
「ダインさんは言っていました。魔女に選ばれた者は、里に来る義務があると。何としてでも連れ帰る必要があると。……ああ、魔女は一度決まってしまえば、その人が死ぬまで変えることは出来ないとも言っていましたね」
今思えば、めちゃくちゃな意見ですよね。
ここまで『強制的』という言葉が似合う話があったでしょうか。
ミリアさんやヴィエラさんが持ってくる仕事の話よりも理不尽です。
……そして、それを断れば容赦なく殺しにかかって来た。
エルフはそれだけ、協力的な魔女を欲しがっているという証拠なのでしょう。
「ということがあり、魔女とエルフは関係……それも深い部分で繋がっていると確信したのです」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。魔女については理解した。だが、幾ら何でも、それは機密情報すぎるだろう。今までどこにも流出していなかった情報だ。どうしてリーフィアがそれを知ったんだい?」
「あ、そういえば言っていませんでしたね」
私は自分の胸に手を当て、軽い自己紹介と洒落込んでみます。
「私、リーフィア・ウィンドは──魔女になったようです」
「……………………は?」
結論から話した私に、ヴィエラさんは難しい顔をしました。
きっと彼女の脳内では、様々な考えが巡っていることでしょう。
このまま話しを進めてしまおうか。そう思っていた時、ヴィエラさんが発言権を求めるように軽く挙手しました。
「リーフィアがそう思った、そして確信した理由を聞かせてくれるかい?」
「では、まずはそう思った理由から話しましょうか」
私はゆっくりと、思い出すように話し始めました。
「私が両者の関係を疑ったのは、ボルゴース王国にあった書物が原因でした。それはウンディーネがメモを残してくれた物ですが、後でじっくり見直しても納得のいく内容が記されていたのです」
「……その内容というのを、詳しく話してくれ」
ヴィエラさんは怪訝に、ですが真剣に私の考えを聞こうとしてくれました。
今まで何の手がかりも掴めなかったエルフの秘術に関しての、大きな一歩。
ですがそれはあまりにも急展開すぎます。
彼女も半信半疑だったのでしょう。しかし、私がそんな半端なことで意見して来るとは思わず、他のことで忙しい中、わざわざ私の部屋まで来てくれただけではなく、こうして正当に判断してくれようとしていました。
私はそのことに内心感謝しつつ、そう思った理由を話します。
「最大の理由は、魔女の出現とエルフが繁栄した時期が同じ。という点です」
「繁栄? エルフがかい?」
「……すいません、繁栄……というのは少しここらでは意味が異なるのでしょう。エルフにとっての繁栄とは、停滞と安定。つまりエルフ族が何の悲劇も出さず、その時代を生き抜いたという証です」
今の時代も過去の時代も、大戦中でさえもエルフは繁栄を可能にした。
それは話に聞いていた『エルフの秘術』にそっくりです。
「その繁栄っていうのと、魔女の出現が同じ時期に発生していると?」
ヴィエラさんの質問に頷きました。
「ですが、魔女らしき者が確認されたのは、ほんの一瞬だと聞きました」
「だったら、見間違いという線は?」
「それはないでしょう。魔女の出現とエルフの秘術の発生には、ある決まりがあるのです」
「決まり?」
「それは一定の周期に起こるのと、決まって魔女の出現の方が少しだけ早い。ということです」
ヴィエラさんは難しい表情で考え込みました。
「…………つまり、エルフの秘術は魔女が引き起こしている。リーフィアはそう思ったんだね?」
「それか何らかの形で関係している。私はそう判断しました」
その文献があったのは、図書館の中でも特に古い場所でした。
何も一冊だけにこれが記されていた訳ではありません。
ウンディーネが監視の目を盗んで数冊読み、気になった箇所をメモに残してくれたおかげで、私はこれに気づけたのです。
本当に、ウンディーネ様様です。
「でも、どうしてボルゴース王国にそれが?」
「私にもそれはわかりません。かの国は昔からその秘術について研究していたのか、ただの偶然なのか。その判断は、今となっては出来ません」
