転生少女は欲深い

白波ハクア

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第51話 新たな旅

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 エリスとの旅立ち。
 私は心から信頼する親友との旅立ちということに、内心胸をワクワクさせていた。

 それはそれは華々しい旅立ちになる。

 …………そう、思っていた時期がありました。

「……いやぁああああああ!??!!」
「うぉおおぉおおおお!!!」

 私達は今、森の中で魔物の大群に追われています。

 それはもう私もエリスも全力疾走。
 一瞬でも止まったら魔物の大群に踏み潰されて終わる。私はまだ頑丈な方なので問題はないけれど、エリスはまだ普通の人間だ。確実に死んでしまう。

 というわけで、脇目も振らず逃走を続けている。
 わざわざ木を避ける必要はない。目の前にそれが立ちはだかったら、私は神速の剣で木っ端微塵に斬り裂いて強行突破。とにかく使える技術は全て使い、どうにかして魔物の大群から逃げようと走っていた。

「どうしてこうなった! どうしてこうなったんだろうな! なぁカガミ!?」
「ごめんなさい! 二回も言わないでください! 全部私のせいです!」



 ──時は少し遡る。



 私達はこれでも国の逃亡者だ。

 私は犯罪者。エリスは国王をぶん殴った。
 二人とも相当なことをやらかしてしまっている。

 ガイおじさんなら見逃してくれるだろうと思ったけれど、万が一の場合を考えて、私達は太陽が真上に登る頃に発見した森で休息をとることにした。

 森の中を探索していると、ちょうどいい空間が広がっている場所があって、エリスはそこでキャンプの準備を、私は食料調達をとそれぞれ動き出すことにした。

 エリスの持っている『収納袋』や、私のスキル『収納』にはいくつかの食料が入っているけど、緊急で必要になった時のために取っておこうと二人で決めた。
 食べられる食料がなかった時、備蓄していた食料もないのでは困る。なので持ってきたのを食べるのは最終手段だと私も納得したためだ。

 そうして私は食料探しに飛び出し、30分くらい森の中を自由に探索していた時、それを見つけてしまった。

 それは大きな洞窟だった。
 不思議と妙な気配が奥から感じるその洞窟に、私はちょっとだけ好奇心を持ってしまった。

 闇雲に洞窟に入ったら危ない。その程度のことは私だって知っている。エリスにも無理はするなと言われていたので、私は慎重に動いた。

 剣を持って突撃するのはやめた。
 だから覚えたての魔法を使って、中に危険がないかを確認しようと思った。

 そして放ったのは、火属性の魔法だ。私は全ての属性を扱える……らしいので、その中でもロマンのある火属性を使ってみたかった。

 ──でも、そこに問題があった。
 私が魔法を使うのは、これで初めて。力加減? そんなに知りませんよ? という勢いで魔法をぶっ放してしまい、洞窟の中にいた魔物全てを驚かせ、ついでに怒らせてしまった。

 ドドドドッ! という地鳴りの後、数え切れないほどの魔物が洞窟の入り口から現れた時は、流石の私も絶叫した。



 そして──今に至るというわけだ。



「これやばいね! どうする!?」
「やばいと言っている場合か! 本当にどうするのだ!?」
「立ち向かって全部殺す!」
「立ち止まった瞬間、踏み潰されて死ぬわ!」
「ごもっともです!」

 だったらどうするか?

 逃げるしかない。

 でも逃げるにしたって無理がある。
 このまま森を抜けて走っても、魔物は付いてくるだろう。
 街に逃げ込んだら、数百体に増えてしまった魔物が流れ込んで街が壊滅する。

 この状況を私達だけでどうにかするしかない。

「──あっ!」
「なんだ! どうした!?」
「エリスやばい! この先、崖!」
「なにぃいいいい!?」

 地形を利用する何か良い手がないかなと魔法で周囲を探索していたら、このまま走り続けた先に崖があることを知った。

 しかもかなり高い。
 落ちれば流石の私も命の危険がある。

「くそっ! 右に回れ──」
「すでに囲まれてます、隊長!」
「畜生! 隊長じゃない!」
「いえっさー!」
「くそっ……! 押し寄せる魔物のせいでカガミが馬鹿になった!」
「……え、ひど……」

 この状況をテンションで押し切ろうとしているのに、その言い方は酷いんじゃないかと抗議したい。

「──って、今はそんなことどうでもいい! この状況をどうするか! カガミ考えろ!」
「私!?」
「お・ま・え・の・せいだろうが!」
しゅみまひぇんすいません!」

 この状況を打開する方法…………やっぱり真正面からぶつかって殲滅することしか考えられない。

 それだとエリスが危ないし、あの量だ。彼女を守りながら戦うことは難しい。

「崖が見えてきたぞ!」

 エリスの声にハッと我に返る。
 指差した先に、パックリと割れた大地が見えた。

「ええい! 飛ぶぞ!」
「正気!?」
「それ以外に何がある!? お前の全力で飛んで、向こう岸まで私を抱えて飛べ!」
「二回も飛べって言いました!? 普通に厳しいんですけど!」

 向こう岸まで何百メートルあると思っているんだ。

「お前、恐慌耐性持っているのだろう!? この程度の恐怖乗り越えてみせろ!」
「無茶言うね! 元がクソ雑魚メンタルだから一般人よりもちょっと恐怖に強くなって程度なんですけど!?」

 そうやって口論している間も、徐々に決断の時は迫っていた。

「ああ、もう!」

 迷っている場合ではない。
 やらなければ二人とも死ぬ!

「どうなっても文句を言わないでね!」

 私は──覚悟を決めた。
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