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20 今回もオレの視点やで!
しおりを挟む激動のゲーム展開に、客席は異例の盛り上がりを見せていた。
「あらあら。入っちゃいましたよ」
「盤面をひっくり返したか。あのDFの女、なかなかやる」
「フライト中にエンジン切るとか変態♡ でも好き♡」
上級生がそれぞれの見解を口にする横で、
「……オレならもっと素早く決められる」
豪は舌打ちをする。
軽千代側のプレイに一瞬でも動揺してしまった自分自身が許せなかった。
「戸坂赤士。掟破りも大概にせぇ。あんたの戦い方はまともじゃない」
先ほど披露したアシストは確かに目を見張るものがあった。
しかし豪の頭の中には、引ったくり犯を追う無謀な男の姿がフラッシュバックしていた。
命知らずの鉄砲玉。その荒々しい飛び方は破れかぶれの獣を彷彿とさせる。
「あんなプレイばかり続けていたら、いつか取り返しのつかんことになるで」
各プレイヤーが持ち場へと戻り、試合再開。
「第二ラウンドですね」
チップキック。
先と同じく、レイラからのスタートとなった。
試合運びも同様、三棚高専はレイラが単騎で前進。
軽千代側は睡蓮の指示で散り散りとなり、三棚のオフェンスにそれぞれマークをつける。
赤士と睡蓮はFWに、颯はMFに当たり、涙衣がレイラの迎撃に向かう。
「なんや。軽千代は全員がマークに当たっとる」
ロナは日傘の持ち手をくるくると弄びながら、
「へえ。予めパスコースを潰しておこうって作戦? さっき大慌てだったもんねー」
「だけど無策とも言えますね」
と、みさきが口を挟む。
彼女の見解はまた違っていた。
「あまりにも迂闊です。下手したらボールを持った選手にどこまでも攻め込まれてしまうのでは?」
「またまた、みさき先輩てば」
嘘冗談は彼女の十八番だ。豪は騙されまいと肩を竦めた。
「いくら無名校でもそんな阿呆なミスはしないやろ」
「んー、どうかなぁ」
突然、ロナが目を細める。
「軽千代側。特にあのキャプテンの女、マークの当たりが緩慢としてない?」
「要するに下手くそっちゅーことや」
「それならそれでいいけどさー」
納得していない様子のロナに、豪は覗き込むように首を傾げる。
「……ロナの考え過ぎかもしれないけど、まるでシュートを誘ってるみたい」
「えっ?」
豪はハッと身震いして、視線をフィールドに戻す。
「ま、まさか、んなアホな──」
ドローンカメラがゴール前に集結していく。
会場のデジタルサイネージに大きく映し出された軽千代高校のGK。
見覚えのある琥珀色の眼差しに、豪は裏返った悲鳴を上げた。
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