22 / 237
第1章 宿敵の家の当主を妻に貰うまで
第22話 アークゲート家の屋敷へ
しおりを挟む
扉の敷居をまたぐように歩けば、まるで冬に室内から外に出たような肌寒さを感じた。シアの言う通りゲートを越えればそこはもう北の街だった。腕に持っていた上着を羽織る。その際に離れたシアの手が少しだけ名残惜しかった。
俺が上着を着終えるのと同時に、金の光の残滓を残しながらゲートは閉じる。シアは俺の方を向いて手を背中で組み、身を屈めて覗き込む。
「ようこそノヴァさん、アークゲート家へ」
「お……おお……」
最初の「お」は笑顔のシアへの返事。そして続いての「おお」は彼女の方を向いて、その後ろにある大きさと広さに気づいたからだ。ゲートを繋いでくれた場所は屋敷の敷地の中で、さらに屋敷の目の前だったために、右を向くだけでアークゲート家が確認できた。実家の屋敷もかなり大きいけど、アークゲート家の屋敷はそれよりもさらに巨大かつ広大だった。しかも建築の文化が違うらしく、形が少し異なっているのも興味が湧いた。
「気に入って頂けましたか?」
「ああ、すごいなこれは……外観だけでここまですごいと、中がどうなっているのかも気になるな」
年甲斐もなくワクワクしてしまうけど、大きな建物を見ると中が気になってしまうのは仕方ないと俺は思う。シアが微笑ましそうにしているのが少し恥ずかしいものの、興奮は抑えられなかった。
「では姉妹を呼ぶのは少しだけ後にして、屋敷の中を案内しましょうか」
「そういえば聞いていなかったけど、シアの姉妹って何人いるんだ?」
確か中央の帝都で初めて出会ったときは、「お姉ちゃんたち」と言っていた筈だ。つまり最低二人はいるはずで。
「上に姉が一人と、ノヴァさんが先日であったオーロラで、合計二人ですね」
けど、シアの口から出てきた姉の数は一人だった。俺の記憶と違うけど、シアはいつも通りの様子だし、嘘をつくようなことでもないように思える。俺の覚え違いだったのかもしれない。
「叔母や従妹はいますが、別の屋敷に住んでいますし、今いるのは二人だけですね」
なるほど、多分従妹の事をお姉さんとして呼んでいたのかもしれないな。
「あ、オーラは呼んできましょうか。彼女もノヴァさんに会いたがっていましたから」
そう言ってシアは何らかの魔法を行使したのだと思う。すぐに屋敷の中からメイドが駆け足で出てきた。入口の低い階段を駆け下りて、彼女は俺達の元まで駆けてくる。息一つも上がっていないメイドに対して、シアは当主らしく命令した。
「オーラを呼んできてくれますか? ノヴァさんが来たと伝えてくれれば、飛んでくるはずです」
「は、はい! かしこまりました!」
シアに対して頭を深く下げ、間髪を入れずに俺にも深く頭を下げるメイド。動きは機敏で洗練されているけど、どこか鬼気迫る様子だ。俺の実家のメイドのように誰かの陰口を言っている様子は想像もつかなかった。
「あぁ、あとユティには1時間後に応接間に来るように伝えてください」
「はい!」
去ろうとしているメイドを呼び止めてシアが追加で指示を出す。ユティというのがおそらくはシアの姉の名前なのだろう。
あまり詳しい話は聞いていないが、少なくとも俺はシアの姉に対して良い感情は持っていない。自分の兄上があんな感じだから、どうしても乱暴で粗雑な姉の像が出来上がっている。先代と共におそらくは幼き日のシアを傷つけていた可能性だってある。
「ノヴァさん」
横から声をかけられ、俺はハッとする。慌てて首を動かせば、穏やかな笑みを浮かべたシアがいた。
「中に入りましょうか。外は少し寒いですし」
「ああ、そうだな」
シアに導かれるように、俺は屋敷の中へと入る。彼女の背中はなぜかは分からないけど嬉しそうだった。
俺が上着を着終えるのと同時に、金の光の残滓を残しながらゲートは閉じる。シアは俺の方を向いて手を背中で組み、身を屈めて覗き込む。
「ようこそノヴァさん、アークゲート家へ」
「お……おお……」
