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7 戸坂、部活始めるって!
しおりを挟む翌日の昼休み。
日陽から取り返した生徒手帳を持って、俺は約束通り職員室を訪れた。
「ちゃんと持ってきて偉い!」
早乙女先生は相変わらずスクワットをしながら、上機嫌に手帳を受け取った。
赤ペンで二行に亘って罪状を記される。一件は先日の遅刻、もう一件は生徒手帳の未所持。
「後者はチャラになりません?」
「現行犯だからムリだ!」
「ま、そうですよね」
これで罰掃除が確定となった。
つまらないことで汚点を作ってしまったものだ。
「ああ、そうだ。先生」
ここからが本題。
俺は白々しい演技で訊ねた。
「入部届の紙もらえます?」
「おん? ……な、なにっ! 入部届!?」
早乙女先生が眉をひそめたのも無理はない。
新入部員が歓迎されるようなタイミングではないし、ましてや俺は二年生だ。
進路を考え始めなければならない時期に入部なんて、普通の行動ではないことは自覚している。
「お前部活を始めるのか!!」
「ええ、まあ」
なんとなく恥ずかしくなって頬を掻く。
「どうして急に!」
「それが信条ですから」
「お、おお……」
先生は困惑した表情のまま、机の引き出しを開いた。
「そうか、あの戸坂が部活を……」
呆然と入部届の用紙を取り出し、それから彼は今まで堪えていたかのようにぱっと明るい笑顔になった。
「戸坂ぁ! 改心してくれて先生は嬉しいぞ!」
だから俺は不良じゃないって。
「んんん素晴らしい! 新しいことに挑戦しようと思うのは良い兆候だ!」
「ど、どうも」
「先生めっちゃ応援するから! 納得のいくまで頑張ってみなさい!」
「はぁ」
思えば俺は部活動の経験がなかった。
部費とか遠征とか色々金が掛かるってのも理由の一つだが、そもそも活動自体に興味すらなかった。
だが今回は違う。
昨日、試合映像を観たのを境に、俺のスピード狂の本能が疼いて仕方がないのだ。
あの競技なら、自分の渇望を埋めてくれるかもしれない。
俺を縛る父の無念を果たせるかもしれない。
そんな気にさせてくれる試合だった。
それに費用についても部長の女が全額負担してくれると言うのだから、乗らない手はないだろう。
「ところで戸坂! いったい何部に入るんだ?」
俺は迷いなく答えた。
「フラフト部です」
「……フラフト部?」
不意に早乙女先生が筋トレを止める。
僅かな時間、沈黙が訪れた。
「……えっ? そんなもの軽千代にはないぞ」
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