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第2章
逃走劇の最後です
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「ここまで来れば大丈夫でしょうか?」
私は魔王城を抜け出し、以前ミリアさんと訪れた丘まで来ていました。
流石にここまで逃げれば、あの人達も追って来ないでしょう。城下街でドンパチもしたくはないでしょうし、ちょうど良い隠れ家だと思います。
「……にしても、本当にあの人達はしつこいですね」
まさかあの一時だけで魔王幹部全員と対面することになるとは、流石の私でも予想出来ませんでした。
魔王城の隅々まで走り回ったのですから、当然といえば当然なのでしょうけれど……。
「ほんと、疲れました」
こんなに走ったのは、小学校のマラソン大会以来でしょうか?
あの頃はまだ純粋な少女だった私も、時が経てば変わるものです。……っと、これはおばさん臭いセリフでしたね。
「ふぅ……」
私は丘の上に一本だけ生えている大木に背を当て、休息します。
このまま寝てしまおうかと目を閉じた時、私の方にゆっくりと近づいてくる気配を感知しました。
宙をふわふわと飛び、私に向かって手を振る水色の少女、ウンディーネです。
『リーフィア~……』
「おかえりなさい、ウンディーネ。彼女達は上手く巻けましたか?」
『……うん、もう大丈夫だと思うよ』
ウンディーネの話を聞くと、どうやら私の気配を完全に見失ったヴィエラさんは、これ以上追いかけても時間の無駄だと諦めてくれたようです。
しかし、ミリアさんがそれに待ったを掛けました。
私が遊ぶなら自分も遊ぶとごね出し、最終的に首根っこを掴まれて執務室に引きずり込まれたらしいです。
魔王城を向き、ミリアさんに合掌。
「……とにかくお疲れ様でした。いきなり呼び出してしまって申し訳ありません」
『う、ううんっ! リーフィアの力になれるなら、うちも嬉しいし……ちょうど暇だったから気にしないで……!』
「はい、ありがとうございます」
ウンディーネは「また何かあったら呼んでね」と言い残し、霧状になって消えました。彼女の残滓が完全に消えるまで手を振り続け、やがて再び目を閉じます。
「うーーーーーん」
眠ろうとしているのですが、何かが足りません。
「……やっぱり、寝る時はこれですね」
『アイテムボックス』から布団を取り出し、草原の上に敷きます。そこに潜り込み、望んでいたふかふかの感触に、これで良いと満足して頷きました。
「……すぅすぅ、スヤァ……」
一度寝てしまおうと思えば、すぐに眠れるものです。
私は布団に入って一分もしないうちに、心地良い微睡みに意識を手放しました。
◆◇◆
「おーい、そろそろ起きんか」
「むにゃ?」
頬をペチペチと叩かれ、私は深い眠りから帰って来ました。
空はもう真っ暗で、満天の星空が浮かんでいました。
……どうやら、かなりの時間眠っていたみたいですね。
「ふ、ぁあ……」
私は上半身を起き上がらせ、軽い伸びをします。背中からポキポキという心地の良い音が鳴りました。
「……なんでここに居るのですか? アカネさん」
「それはこっちの台詞じゃが……まぁ良い」
「どうせミリアさんの指図でしょうけれど、あの人達の仕事が終わるまで帰るつもりはありませんよ」
「それは安心してくれて良い。もうすでに今日分の仕事は終わっているのでな。妾はお主の迎えに来ただけじゃよ」
「……そうですか。では、帰りましょうかね」
私は布団に『浄化』の魔法を掛け、殺菌してから『アイテムボックス』に仕舞い込みました。
「……相変わらず、リーフィアの魔法は常軌を逸脱しておるな」
アカネさんは呆れたようにそう言いました。
……そういえば『浄化』は、何人もの魔術師が集まって使用する魔法なんでしたっけ?
儀式の前に身を清めるだけのために何人も魔術師を集める方がおかしいのか、それとも『浄化』を一人で使用する私がおかしいのか。
まぁ疑問に思っただけで、答えはどうでも良いです。真実を突き詰めるのも面倒ですからね。
「一応ここは外で、地面に敷いている状態でしたからね。衛生面には気をつけなければなりません」
「そういうところは、きちんとしているのじゃな」
「当たり前です。生前に一人暮らしをしていた私にとって、健康とは何よりも重よ……ごめんなさい。訂正します。睡眠の次に重要なことなのです」
「言い直さんでいい。どうせそうだと思っていたからな」
「おお、流石はアカネさんです。頭が良いのですね」
「……不思議じゃな。全く褒められている気がしない」
こちらは褒めているつもりなのですけれど……感情を表に出すのは難しいですね。
「……はぁ、ヴィエラがカンカンに怒っていたぞ? ついでにミリアも」
「知ったことではないですねぇ……面倒ですけど」
「そう言うと思ったが、そろそろ長期休みも終わりで良いのではないか? ヴィエラは真面目な奴だ。お主が折れるまで付き纏うだろうよ」
「ええ……?」
それはもっと面倒です。
でもまぁ、十分に休んだのは事実ですよね。
「リーフィアの仕事はミリアの護衛じゃ。別に書類作業をしろと言っているのではないのだから、諦めて折れてしまっても良いのではないかと思うがなぁ」
「……そういえば、そんな仕事内容でしたね」
最近は全然やっていなかったので、完全に忘れていました。
「ミリアの護衛ということは、あやつの側にいれば良いだけの仕事じゃ。ミリアは魔王じゃからな。自分の身は自分で守れる。護衛の仕事だって、横で寝ていても問題はなかろう」
「天才ですか?」
私は魔王城を抜け出し、以前ミリアさんと訪れた丘まで来ていました。
流石にここまで逃げれば、あの人達も追って来ないでしょう。城下街でドンパチもしたくはないでしょうし、ちょうど良い隠れ家だと思います。
「……にしても、本当にあの人達はしつこいですね」
まさかあの一時だけで魔王幹部全員と対面することになるとは、流石の私でも予想出来ませんでした。
魔王城の隅々まで走り回ったのですから、当然といえば当然なのでしょうけれど……。
「ほんと、疲れました」
こんなに走ったのは、小学校のマラソン大会以来でしょうか?
