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心に残っていたもの
三
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同じくらいの身長で、いつも着ている赤いジャージの袖を引っ張って涙を流したその子。私よりも短めに切られた髪が揺れ、両親に怒られても付けている黄色いカラーコンタクトから熱い涙が零れてしまう。その目は私を、悲しくも恨みを込めて、見据えていた。感極まった彼女は、ピンクのくまのぬいぐるみを私にぶつけた。取ろうとすると、彼女はそれを奪って走り去ってしまうのだ。
「ムロル……」
そうだ、あのぬいぐるみはムロルだった。内側でなにかが沸き起こってくる。失った大事なものがふつふつと叫んでいる。私は震える手で帽子を手に取った。その直後、思い出は咲いたのだ。
「ミロル……未絽留!」
私は帽子を突きつけ、未絽留は奇声を上げて手を離した。慌てて逃げ出そうとする彼女の手を今度は私が掴み、抱き寄せた。
葛藤ミキサーでも一瞬出てきたあの顔。父がまるで誰かを亡くしたように言っていた。ムロルが、あの子、と言っていた。ムロルに感じた懐かしい感情。それらが全て繋がる。
「ムロル……」
そうだ、あのぬいぐるみはムロルだった。内側でなにかが沸き起こってくる。失った大事なものがふつふつと叫んでいる。私は震える手で帽子を手に取った。その直後、思い出は咲いたのだ。
「ミロル……未絽留!」
私は帽子を突きつけ、未絽留は奇声を上げて手を離した。慌てて逃げ出そうとする彼女の手を今度は私が掴み、抱き寄せた。
葛藤ミキサーでも一瞬出てきたあの顔。父がまるで誰かを亡くしたように言っていた。ムロルが、あの子、と言っていた。ムロルに感じた懐かしい感情。それらが全て繋がる。
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