最初の「お」は笑顔のシアへの返事。そして続いての「おお」は彼女の方を向いて、その後ろにある大きさと広さに気づいたからだ。ゲートを繋いでくれた場所は屋敷の敷地の中で、さらに屋敷の目の前だったために、右を向くだけでアークゲート家が確認できた。実家の屋敷もかなり大きいけど、アークゲート家の屋敷はそれよりもさらに巨大かつ広大だった。しかも建築の文化が違うらしく、形が少し異なっているのも興味が湧いた。
「気に入って頂けましたか?」
「ああ、すごいなこれは……外観だけでここまですごいと、中がどうなっているのかも気になるな」
年甲斐もなくワクワクしてしまうけど、大きな建物を見ると中が気になってしまうのは仕方ないと俺は思う。シアが微笑ましそうにしているのが少し恥ずかしいものの、興奮は抑えられなかった。
「では姉妹を呼ぶのは少しだけ後にして、屋敷の中を案内しましょうか」
「そういえば聞いていなかったけど、シアの姉妹って何人いるんだ?」
確か中央の帝都で初めて出会ったときは、「お姉ちゃんたち」と言っていた筈だ。つまり最低二人はいるはずで。
「上に姉が一人と、ノヴァさんが先日であったオーロラで、合計二人ですね」
けど、シアの口から出てきた姉の数は一人だった。俺の記憶と違うけど、シアはいつも通りの様子だし、嘘をつくようなことでもないように思える。俺の覚え違いだったのかもしれない。
「叔母や従妹はいますが、別の屋敷に住んでいますし、今いるのは二人だけですね」
なるほど、多分従妹の事をお姉さんとして呼んでいたのかもしれないな。
「あ、オーラは呼んできましょうか。彼女もノヴァさんに会いたがっていましたから」
そう言ってシアは何らかの魔法を行使したのだと思う。すぐに屋敷の中からメイドが駆け足で出てきた。入口の低い階段を駆け下りて、彼女は俺達の元まで駆けてくる。息一つも上がっていないメイドに対して、シアは当主らしく命令した。
「オーラを呼んできてくれますか? ノヴァさんが来たと伝えてくれれば、飛んでくるはずです」
「は、はい! かしこまりました!」
シアに対して頭を深く下げ、間髪を入れずに俺にも深く頭を下げるメイド。動きは機敏で洗練されているけど、どこか鬼気迫る様子だ。俺の実家のメイドのように誰かの陰口を言っている様子は想像もつかなかった。
「あぁ、あとユティには1時間後に応接間に来るように伝えてください」
「はい!」
去ろうとしているメイドを呼び止めてシアが追加で指示を出す。ユティというのがおそらくはシアの姉の名前なのだろう。
あまり詳しい話は聞いていないが、少なくとも俺はシアの姉に対して良い感情は持っていない。自分の兄上があんな感じだから、どうしても乱暴で粗雑な姉の像が出来上がっている。先代と共におそらくは幼き日のシアを傷つけていた可能性だってある。
「ノヴァさん」
横から声をかけられ、俺はハッとする。慌てて首を動かせば、穏やかな笑みを浮かべたシアがいた。
「中に入りましょうか。外は少し寒いですし」
「ああ、そうだな」
シアに導かれるように、俺は屋敷の中へと入る。彼女の背中はなぜかは分からないけど嬉しそうだった。
120
お気に入りに追加
1,598
あなたにおすすめの小説
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編3が完結しました!(2024.8.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話
水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。
相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。
義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。
陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。
しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる