魂選塔

中釡 あゆむ

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お値段ゲーム

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「私たちにないものを受け継いだのに死んだんだよ? 命さえあれば私たちはご主人と死ぬことが出来た。死を分かち合うことも出来た。きっと一緒に成長をすることが出来た。時代が変わっても、側にいることが出来た。忘れられるなんて寂しいこと、きっとなかった。だから私たちにとっては、悪いことじゃないのっ?」


しん、と静まり返ってしまう。場の空気が変わったことを感じ取って座り直す。ぬいぐるみたちの気持ちは、あの少女に傾いていた。


「だから彼女の価値は、一円の価値もないよ。私たちが欲しかったものを、投げ捨てたんだから」


確かに、とどこかから聞こえる。おもちゃたちはみんな考え込んでいるようだった。私を見る者や、顔を見合わせる者、やっぱり価値がないと言って頷くたぬきのぬいぐるみ。


「じゃあこのゲーム、彼女には価値がないってことでいいわね?」


王女の人形が、綺麗な金の髪をなびかせて、彼らに聞いたことでみんな頷いた。私も、反論できなかった。
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