41 / 50
第39話 魔王との契り
しおりを挟む
──どうやら、私はギリギリだったらしい。
全身が火傷で覆われていた私は、アリスとクレハの必死な治療で一命を取り止めたけど、三日ほど寝込んでいたらしい。
ただ激昂しただけでこれとか……魔王恐るべし。
起きた時、そこにはレインとアリス、そしてマトイが部屋にいた。
三人とも一切寝ずに付きっきりで看病してくれていたらしく、目の下のクマが凄かった。
感極まったレインに抱き締められて、寝起き早々骨が折れそうになる事件はあったものの、その場はなんとか落ち着きを取り戻していた…………ように見えたけど、終始マトイの様子がおかしかった。
私も話しかけるタイミングが掴めないでいると、マトイが途中で部屋から退出してしまったので、二人に外の空気を吸ってくると言って追いかけた。
千里眼でマトイの姿はすでに見つけてある。彼女は迷宮で唯一外を見渡せるレイン専用の戦闘部屋に座り、風に吹かれていた。
「ああ、いたいた。こんなところで何してんのさ」
「……セリア」
元気のない返事。
下に広がる人の国を見つめたまま、私の方に振り向こうとはしない。
そんなマトイの横に、私は腰を降ろした。
「……先代のこと、好き?」
唐突にそんなことを言った私に驚いてこっちに振り向き、そして懐かしそうに笑った。今まで私に見せたことがなかった儚げな笑顔。それを見た瞬間、胸がキュッと締まった感覚に陥る。
「ああ、大好きじゃ」
「……そか…………」
答えは短かった。それでもマトイの心の篭った回答に、私は自然と微笑んでしまった。
……やっぱり、あの夢はただの夢ではなかったんだと。あの幸せな世界は偽りではなかったとわかって、なんとなく嬉しくなる。
「今も人間が憎い?」
「……そうじゃな。やはり、妾の大切な人を殺した奴らは許せぬ。じゃが安心せい。友の邪魔はせぬよ」
まだ納得はしきれていないけど、それでも現実を直視して考えてくれている。そして、あんな無謀な提案をした私を今も友と言ってくれた。
「…………すまんかった」
横で微かに布の擦れる音がした。
見ると、マトイがこちらに体を向けて深々と頭を下げていた。
「此度は妾の失態により、お主を危険な目に合わせてしまった。本当に、申し訳ない……」
「やめてよ。私は謝ってもらおうと思っていないし。そもそも私が勝手に助けたいって動いたんだから、マトイは咎められる必要はないんだよ」
そう、完全な自業自得。
私が寝ている時にレインやアリスにも謝ったんだろうけど、きっと二人も同じことを言ったに違いない。
「……レインとアリスにも同じことを言われた。これは主人が望んでやったことなのだから、妾が気にする必要はない。とな」
ほらね? 私の大切な従者は理解力があるからね。二人もマトイのことをよく思っているから、これくらいでは怒らない。むしろ、私が傷ついたことをマトイのせいにしたら、私が二人を怒る。
「だが、謝らねば妾の気が済まぬ。……なぁ、セリアよ」
「ん、なぁに?」
「……もし、お主がよければの話なのじゃが、全員で妾の家に来ぬか? そこならばいつでもお主らを守れるし、退屈もしない」
「……うーん、悪いけどその提案には乗れないな」
「理由を、聞いてもいいだろうか?」
「私はね、やっぱり迷宮主なんだ」
これがレインとアリスだけがいた時ならば、私はマトイの提案に乗っていたかもしれない。
でも、私はもうここの魔物達を置いて行けないと思ってしまった。
私がこの迷宮を手放したら、この魔物達はどうなるのだろうか。
おそらく、迷宮主がいない迷宮は形を保てなくなるだろう。そうなると、中にいる魔物は当然、迷宮ごと消滅してしまう。
「私は、自分だけが助かるために、配下を殺すことは出来ないよ」
その言葉を聞いたマトイは、短く「そうか」と呟いて、少し寂しそうに笑った。
