魂選塔

中釡 あゆむ

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自分のために

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そのためにはチルギやカツギに見つかり、追い出されるわけにはいかないのだ。


自分の思い出なんかいらない。最初からあるから。そのために彼らの思い出に入り込むことにした。ボクが死んだときの思い出が、誰かの中に入っているかもしれない。


そしたらそいつが犯人だ。


早速またも探しに行こうとすると、お兄さん、と話しかけられる。振り向くと中学生くらいなのか、赤いジャージ姿に制服のスカートを履いた身長の低い茶髪の女の子がいた。


「巾着袋落としたよ。これがないと思い出買えないんだよ」


「ああ、ありがとう!」


差し出された巾着袋を受け取ろうとした。ところが彼女はその巾着袋を離そうとせず、ボクをジッと眺めている。ボクは首をかしげた。


「ね、お兄さん。私も、消してよ」


女の子は、口元を不器用に歪めて笑った。


見つかった。


心の中で警笛音が、鳴り響いた。
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