あの頃はまだ純粋な少女だった私も、時が経てば変わるものです。……っと、これはおばさん臭いセリフでしたね。
「ふぅ……」
私は丘の上に一本だけ生えている大木に背を当て、休息します。
このまま寝てしまおうかと目を閉じた時、私の方にゆっくりと近づいてくる気配を感知しました。
宙をふわふわと飛び、私に向かって手を振る水色の少女、ウンディーネです。
『リーフィア~……』
「おかえりなさい、ウンディーネ。彼女達は上手く巻けましたか?」
『……うん、もう大丈夫だと思うよ』
ウンディーネの話を聞くと、どうやら私の気配を完全に見失ったヴィエラさんは、これ以上追いかけても時間の無駄だと諦めてくれたようです。
しかし、ミリアさんがそれに待ったを掛けました。
私が遊ぶなら自分も遊ぶとごね出し、最終的に首根っこを掴まれて執務室に引きずり込まれたらしいです。
魔王城を向き、ミリアさんに合掌。
「……とにかくお疲れ様でした。いきなり呼び出してしまって申し訳ありません」
『う、ううんっ! リーフィアの力になれるなら、うちも嬉しいし……ちょうど暇だったから気にしないで……!』
「はい、ありがとうございます」
ウンディーネは「また何かあったら呼んでね」と言い残し、霧状になって消えました。彼女の残滓が完全に消えるまで手を振り続け、やがて再び目を閉じます。
「うーーーーーん」
眠ろうとしているのですが、何かが足りません。
「……やっぱり、寝る時はこれですね」
『アイテムボックス』から布団を取り出し、草原の上に敷きます。そこに潜り込み、望んでいたふかふかの感触に、これで良いと満足して頷きました。
「……すぅすぅ、スヤァ……」
一度寝てしまおうと思えば、すぐに眠れるものです。
私は布団に入って一分もしないうちに、心地良い微睡みに意識を手放しました。
◆◇◆
「おーい、そろそろ起きんか」
「むにゃ?」
頬をペチペチと叩かれ、私は深い眠りから帰って来ました。
空はもう真っ暗で、満天の星空が浮かんでいました。
……どうやら、かなりの時間眠っていたみたいですね。
「ふ、ぁあ……」
私は上半身を起き上がらせ、軽い伸びをします。背中からポキポキという心地の良い音が鳴りました。
「……なんでここに居るのですか? アカネさん」
「それはこっちの台詞じゃが……まぁ良い」
「どうせミリアさんの指図でしょうけれど、あの人達の仕事が終わるまで帰るつもりはありませんよ」
「それは安心してくれて良い。もうすでに今日分の仕事は終わっているのでな。妾はお主の迎えに来ただけじゃよ」
「……そうですか。では、帰りましょうかね」
私は布団に『浄化』の魔法を掛け、殺菌してから『アイテムボックス』に仕舞い込みました。
「……相変わらず、リーフィアの魔法は常軌を逸脱しておるな」
アカネさんは呆れたようにそう言いました。
……そういえば『浄化』は、何人もの魔術師が集まって使用する魔法なんでしたっけ?
儀式の前に身を清めるだけのために何人も魔術師を集める方がおかしいのか、それとも『浄化』を一人で使用する私がおかしいのか。
まぁ疑問に思っただけで、答えはどうでも良いです。真実を突き詰めるのも面倒ですからね。
「一応ここは外で、地面に敷いている状態でしたからね。衛生面には気をつけなければなりません」
「そういうところは、きちんとしているのじゃな」
「当たり前です。生前に一人暮らしをしていた私にとって、健康とは何よりも重よ……ごめんなさい。訂正します。睡眠の次に重要なことなのです」
「言い直さんでいい。どうせそうだと思っていたからな」
「おお、流石はアカネさんです。頭が良いのですね」
「……不思議じゃな。全く褒められている気がしない」
こちらは褒めているつもりなのですけれど……感情を表に出すのは難しいですね。
「……はぁ、ヴィエラがカンカンに怒っていたぞ? ついでにミリアも」
「知ったことではないですねぇ……面倒ですけど」
「そう言うと思ったが、そろそろ長期休みも終わりで良いのではないか? ヴィエラは真面目な奴だ。お主が折れるまで付き纏うだろうよ」
「ええ……?」
それはもっと面倒です。
でもまぁ、十分に休んだのは事実ですよね。
「リーフィアの仕事はミリアの護衛じゃ。別に書類作業をしろと言っているのではないのだから、諦めて折れてしまっても良いのではないかと思うがなぁ」
「……そういえば、そんな仕事内容でしたね」
最近は全然やっていなかったので、完全に忘れていました。
「ミリアの護衛ということは、あやつの側にいれば良いだけの仕事じゃ。ミリアは魔王じゃからな。自分の身は自分で守れる。護衛の仕事だって、横で寝ていても問題はなかろう」
「天才ですか?」
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