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お値段ゲーム
八
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自分の胸を自信ありげに叩き、騒いでいたぬいぐるみたちは、まるで息を呑む、というように恐れ、脱帽し、気付いて、ムロルに釘つけになった。
「生や死に、価値なんて見出すものじゃないわ。だってそうでしょ、私たちにこそ価値があるの。私たちは生きていないからこそそれを知ってる。忘れたの?」
ねえ、と声を発して、ムロルは女の子のぬいぐるみに近寄った。女の子はたじろいで後ずさるが、逃がさないと言わんばかりにムロルはじりじりと詰め寄る。
「今、価値がないのはあんたたちじゃない。ないものを強請って、羨んで、妬んで、醜い。ほらその証拠にもうすぐ霊になる。下のやつらと同じ、生を知ってしまった醜い悪霊にね」
女の子は頭を抱え始めると、激しく首を横に振った。
「うる、うるさ、イイイッ!」
顔を上げ、叫び声を上げれば綿が頬から、目、首と噴き出した。ぬいぐるみたちはみんな引き下がって逃げ惑う。私は壇上からそれを呆然と眺めていた。
女の子のぬいぐるみから、黒い煙が一瞬出てきた。その禍々しい色が何なのかわかってしまって、動けなくなってしまう。
「生や死に、価値なんて見出すものじゃないわ。だってそうでしょ、私たちにこそ価値があるの。私たちは生きていないからこそそれを知ってる。忘れたの?」
ねえ、と声を発して、ムロルは女の子のぬいぐるみに近寄った。女の子はたじろいで後ずさるが、逃がさないと言わんばかりにムロルはじりじりと詰め寄る。
「今、価値がないのはあんたたちじゃない。ないものを強請って、羨んで、妬んで、醜い。ほらその証拠にもうすぐ霊になる。下のやつらと同じ、生を知ってしまった醜い悪霊にね」
女の子は頭を抱え始めると、激しく首を横に振った。
「うる、うるさ、イイイッ!」
顔を上げ、叫び声を上げれば綿が頬から、目、首と噴き出した。ぬいぐるみたちはみんな引き下がって逃げ惑う。私は壇上からそれを呆然と眺めていた。
女の子のぬいぐるみから、黒い煙が一瞬出てきた。その禍々しい色が何なのかわかってしまって、動けなくなってしまう。
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