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第1章
襲撃者のお出ましです
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物事とは急激に進展するものです。
それは錆びついた歯車に油を注した時のように、加速して、本人の理解が追いつかないほど早く進展していきます。
それは出会いなのか、別れなのか。
「…………ま、この場合は前者ですかね」
私は今、大勢のエルフに囲まれていました。
全員が私のことを警戒したように睨みつけ、弓に矢を番えていました。
……完全な戦闘態勢ですね。
どうしてこうなったのかと問われたら、私はわからないと答えます。
珍しく焦ったウンディーネに肩を揺さぶられて起こされ、何事かと思ったら、こうなっていたわけです。
本当になんでこうなっているのでしょう?
私が何かしましたかね?
…………うーん、記憶を辿っても、寝ていること以外に何かした覚えはないんですよねぇ。
これは直接聞いちゃった方がいいかもですね。
「あの────」
「口を開くな! この魔女め!」
えぇ……?
まさか話さえままならないとは。
「魔女とはなんでしょうか?」
「お前のことに決まっているだろう!」
「私はエルフですよ? あなた方と同じ種族です」
「俺達は騙されないぞ! 姿を似せようとしているに決まっている!」
……何かを言うと、誰かに反論されます。
これでは話し合いになりません。
というか魔女ってなんですか?
「……とりあえず、一番偉い人を出していただけます? あなた方では時間の無駄です」
私は早く寝たいのです。
どんな状況でも眠れる自信はありますが、流石に矢を向けられている状況で、気持ちよく眠ることは出来ません。
「そう言って出てきた族長を殺すつもりだろう!?」
「あ、やっぱりそう考えちゃいます? いやですねぇ、私は平和主義者ですよ。なんで殺さなきゃならないのですか。というか面倒です」
「貴様、さっきからふざけた態度をしやがって! ──このっ!」
激昂した男性エルフが、矢を放ちました。
それは真っ直ぐに私の眉間へと飛んできます。
「よっ、と」
私は飛来してきた矢を、難なく掴みました。
私の技能、完全反応はどんな攻撃にも反応することができます。
反射神経とも呼べるのでしょうか。
たとえ目に追えぬ攻撃でも、今の私ならば軽く避けることが可能です。
……ま、今の攻撃は普通に見えていました。それだけ遅い攻撃だったということです。
「この程度で私を倒せるとでも?」
手に持った矢をへし折り、少し凄みます。
私はエルフ達のどうでもいい勘違いによって眠りを邪魔されたことを、とても怒っていました。
なんですか魔女って。そんな簡単な質問すら、聞いてもらえない。……ならばどうすればいいのでしょう?
「私は暴力で解決、っていうのは嫌いなのです。……でも、いうことを聞いてくれない人には、こうするしかないですよね」
私は魔力を高めます。
……不思議です。
前にほんの少し魔法を使った時にも感じましたが、私はほとんど魔法という概念を知らないはずなのに、まるで体が使い方を覚えているかのように自然と魔力を操作することが出来ました。
私の手のひらに、小さな風の球体が出来上がりました。
球体は渦を巻き、その余波で木々が揺れます。
「邪魔者は──退場してもらいましょうか」
私はそれを上に向け、最後の一手間を加えます。
「──巻き起これ」
その言葉に同調して、球体が膨れ上がりました。
私がイメージしたのは──台風です。
魔力をふんだんに注ぎ込んだ風は大きな渦となって、周囲のエルフ達を纏めて吹き飛ばしました。
悲鳴を上げて飛んでいくのを眺めていると、やがて何も聞こえなくなりました。
「……ようやく、静かになりましたか」
辺りにはもう、私の邪魔をする者はいません。
ということは、もう寝てもいいですよね?