聞こうにも、もうボルゴース王国は滅びました。
まだ辛うじて残っていたとしても、あの馬鹿王は何も知らないでしょう。
だから、誰の目にもつかないような図書館の奥底に眠っていた。
「……これを見つけてくれたウンディーネには、感謝だね」
「信じてくださるのですか?」
「信じるさ。リーフィアはいい加減に考えない。君の言うことには納得する部分が多かったし、私もそれを見たら二つの共通点を確信していただろう」
これでも私達は、君を信頼しているんだ。
ヴィエラさんはそう言い、微かに微笑みました…………が、すぐに真剣な眼差しに切り替わりました。
「それで、リーフィアはそこまでを考えていたけれど、その時はまだ確信はしていなかった。違いない?」
「ええ、その通りです」
「それじゃあ、次は確信に至った経緯を話してもらおう」
「元よりそのつもりですよ。その確信に至った出来事なのですが」
私は言葉を区切り、一呼吸。
「先程、エルフの管理者と会ったと話しましたよね? その時、色々と情報を聞き出したのです」
「……エルフの管理者というのは、本当なのかな。身分を偽っている可能性は?」
「エルフという種族は、上下関係が絶対の種族です。わざわざ下の者が上の者の身分を偽る。ましてやわざと下に見られるように偽ることはしないと、私はそう判断しました」
なのでダインさんが『エルフの管理者』だというのは、嘘ではないでしょう。
それにはヴィエラさんも納得したように、同意してくれました。
「だが、それなら更に疑問が残る。エルフは秘匿主義が特に強い種族でもある。その管理者ともあろう者が、たとえ同種族だとしても部外者であることには変わりないリーフィアに、そう簡単に情報を話すだろうか?」
「ああ、そこら辺に関しては、やはりエルフは馬鹿だと思っていただければ……」
「相変わらず、エルフに容赦ないね」
「事実なので」
私がキッパリといえば、ヴィエラさんは諦めたように乾いた笑いを浮かべます。
「でも、本当に色々と喋ってくれましたよ」
思い返せば、様々な箇所にヒントが散りばめられていました。
私はそれらを統合して、これを確信したのです。
「エルフは魔女に御執心でした。どんな手を使ってでも魔女を連れ帰ろうとして、連れ帰られないのであれば殺す。……相当焦っているようにも見えましたね」
執念深く連れ帰ると言っていたと思ったら、次は必要ないから殺すと……その決断の早さは慣れているようにも感じられました。
もしや、過去に魔女になることを嫌がった誰かを……?
…………いえ、流石にそれを決めつけるのは早すぎますね。
でも、もしそれが真実であったのならば、『魔女』というしがらみで運命を左右したエルフ達を、私は許さないでしょう。
「ダインさんは言っていました。魔女に選ばれた者は、里に来る義務があると。何としてでも連れ帰る必要があると。……ああ、魔女は一度決まってしまえば、その人が死ぬまで変えることは出来ないとも言っていましたね」
今思えば、めちゃくちゃな意見ですよね。
ここまで『強制的』という言葉が似合う話があったでしょうか。
ミリアさんやヴィエラさんが持ってくる仕事の話よりも理不尽です。
……そして、それを断れば容赦なく殺しにかかって来た。
エルフはそれだけ、協力的な魔女を欲しがっているという証拠なのでしょう。
「ということがあり、魔女とエルフは関係……それも深い部分で繋がっていると確信したのです」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。魔女については理解した。だが、幾ら何でも、それは機密情報すぎるだろう。今までどこにも流出していなかった情報だ。どうしてリーフィアがそれを知ったんだい?」
「あ、そういえば言っていませんでしたね」
私は自分の胸に手を当て、軽い自己紹介と洒落込んでみます。
「私、リーフィア・ウィンドは──魔女になったようです」
「……………………は?」
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