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選択の時
四
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「その家は荒れ放題だった。虫は湧いてるし、物は散乱してるし、とにかくボロボロなんだよ。リビングには死体が二人……もう腐ってたけど。もしかしたらミルビーの家族なのかもしれない。けれどミルビーは彼らの前で、分からない、と呟いて、ここはどこだったっけ、と嘆いた。どうして自分がそこにいるのか分からないようだった」
ミルビーが記憶喪失になったのはそれよりも前のことだということらしい。ただ彼は、なにか信念があって殺しを続けていたのだろう。分からないと言いながらその場所に足を運んだのはきっと何か思い入れがあったに違いなかった。
「そうしてミルビーは、自殺をした。唐突に。ぼくは彼になりたくて、憧れて……欲しくて、彼の魂に入り込んだ」
私は彼らに一歩近付き、問いかけた。
「あなたの名前は?」
「さあ。覚えてな」
Xが肩を竦めた時だった。小さな声で、なにかが紡がれる。彼は口を閉じ、代わりにミルビーが口を開いたようだった。
「ユキナリ……」
ミルビーが記憶喪失になったのはそれよりも前のことだということらしい。ただ彼は、なにか信念があって殺しを続けていたのだろう。分からないと言いながらその場所に足を運んだのはきっと何か思い入れがあったに違いなかった。
「そうしてミルビーは、自殺をした。唐突に。ぼくは彼になりたくて、憧れて……欲しくて、彼の魂に入り込んだ」
私は彼らに一歩近付き、問いかけた。
「あなたの名前は?」
「さあ。覚えてな」
Xが肩を竦めた時だった。小さな声で、なにかが紡がれる。彼は口を閉じ、代わりにミルビーが口を開いたようだった。
「ユキナリ……」
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