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第1章
密談パート2です
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これで私の報告は終わりました。
ですが、これが全てではありません。
残るはウンディーネの報告です。
むしろ私は、彼女の報告の方が魔王軍に取って、かなりの朗報なのではないかと思っています。
『……えっと……それじゃあ、うちも報告をするね…………』
まだ私以外の人と話すのは慣れていないのでしょう。
若干言葉に詰まりながら、ウンディーネは報告を完了します。
内容は、勇者の召喚についてです。
どれだけ国家機密を集めても、こちらの有益となる情報は、それくらいしかありませんでした。
他は、別に調べても直接は関係ないものばかり。
そういう理由で、今回の報告では省いたようです。
『こ、これで……報告を終わりに、します……!』
「はい、お疲れ様でした。この後はゆっくりしてください…………と言いたいところですが、すいません。この後も魔法の持続をお願いします」
『……うん! 任せて、リーフィア!』
ウンディーネは霧となって消えます。
精霊は形を成しているだけでも魔力を消費します。
より長い時間、魔法を継続するために、無駄な消費を抑えたいのでしょう。
「……流石はリーフィアじゃな。あの水の精霊と、あそこまで心を通わせているとは」
「ふふっ、最初は上手く会話することも出来ませんでしたけどね。大変だったんですよ?」
呼び出したのはウンディーネなのに、近寄ったら「来ないで」と泣きながら言われた時、あれは私も驚きました。
「でも、あれでいて甘えん坊なところが、とても可愛いんですよ」
とても献身的で、少しでも私の役に立とうと頑張る姿が、見ていて癒されます。
これでも、ウンディーネのことは大好きですよ?
『リーフィア!?』
『ふふっ、そうやってすぐに反応が返って来るところも、いいですね』
『……もうっ! こうやって馬鹿にして……知らない……!』
あら、念話が切れてしまいました。
からかっていると思って拗ねちゃったんですかね?
──と、突然のイチャイチャ失礼しました。
「それで、ウンディーネの報告はどうでしたか?」
「……やはり気になったのは、国が抱えられる勇者は一人という点じゃな。言われてみれば確かに、歴代の剣の勇者達の顔は覚えていても、其奴らが同時に来たことはなかった」
それは剣に限った話ではないようです。
あの時、杖の勇者が魔族領に侵入して来た時のことです。
私がその勇者を殺したところで、杖を抱えている国が再度召喚をするだけ。
つまり、殺そうと殺すまいと、事態にほぼ変わりはなかったということになります。
「勇者……異世界で平和に暮らしていた子供達を、捨て駒扱いか……何じゃ、真実を聞いてみれば、胸糞悪い話じゃな」
「ええ、全くです」
これでは、どちらが悪党なのかわかりませんね。
「じゃが、奴らが侵攻してくる以上、妾達も生きるため、民を守るために戦わなければならぬ。……この悪循環をどうにか出来ぬものか」
アカネさんは自分達のことだけではなく、ただの被害者である勇者のことも助けられないかと考え込みました。
……ミリアさんと同じく、この人も優しいのですね。
本当に、どっちが悪役なのかわからなくなります。
「もしかしたら、今回のように友好を築く。というのは悪くない手なのかもしれぬな」
「ですが、ここの王はそれを望んでいないようです」
「……ああ、それは理解しておる。じゃが、他国にはまだマシな統治者が居るじゃろう。それらと話をするのは、悪手ではない筈じゃ」
「危険はあるでしょうね」
「ふっ……この程度の危険、ミリアのためだと思えばどうってことない」
「……ミリアさんのこと、大好きなのですね」
「そうじゃ、妾はミリアが大好きじゃよ。この命が枯れるまで、こいつを守り抜くと決めておる」
恥ずかしがる様子はなく、アカネさんは堂々と言いました。
横で寝ているミリアさんの頭を、愛おしそうに撫でるその姿は、親子のように微笑ましい光景でした。
「リーフィア」
「……はい、何でしょうか?」
いつにも増して真剣な表情。
私はその気に当てられて、自然と背筋を伸ばします。
「もし、何かあって妾が居なくなった時、ミリアのことを……頼む」