「お前は、どこまで行っても優しい奴じゃな。妾の、魔王の提案を部下のために蹴るとは」
「ごめんね。でも、私の意思は変わらない」
「ああ、わかっておる。じゃから、これは妾の自己満足じゃ」
そう言って渡されたのは、拳大の真っ赤な珠だった。触れると微かに熱を感じるそれからは、マトイに似た魔力を感じる。
「それは紅核という。妾の第二の心臓であり、契りを交わすのに必要なものじゃ。それを心臓を融合させることで、妾と深くつながることができる」
「へぇ、クレハと同じやつか……」
「いや、違う。クレハたちのような従者には紅玉というものを与えておる。それは妾と繋がって転移に使う程度のことしかできぬが、紅核はもっと深く繋がることが可能じゃ。妾がセリアの居る場所に転移するのは勿論、妾の力を一部扱えるようになる。ついでに念話というやつで、離れていても会話が可能じゃ」
つまりこれはクレハが得た物の上位互換ってことになるよね。
すぐに助けに駆けつけてもらえるようになるだけじゃなくて、マトイの力を私でも使えるようになるなんて、結構ありがたいことだよね。『念話』ってのはマトイが言った通り、離れていても会話が可能。これでわからないことがあっても、いちいちマトイを呼び出さないで済むってことになる。
「それは一度しか作れない物でな。使いこなせるようになれば、十分にセリアの力になってくれるじゃろう」
普段ならこんな貴重な物は受け取れない、と返すところなんだけど、これはマトイの覚悟が詰まった物だ。
生半可な気持ちで受け取れないし、私のためを思ってくれた物なんだから、断る理由がない。
「……これをどうすればいいの?」
「服の上からでも構わぬ。心臓に当てさえすれば、それは勝手にセリアの体に流れ込むじゃろう。しかし、気をつけろよ。いわばそれは心臓を作り変えるのと同意。激しい痛みが体を襲────」
「そぉい!」
マトイの言葉を最後まで聞かないで、私は紅核を心臓にねじ込んだ。
「妾の話聞いておったか!?」
「あっはっは、だってマトイの話がなが──っ、でぇええええええ!?」
なんか体がポカポカするなぁ、と思った次の瞬間、全身が焼け付くような激しい痛みが私を襲った。あまりにも唐突すぎたそれのせいで、我慢できずに地面を転げ回る。
感覚的には心臓が何かに侵食されていくような。そして、体がそれに激しく抵抗している。
そのため、痛みは和らぐことはなく、しかも徐々に痛みは激しさを増していく。
これは痛すぎる。
下手したら死んじゃうくらいやばい。もう痛すぎて笑っちゃうレベルだ。
「じゃから言っただろうに! ああ、もうっ、おとなしくしておれ!」
マトイは転げ回る私を捕まえて、少女のような細い腕でヒョイッと持ち上げた。
これはまさか……!?
「今は耐えるしかない。すぐにアリスのところに行くから、我慢せい!」
「──お姫様抱っこ!?」
「お主はどこに反応しておるんじゃ、この馬鹿!」
「はい、すいません……!」
だって痛いのが悪いんだもん。こうして他のことを考えてなきゃ、激痛ばかりを意識しちゃってどうにかなりそう。
なんでマトイの配下の人達はこれを耐えられたの? 絶対に何人かは死亡者出てるでしょ。
私ってば一応、自分の魔眼で進化済みなんですけど……これは体の耐久力関係ない? あ、そうですか。マジですか。──ちくしょうめぃ!
「まったく……紅核は紅玉と違い、激しい痛みが襲うことになるから、痛みを抑える薬を渡そうかと思っていたのにな」
「……………………ほぇ?」
そんなものがあったんかぃいいいい!
だったら最初から言ってよ!
なんで偉い人って無駄に説明をしたがるかなぁ。最初から薬を渡して「飲め」と言ってくれれば、マトイの言うことならって素直に飲み込んだのに!
「そんな目で見ても妾は謝らぬぞ。最後まで話を聞かなかったセリアが悪い」
ああ、ごもっともですよ!
でも、この痛みに耐えきれば私の勝────
「それと、今は互いの力が均衡しているから痛みはその程度で済むが、結合が進むと更に激しい痛みがくるからな」
それは死の宣告に等しい言葉だった。
これよりもやばい痛み? いやいや、無理です。絶対に耐えられる気がしません。……え、マジなの? 私を怖がらせるための嘘ではないのですか?
「……残念ながら、大マジじゃ」
いやいや! ダメでしょ!
迷宮の主人が連続で気絶。しかも片方は自業自得とか色々とダメだって!
これを見ている神がいたなら「こいつ馬鹿だなぁ(笑)」とか思っているに違いねぇ! 笑い事じゃねぇんだよ。こっちは命の危機が今にも迫っているんだよ!
ちっくしょおおおおおおおおお────あ、っ……………………。
全身が火傷で覆われていた私は、アリスとクレハの必死な治療で一命を取り止めたけど、三日ほど寝込んでいたらしい。
ただ激昂しただけでこれとか……魔王恐るべし。
起きた時、そこにはレインとアリス、そしてマトイが部屋にいた。
三人とも一切寝ずに付きっきりで看病してくれていたらしく、目の下のクマが凄かった。
感極まったレインに抱き締められて、寝起き早々骨が折れそうになる事件はあったものの、その場はなんとか落ち着きを取り戻していた…………ように見えたけど、終始マトイの様子がおかしかった。
私も話しかけるタイミングが掴めないでいると、マトイが途中で部屋から退出してしまったので、二人に外の空気を吸ってくると言って追いかけた。
千里眼でマトイの姿はすでに見つけてある。彼女は迷宮で唯一外を見渡せるレイン専用の戦闘部屋に座り、風に吹かれていた。
「ああ、いたいた。こんなところで何してんのさ」
「……セリア」
元気のない返事。
下に広がる人の国を見つめたまま、私の方に振り向こうとはしない。
そんなマトイの横に、私は腰を降ろした。
「……先代のこと、好き?」
唐突にそんなことを言った私に驚いてこっちに振り向き、そして懐かしそうに笑った。今まで私に見せたことがなかった儚げな笑顔。それを見た瞬間、胸がキュッと締まった感覚に陥る。
「ああ、大好きじゃ」
「……そか…………」
答えは短かった。それでもマトイの心の篭った回答に、私は自然と微笑んでしまった。
……やっぱり、あの夢はただの夢ではなかったんだと。あの幸せな世界は偽りではなかったとわかって、なんとなく嬉しくなる。
「今も人間が憎い?」
「……そうじゃな。やはり、妾の大切な人を殺した奴らは許せぬ。じゃが安心せい。友の邪魔はせぬよ」
まだ納得はしきれていないけど、それでも現実を直視して考えてくれている。そして、あんな無謀な提案をした私を今も友と言ってくれた。
「…………すまんかった」
横で微かに布の擦れる音がした。
見ると、マトイがこちらに体を向けて深々と頭を下げていた。
「此度は妾の失態により、お主を危険な目に合わせてしまった。本当に、申し訳ない……」
「やめてよ。私は謝ってもらおうと思っていないし。そもそも私が勝手に助けたいって動いたんだから、マトイは咎められる必要はないんだよ」
そう、完全な自業自得。
私が寝ている時にレインやアリスにも謝ったんだろうけど、きっと二人も同じことを言ったに違いない。
「……レインとアリスにも同じことを言われた。これは主人が望んでやったことなのだから、妾が気にする必要はない。とな」
ほらね? 私の大切な従者は理解力があるからね。二人もマトイのことをよく思っているから、これくらいでは怒らない。むしろ、私が傷ついたことをマトイのせいにしたら、私が二人を怒る。
「だが、謝らねば妾の気が済まぬ。……なぁ、セリアよ」
「ん、なぁに?」
「……もし、お主がよければの話なのじゃが、全員で妾の家に来ぬか? そこならばいつでもお主らを守れるし、退屈もしない」
「……うーん、悪いけどその提案には乗れないな」
「理由を、聞いてもいいだろうか?」
「私はね、やっぱり迷宮主なんだ」
これがレインとアリスだけがいた時ならば、私はマトイの提案に乗っていたかもしれない。
でも、私はもうここの魔物達を置いて行けないと思ってしまった。
私がこの迷宮を手放したら、この魔物達はどうなるのだろうか。
おそらく、迷宮主がいない迷宮は形を保てなくなるだろう。そうなると、中にいる魔物は当然、迷宮ごと消滅してしまう。
「私は、自分だけが助かるために、配下を殺すことは出来ないよ」
その言葉を聞いたマトイは、短く「そうか」と呟いて、少し寂しそうに笑った。
「お前は、どこまで行っても優しい奴じゃな。妾の、魔王の提案を部下のために蹴るとは」
「ごめんね。でも、私の意思は変わらない」
「ああ、わかっておる。じゃから、これは妾の自己満足じゃ」
そう言って渡されたのは、拳大の真っ赤な珠だった。触れると微かに熱を感じるそれからは、マトイに似た魔力を感じる。
「それは紅核という。妾の第二の心臓であり、契りを交わすのに必要なものじゃ。それを心臓を融合させることで、妾と深くつながることができる」
「へぇ、クレハと同じやつか……」
「いや、違う。クレハたちのような従者には紅玉というものを与えておる。それは妾と繋がって転移に使う程度のことしかできぬが、紅核はもっと深く繋がることが可能じゃ。妾がセリアの居る場所に転移するのは勿論、妾の力を一部扱えるようになる。ついでに念話というやつで、離れていても会話が可能じゃ」
つまりこれはクレハが得た物の上位互換ってことになるよね。
すぐに助けに駆けつけてもらえるようになるだけじゃなくて、マトイの力を私でも使えるようになるなんて、結構ありがたいことだよね。『念話』ってのはマトイが言った通り、離れていても会話が可能。これでわからないことがあっても、いちいちマトイを呼び出さないで済むってことになる。
「それは一度しか作れない物でな。使いこなせるようになれば、十分にセリアの力になってくれるじゃろう」
普段ならこんな貴重な物は受け取れない、と返すところなんだけど、これはマトイの覚悟が詰まった物だ。
生半可な気持ちで受け取れないし、私のためを思ってくれた物なんだから、断る理由がない。
「……これをどうすればいいの?」
「服の上からでも構わぬ。心臓に当てさえすれば、それは勝手にセリアの体に流れ込むじゃろう。しかし、気をつけろよ。いわばそれは心臓を作り変えるのと同意。激しい痛みが体を襲────」
「そぉい!」
マトイの言葉を最後まで聞かないで、私は紅核を心臓にねじ込んだ。
「妾の話聞いておったか!?」
「あっはっは、だってマトイの話がなが──っ、でぇええええええ!?」
なんか体がポカポカするなぁ、と思った次の瞬間、全身が焼け付くような激しい痛みが私を襲った。あまりにも唐突すぎたそれのせいで、我慢できずに地面を転げ回る。
感覚的には心臓が何かに侵食されていくような。そして、体がそれに激しく抵抗している。
そのため、痛みは和らぐことはなく、しかも徐々に痛みは激しさを増していく。
これは痛すぎる。
下手したら死んじゃうくらいやばい。もう痛すぎて笑っちゃうレベルだ。
「じゃから言っただろうに! ああ、もうっ、おとなしくしておれ!」
マトイは転げ回る私を捕まえて、少女のような細い腕でヒョイッと持ち上げた。
これはまさか……!?
「今は耐えるしかない。すぐにアリスのところに行くから、我慢せい!」
「──お姫様抱っこ!?」
「お主はどこに反応しておるんじゃ、この馬鹿!」
「はい、すいません……!」
だって痛いのが悪いんだもん。こうして他のことを考えてなきゃ、激痛ばかりを意識しちゃってどうにかなりそう。
なんでマトイの配下の人達はこれを耐えられたの? 絶対に何人かは死亡者出てるでしょ。
私ってば一応、自分の魔眼で進化済みなんですけど……これは体の耐久力関係ない? あ、そうですか。マジですか。──ちくしょうめぃ!
「まったく……紅核は紅玉と違い、激しい痛みが襲うことになるから、痛みを抑える薬を渡そうかと思っていたのにな」
「……………………ほぇ?」
そんなものがあったんかぃいいいい!