「……ふ、ぁ……あぁ…………」
大きな欠伸を一回。
すぐに横になり、私は毛布を被り直します。
「もう、来ないといいなぁ……」
そう呟き、私は再び深い眠りにつきました。
それは錆びついた歯車に油を注した時のように、加速して、本人の理解が追いつかないほど早く進展していきます。
それは出会いなのか、別れなのか。
「…………ま、この場合は前者ですかね」
私は今、大勢のエルフに囲まれていました。
全員が私のことを警戒したように睨みつけ、弓に矢を番えていました。
……完全な戦闘態勢ですね。
どうしてこうなったのかと問われたら、私はわからないと答えます。
珍しく焦ったウンディーネに肩を揺さぶられて起こされ、何事かと思ったら、こうなっていたわけです。
本当になんでこうなっているのでしょう?
私が何かしましたかね?
…………うーん、記憶を辿っても、寝ていること以外に何かした覚えはないんですよねぇ。
これは直接聞いちゃった方がいいかもですね。
「あの────」
「口を開くな! この魔女め!」
えぇ……?
まさか話さえままならないとは。
「魔女とはなんでしょうか?」
「お前のことに決まっているだろう!」
「私はエルフですよ? あなた方と同じ種族です」
「俺達は騙されないぞ! 姿を似せようとしているに決まっている!」
……何かを言うと、誰かに反論されます。
これでは話し合いになりません。
というか魔女ってなんですか?
「……とりあえず、一番偉い人を出していただけます? あなた方では時間の無駄です」
私は早く寝たいのです。
どんな状況でも眠れる自信はありますが、流石に矢を向けられている状況で、気持ちよく眠ることは出来ません。
「そう言って出てきた族長を殺すつもりだろう!?」
「あ、やっぱりそう考えちゃいます? いやですねぇ、私は平和主義者ですよ。なんで殺さなきゃならないのですか。というか面倒です」
「貴様、さっきからふざけた態度をしやがって! ──このっ!」
激昂した男性エルフが、矢を放ちました。
それは真っ直ぐに私の眉間へと飛んできます。
「よっ、と」
私は飛来してきた矢を、難なく掴みました。
私の技能、完全反応はどんな攻撃にも反応することができます。
反射神経とも呼べるのでしょうか。
たとえ目に追えぬ攻撃でも、今の私ならば軽く避けることが可能です。
……ま、今の攻撃は普通に見えていました。それだけ遅い攻撃だったということです。
「この程度で私を倒せるとでも?」
手に持った矢をへし折り、少し凄みます。
私はエルフ達のどうでもいい勘違いによって眠りを邪魔されたことを、とても怒っていました。
なんですか魔女って。そんな簡単な質問すら、聞いてもらえない。……ならばどうすればいいのでしょう?
「私は暴力で解決、っていうのは嫌いなのです。……でも、いうことを聞いてくれない人には、こうするしかないですよね」
私は魔力を高めます。
……不思議です。
前にほんの少し魔法を使った時にも感じましたが、私はほとんど魔法という概念を知らないはずなのに、まるで体が使い方を覚えているかのように自然と魔力を操作することが出来ました。
私の手のひらに、小さな風の球体が出来上がりました。
球体は渦を巻き、その余波で木々が揺れます。
「邪魔者は──退場してもらいましょうか」
私はそれを上に向け、最後の一手間を加えます。
「──巻き起これ」
その言葉に同調して、球体が膨れ上がりました。
私がイメージしたのは──台風です。
魔力をふんだんに注ぎ込んだ風は大きな渦となって、周囲のエルフ達を纏めて吹き飛ばしました。
悲鳴を上げて飛んでいくのを眺めていると、やがて何も聞こえなくなりました。
「……ようやく、静かになりましたか」
辺りにはもう、私の邪魔をする者はいません。
ということは、もう寝てもいいですよね?
「……ふ、ぁ……あぁ…………」
大きな欠伸を一回。
すぐに横になり、私は毛布を被り直します。
「もう、来ないといいなぁ……」
そう呟き、私は再び深い眠りにつきました。
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