アカネさんは地面に膝を付け、深々と頭を下げました。
誠心誠意の土下座です。
「お主のことは、正直まだ良くわからぬ。じゃが、信頼出来る。じゃから、どうか……」
震えた声。
この世界は、何が起こるかわかりません。
不幸が重なって、アカネさんの身に危険が降り注ぐこともあるでしょう。
その時を危惧して、私にミリアさんを託そうとしています。
そんな今生の願いを私は──
「お断りします」
あっさりと一蹴しました。
アカネさんは顔をバッと上げ、絶望したような表情を作りました。
私は彼女に歩み寄り、その体を起こします。
「そんな大役、私には荷が重いです。なので、アカネさんが何処かへ消えることは許しません。何かがあれば、私が助けます。私に出来ることなら、全ての力を尽くして皆さんを守ります」
私が平和に眠るため、私はミリアさんと、彼女を守る人達を守ります。
言っていることが滅茶苦茶ですが、一人でミリアさんの子守りをするより、皆さんの手助けをした方が、まだマシだと天秤に掛けただけです。
私の願いは──安心して眠ることです。
ミリアさんが泣き喚いていると、うるさくておちおち寝ていられません。
「勿論、タダではありません。あなたが困ったら、私はどんなことだろうと助けます。その代わりに私が眠れなくて困っている時は、助けてください」
主にミリアさんから。
「──ぷっ、ははっ! あはは……!」
しばしの間呆けた顔をしていたアカネさんは、唐突に腹を抱えて笑い出しました。
「お主は、本当に面白い奴じゃ……! まさか妾の誠心誠意を断り、それでいて自分が眠るために助け合おう!? っ……くくっ、本当に面白いのぅ!」
「お褒めに預かり、光栄です」
アカネさんは眠るためと言っていましたが、私にとっては最重要目的なのです。
「……ん、なんだ。うるさくて眠れないぞ…………」
アカネさんの笑い声で、それまでスヤスヤと眠っていたミリアさんが起きてしまいました。
「すまんなミリア、じゃが、我慢出来ぬのじゃ……!」
「おお、なんだなんだ? アカネがそこまで機嫌良いなんて珍しいな。……リーフィア、何があったのだ?」
「ちょっと、人には言えない、女同士のお話ですよ」
その返答に、ミリアさんは全然わからないと首を傾げました。
「ミリア……リーフィアは面白い奴じゃのう!」
「ん? ……ああそうだぞ!」
アカネさんの言葉に、少し不思議そうにしたのは一瞬のことでした。
すぐに自慢気な顔になり、鼻を鳴らしながら胸を張ります。
「リーフィアはな──余の自慢の配下だ!」
ですが、これが全てではありません。
残るはウンディーネの報告です。
むしろ私は、彼女の報告の方が魔王軍に取って、かなりの朗報なのではないかと思っています。
『……えっと……それじゃあ、うちも報告をするね…………』
まだ私以外の人と話すのは慣れていないのでしょう。
若干言葉に詰まりながら、ウンディーネは報告を完了します。
内容は、勇者の召喚についてです。
どれだけ国家機密を集めても、こちらの有益となる情報は、それくらいしかありませんでした。
他は、別に調べても直接は関係ないものばかり。
そういう理由で、今回の報告では省いたようです。
『こ、これで……報告を終わりに、します……!』
「はい、お疲れ様でした。この後はゆっくりしてください…………と言いたいところですが、すいません。この後も魔法の持続をお願いします」
『……うん! 任せて、リーフィア!』
ウンディーネは霧となって消えます。
精霊は形を成しているだけでも魔力を消費します。
より長い時間、魔法を継続するために、無駄な消費を抑えたいのでしょう。
「……流石はリーフィアじゃな。あの水の精霊と、あそこまで心を通わせているとは」
「ふふっ、最初は上手く会話することも出来ませんでしたけどね。大変だったんですよ?」
呼び出したのはウンディーネなのに、近寄ったら「来ないで」と泣きながら言われた時、あれは私も驚きました。
「でも、あれでいて甘えん坊なところが、とても可愛いんですよ」
とても献身的で、少しでも私の役に立とうと頑張る姿が、見ていて癒されます。
これでも、ウンディーネのことは大好きですよ?
『リーフィア!?』
『ふふっ、そうやってすぐに反応が返って来るところも、いいですね』
『……もうっ! こうやって馬鹿にして……知らない……!』
あら、念話が切れてしまいました。
からかっていると思って拗ねちゃったんですかね?
──と、突然のイチャイチャ失礼しました。
「それで、ウンディーネの報告はどうでしたか?」
「……やはり気になったのは、国が抱えられる勇者は一人という点じゃな。言われてみれば確かに、歴代の剣の勇者達の顔は覚えていても、其奴らが同時に来たことはなかった」
それは剣に限った話ではないようです。
あの時、杖の勇者が魔族領に侵入して来た時のことです。
私がその勇者を殺したところで、杖を抱えている国が再度召喚をするだけ。
つまり、殺そうと殺すまいと、事態にほぼ変わりはなかったということになります。
「勇者……異世界で平和に暮らしていた子供達を、捨て駒扱いか……何じゃ、真実を聞いてみれば、胸糞悪い話じゃな」
「ええ、全くです」
これでは、どちらが悪党なのかわかりませんね。
「じゃが、奴らが侵攻してくる以上、妾達も生きるため、民を守るために戦わなければならぬ。……この悪循環をどうにか出来ぬものか」
アカネさんは自分達のことだけではなく、ただの被害者である勇者のことも助けられないかと考え込みました。
……ミリアさんと同じく、この人も優しいのですね。
本当に、どっちが悪役なのかわからなくなります。
「もしかしたら、今回のように友好を築く。というのは悪くない手なのかもしれぬな」
「ですが、ここの王はそれを望んでいないようです」
「……ああ、それは理解しておる。じゃが、他国にはまだマシな統治者が居るじゃろう。それらと話をするのは、悪手ではない筈じゃ」
「危険はあるでしょうね」
「ふっ……この程度の危険、ミリアのためだと思えばどうってことない」
「……ミリアさんのこと、大好きなのですね」
「そうじゃ、妾はミリアが大好きじゃよ。この命が枯れるまで、こいつを守り抜くと決めておる」
恥ずかしがる様子はなく、アカネさんは堂々と言いました。
横で寝ているミリアさんの頭を、愛おしそうに撫でるその姿は、親子のように微笑ましい光景でした。
「リーフィア」
「……はい、何でしょうか?」
いつにも増して真剣な表情。
私はその気に当てられて、自然と背筋を伸ばします。
「もし、何かあって妾が居なくなった時、ミリアのことを……頼む」
アカネさんは地面に膝を付け、深々と頭を下げました。
誠心誠意の土下座です。
「お主のことは、正直まだ良くわからぬ。じゃが、信頼出来る。じゃから、どうか……」
震えた声。
この世界は、何が起こるかわかりません。
不幸が重なって、アカネさんの身に危険が降り注ぐこともあるでしょう。
その時を危惧して、私にミリアさんを託そうとしています。
そんな今生の願いを私は──
「お断りします」
あっさりと一蹴しました。
アカネさんは顔をバッと上げ、絶望したような表情を作りました。
私は彼女に歩み寄り、その体を起こします。
「そんな大役、私には荷が重いです。なので、アカネさんが何処かへ消えることは許しません。何かがあれば、私が助けます。私に出来ることなら、全ての力を尽くして皆さんを守ります」
私が平和に眠るため、私はミリアさんと、彼女を守る人達を守ります。
言っていることが滅茶苦茶ですが、一人でミリアさんの子守りをするより、皆さんの手助けをした方が、まだマシだと天秤に掛けただけです。
私の願いは──安心して眠ることです。
ミリアさんが泣き喚いていると、うるさくておちおち寝ていられません。
「勿論、タダではありません。あなたが困ったら、私はどんなことだろうと助けます。その代わりに私が眠れなくて困っている時は、助けてください」
主にミリアさんから。
「──ぷっ、ははっ! あはは……!」
しばしの間呆けた顔をしていたアカネさんは、唐突に腹を抱えて笑い出しました。
「お主は、本当に面白い奴じゃ……! まさか妾の誠心誠意を断り、それでいて自分が眠るために助け合おう!? っ……くくっ、本当に面白いのぅ!」
「お褒めに預かり、光栄です」
アカネさんは眠るためと言っていましたが、私にとっては最重要目的なのです。
「……ん、なんだ。うるさくて眠れないぞ…………」
アカネさんの笑い声で、それまでスヤスヤと眠っていたミリアさんが起きてしまいました。
「すまんなミリア、じゃが、我慢出来ぬのじゃ……!」
「おお、なんだなんだ? アカネがそこまで機嫌良いなんて珍しいな。……リーフィア、何があったのだ?」
「ちょっと、人には言えない、女同士のお話ですよ」
その返答に、ミリアさんは全然わからないと首を傾げました。
「ミリア……リーフィアは面白い奴じゃのう!」
「ん? ……ああそうだぞ!」
アカネさんの言葉に、少し不思議そうにしたのは一瞬のことでした。
すぐに自慢気な顔になり、鼻を鳴らしながら胸を張ります。
「リーフィアはな──余の自慢の配下だ!」
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