だったら最初から言ってよ!
なんで偉い人って無駄に説明をしたがるかなぁ。最初から薬を渡して「飲め」と言ってくれれば、マトイの言うことならって素直に飲み込んだのに!
「そんな目で見ても妾は謝らぬぞ。最後まで話を聞かなかったセリアが悪い」
ああ、ごもっともですよ!
でも、この痛みに耐えきれば私の勝────
「それと、今は互いの力が均衡しているから痛みはその程度で済むが、結合が進むと更に激しい痛みがくるからな」
それは死の宣告に等しい言葉だった。
これよりもやばい痛み? いやいや、無理です。絶対に耐えられる気がしません。……え、マジなの? 私を怖がらせるための嘘ではないのですか?
「……残念ながら、大マジじゃ」
いやいや! ダメでしょ!
迷宮の主人が連続で気絶。しかも片方は自業自得とか色々とダメだって!
これを見ている神がいたなら「こいつ馬鹿だなぁ(笑)」とか思っているに違いねぇ! 笑い事じゃねぇんだよ。こっちは命の危機が今にも迫っているんだよ!
ちっくしょおおおおおおおおお────あ、っ……………………。
0
お気に入りに追加
841
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
貴方の事を心から愛していました。ありがとう。
天海みつき
BL
穏やかな晴天のある日の事。僕は最愛の番の後宮で、ぼんやりと紅茶を手に己の生きざまを振り返っていた。ゆったり流れるその時を楽しんだ僕は、そのままカップを傾け、紅茶を喉へと流し込んだ。
――混じり込んだ××と共に。
オメガバースの世界観です。運命の番でありながら、仮想敵国の王子同士に生まれた二人が辿る数奇な運命。勢いで書いたら真っ暗に。ピリリと主張する苦さをアクセントにどうぞ。
追記。本編完結済み。後程「彼」視点を追加投稿する……かも?
さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~
遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」
戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。
周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。
「……わかりました、旦那様」
反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。
その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。
私を追い出すのはいいですけど、この家の薬作ったの全部私ですよ?
火野村志紀
恋愛
【現在書籍板1~3巻発売中】
貧乏男爵家の娘に生まれたレイフェルは、自作の薬を売ることでどうにか家計を支えていた。
妹を溺愛してばかりの両親と、我慢や勉強が嫌いな妹のために苦労を重ねていた彼女にも春かやって来る。
薬師としての腕を認められ、レオル伯アーロンの婚約者になったのだ。
アーロンのため、幸せな将来のため彼が経営する薬屋の仕事を毎日頑張っていたレイフェルだったが、「仕事ばかりの冷たい女」と屋敷の使用人からは冷遇されていた。
さらにアーロンからも一方的に婚約破棄を言い渡され、なんと妹が新しい婚約者になった。
実家からも逃げ出し、孤独の身となったレイフェルだったが……
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
婚活パーティーで、国一番の美貌の持ち主と両想いだと発覚したのだが、なにかの間違いか?
ぽんちゃん
BL
日本から異世界に落っこちた流星。
その時に助けてくれた美丈夫に、三年間片思いをしていた。
学園の卒業を目前に控え、商会を営む両親に頼み込み、婚活パーティーを開いてもらうことを決意した。
二十八でも独身のシュヴァリエ様に会うためだ。
お話出来るだけでも満足だと思っていたのに、カップル希望に流星の名前を書いてくれていて……!?
公爵家の嫡男であるシュヴァリエ様との身分差に悩む流星。
一方、シュヴァリエは、生涯独り身だと幼い頃より結婚は諦めていた。
大商会の美人で有名な息子であり、密かな想い人からのアプローチに、戸惑いの連続。
公爵夫人の座が欲しくて擦り寄って来ていると思っていたが、会話が噛み合わない。
天然なのだと思っていたが、なにかがおかしいと気付く。
容姿にコンプレックスを持つ人々が、異世界人に愛される物語。
女性は三割に満たない世界。
同性婚が当たり前。
美人な異世界人は妊娠できます。
ご都合主義。
【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~
黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる