6 / 8
6
しおりを挟む男の嫁? やだね! キモキモキモ!
それが、この世界での俺の一番の恐れだった。なのになんだ。安曇野が、俺を好きで? この世界でもそうで? さらに、結婚、すると?
「あ、あの……やっぱさ、無理じゃね……ホラ、友達、だったじゃん? それに俺、庶民の子だし……王様にはそれなりのお相手……」
弱弱しく訴えたけど、さらっとスルーされた。何回も、ちょっとずつ声大きくして言い続けたら、最終こう返された。
「俺は誰?」
王様です。としか言えなかった俺は、本当に翌日、くらくらしながらまたとんでもない人数の人を見下ろしてた。
「我々は前世から約束された仲であった! 皆、祝福せよ!」
ものすごく良い発声で安曇野王は宣言し、たくさんの拍手が広場を包んだ。俺の両親と兄貴は、後ろで涙を拭っている。無論、喜びの涙だ。超玉の輿だもんな。当たり前だ。この中で俺の結婚に反対してるのが、唯一俺が避けがちだったマックスだけってのが皮肉なもんだ。
「……」
「……」
そして、その「時」が来る。俺的にはまだ一縷の希望を抱いてたんだけど、どうやら浮かれた「初夜~♪」が今から行われるらしい。幾層もの宝石の粒で清められた水で洗われた俺は、真っ裸でベッドの上待機中。ちんこは股に挟んだ。だって、周りに何人も人居るんだぜ? ありえんありえん。この中でするのか? 安曇野と? アレを? アレ? アレって何だ? 男同士のアレ?
──尻!
前世の知識が俺を殴りつける。さっき恐ろしい程洗わされた肛門が、ぎゅっと締まるのが分かる。何物も、ここに入ってくれるな、とばかりに。畜生、今更だけど、前世の常識いらん。それさえなければ、俺は何だか分からないけど王様に愛されて、この世界では常識の男同士セッ……に挑めただろうに。
「うう……」
怖い。マジ怖い。安曇野のこと怖いと思ったこと無かったけど……あ、いや、あったわ。俺を痴漢した奴の腕捻って脱臼させたときの眼、怖かったわ。
「王様がお着きになりました。初の夜の儀、これより始めるものとします」
恭しい神官の声。折れるぐらい下向いた俺の顎。その顎が、知った指に持ち上げられる。
「ファビアン・ルー。今宵より、我が妻となる者。余の名を呼べ」
「……あ、安曇野……あの、」
「違う」
「……イルム4世……」
「左様。事は成った」
事は成った? え? まじっすか! 安曇野王が人払いをして、小さく万歳しかけた俺だったけど、違ってた。顎から安曇野の指は離れず、ツ、と唇まで辿り、むにむに、つまんでほぐしたからだ。
「そんな固くなるなよ。大丈夫。俺、「いつか万が一さくらとそういう仲になれた時シミュレーション」しまくって抜いてたからさ」
「……!」
安曇野の完璧な顔が近づいて来る。待って、俺、俺ね。
「キス、したことない……」
3
お気に入りに追加
186
あなたにおすすめの小説
絶滅危惧種の俺様王子に婚約を突きつけられた小物ですが
古森きり
BL
前世、腐男子サラリーマンである俺、ホノカ・ルトソーは”女は王族だけ”という特殊な異世界『ゼブンス・デェ・フェ』に転生した。
女と結婚し、女と子どもを残せるのは伯爵家以上の男だけ。
平民と伯爵家以下の男は、同家格の男と結婚してうなじを噛まれた側が子宮を体内で生成して子どもを産むように進化する。
そんな常識を聞いた時は「は?」と宇宙猫になった。
いや、だって、そんなことある?
あぶれたモブの運命が過酷すぎん?
――言いたいことはたくさんあるが、どうせモブなので流れに身を任せようと思っていたところ王女殿下の誕生日お披露目パーティーで第二王子エルン殿下にキスされてしまい――!
BLoveさん、カクヨム、アルファポリス、小説家になろうに掲載。
魔王の嫁になった件!
海里
BL
ある日突然、「今日から魔王の嫁ね」と父親に言われた主人公は魔王城に置き去りにされ、仕方なく城内に入り中を探索することにした。
謁見室のような場所で赤ん坊の泣き声が聞こえ、近付くと玉座に赤ん坊が横たわって泣いていた。
抱き上げてみるが泣き止まず、仕方なくミルクを探しに戻るが赤ん坊は泣き疲れて眠ってしまう。
客室のような場所で自分も赤ん坊と一緒に眠る。次に目覚めた時、赤ん坊の姿はなくて代わりに赤ん坊の面影を残した子どもが居て――……。
イケメン魔王×三白眼の花嫁
受けの一人称です。
魔王は青年の大きさまであっという間に成長します。
エロはさらっとしています。書き方については研究中です。
割とコメディっぽい、かな?
※ムーンライトノベルズ様にも投稿しています。
異世界に来た俺の話
四季織
BL
目が覚めたら、知らない山の中で寝ていた。拾ってくれたのはオルという無口な大男で、オルとお母さんとの生活は異世界というよりサバイバルで原始的な生活だった。
※無口な大男×後ろ向きな平凡
※同性婚の描写があります。R18はぬるめです。
推し様の幼少期が天使過ぎて、意地悪な義兄をやらずに可愛がってたら…彼に愛されました。
櫻坂 真紀
BL
死んでしまった俺は、大好きなBLゲームの悪役令息に転生を果たした。
でもこのキャラ、大好きな推し様を虐め、嫌われる意地悪な義兄じゃ……!?
そして俺の前に現れた、幼少期の推し様。
その子が余りに可愛くて、天使過ぎて……俺、とても意地悪なんか出来ない!
なので、全力で可愛がる事にします!
すると、推し様……弟も、俺を大好きになってくれて──?
【全28話で完結しました。R18のお話には※が付けてあります。】
【完結】雨を待つ隠れ家
エウラ
BL
VRMMO 『Free Fantasy online』通称FFOのログイン中に、異世界召喚された桜庭六花。しかし、それはその異世界では禁忌魔法で欠陥もあり、魂だけが召喚された為、見かねた異世界の神が急遽アバターをかたどった身体を創って魂を容れたが、馴染む前に召喚陣に転移してしまう。
結果、隷属の首輪で奴隷として生きることになり・・・。
主人公の待遇はかなり酷いです。(身体的にも精神的にも辛い)
後に救い出され、溺愛されてハッピーエンド予定。
設定が仕事しませんでした。全員キャラが暴走。ノリと勢いで書いてるので、それでもよかったら読んで下さい。
番外編を追加していましたが、長くなって収拾つかなくなりそうなのでこちらは完結にします。
読んでくださってありがとう御座いました。
別タイトルで番外編を書く予定です。
異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。
やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。
昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと?
前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。
*ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。
*フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。
*男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。
【完結】深窓の公爵令息は溺愛される~何故か周囲にエロが溢れてる~
芯夜
BL
バンホーテン公爵家に生まれたエディフィール。
彼は生まれつき身体が弱かった。
原因不明の病気への特効薬。
それはまさかの母乳!?
次は唾液……。
変態街道まっしぐらなエディフィールは健康的で一般的な生活を手に入れるため、主治医と共に病気の研究を進めながら、周囲に助けられながら日常生活を送っていく。
前世の一般男性の常識は全く通じない。
同性婚あり、赤ちゃんは胎児ではなく卵生、男女ともに妊娠(産卵)可能な世界で、エディフィールは生涯の伴侶を手に入れた。
※一括公開のため本編完結済み。
番外編というかオマケを書くかは未定。
《World name:ネスト(巣)》
※短編を書きたくて書いてみたお話です。
個人的な好みはもっとしっかりと人物描写のある長編なので、完結迄盛り込みたい要素を出来るだけわかりやすく盛り込んだつもりですが、展開が早く感じる方もいらっしゃるかもしれません。
こちらを書いて分かったのは、自分が書くとショートショートはプロットや設定資料のようになってしまうんだろうなという結果だけでした(笑)
※内容や設定はお気に入りなので、需要があるかは置いておいて、もしかしたら増量版として書き直す日がくるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる