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魂選塔
二
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俺より身長の高い魂は高々にそう言った。ここの人たちとは違い、陽気な男のようだった。
「まあ、いいけど。といっても、俺、死ぬ前どんな風に生きてたかとか覚えてないんだけれど」
周りが俺と男に視線を集めてきているのに気が付き、話すにつれて声が小さくなっていくのを感じた。しかし男は元々声が大きいのか高らかに、ハハハ、と笑い声を上げたのだった。
「そんなのボクもそうさ! きっとここの人たちはみんなそうだろう。それよりもこうして話してくれたのは君が初めてだよ、ここの人たちはみんな陰気臭いからさ」
「ちょ、ちょっと! 静かにしろっ」
慌てて男の口辺りを抑え、肩を組んで同じ高さにしてから、すみません、と魂たちに謝る。男はようやく彼らが厳しい視線を送ってきていたことに気付いたらしい。
「角の立つようなことを言うなよ」
「あら……みんなご立腹?」
「そりゃそうだろ」
ため息をこぼし、男を離した。男は手を差し伸べてきた。何だろう、彼を見つめると首を少しだけ傾げて手を動かして催促してくる。ようやく意図がわかり、俺はその手を取った。
「ボクはミルビー」
「俺はハルトだ。ミルビーって変わった名前だな、元は外国人か?」
「さあ」
大げさに肩を竦めてきたせいで少しだけ笑ってしまう。変な奴だが悪い奴ではないのだろう。安堵していると「ここに来た時のことを覚えてる?」と問いかけられる。
「まあ、いいけど。といっても、俺、死ぬ前どんな風に生きてたかとか覚えてないんだけれど」
周りが俺と男に視線を集めてきているのに気が付き、話すにつれて声が小さくなっていくのを感じた。しかし男は元々声が大きいのか高らかに、ハハハ、と笑い声を上げたのだった。
「そんなのボクもそうさ! きっとここの人たちはみんなそうだろう。それよりもこうして話してくれたのは君が初めてだよ、ここの人たちはみんな陰気臭いからさ」
「ちょ、ちょっと! 静かにしろっ」
慌てて男の口辺りを抑え、肩を組んで同じ高さにしてから、すみません、と魂たちに謝る。男はようやく彼らが厳しい視線を送ってきていたことに気付いたらしい。
「角の立つようなことを言うなよ」
「あら……みんなご立腹?」
「そりゃそうだろ」
ため息をこぼし、男を離した。男は手を差し伸べてきた。何だろう、彼を見つめると首を少しだけ傾げて手を動かして催促してくる。ようやく意図がわかり、俺はその手を取った。
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「俺はハルトだ。ミルビーって変わった名前だな、元は外国人か?」
「さあ」
大げさに肩を竦めてきたせいで少しだけ笑ってしまう。変な奴だが悪い奴ではないのだろう。安堵していると「ここに来た時のことを覚えてる?」と問いかけられる。
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