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翌日から、さっそく僕はシリル君と一緒に学生食堂でごはんを食べたり、移動授業の時も一緒に移動したり、休憩時間お互い好きなことや授業で気になっていることを話し合ったりしていた。
基本僕と一緒に行動しているキーランは、シリル君を見て普通に対応していた。
キーランは悪魔ではあるが、基本小さな子供には優しい傾向がある。
なのでキーランも僕と同様、シリル君を皇子様というより普通の学生として接しているようだった。
ネヴィルの場合はシリル君を見て「おやおや、これは……」と意味深な言葉を呟いて、そのまま楽しいものを見付けたといった感じで微笑んで、僕とキーランほどには会話をする事もなく過ごしている。
そして何日か一緒に過ごして分かってきたことがあった。
城から一緒に学園に付いてきたシリル君の従者の少年は、従者とは名ばかりで普段から全くシリル君と一緒にはおらず、どちらかというとシリル君を常に馬鹿にした態度を取ってる。
そして常にシリル君のお兄さんである第五皇子の側にいて、媚を売るのに忙しそうだった。
自分の主人を置いてそんなのでいいのかお前は? とは思ったんだけど、シリル君を見下した態度を取ったり、嫌な言い方をして周りの空気を悪くする奴なんで、最終的にはシリル君の側にいない方がいいと結論付けた。
移動教室の時にシリル君、僕、ネヴィル、キーランの四人で廊下を移動していると、たまに第五皇子とシリル君の従者を含めたその取り巻き達がすれ違う時がある。
すれ違う時にシリル君を見てクスクス笑い、それから少し離れたところで小さな声でヒソヒソと喋った後に、決まってドッと笑いだす。
皇子なのにこんな子供っぽいことをするのかとちょっと以上に幻滅したけど、その反面シリル君は最初の頃とは違って、何を言われても顔を下げずに前を向いて歩いていた。
聞けば、今までは食事をしようとしたら床に皿をワザと落とされたり、シリル君の分だけ用意されていないことや、酷いと毒を盛られることもあったらしい。
その話を聞いて、食事に毒を盛るなんて絶対に許せない、と怒るのがキーランだった。
子供が成長するのに大切な食事に毒を入れるなんてとプリプリ怒りながら、シリル君になにかあったら私がごはんを作ってあげるとまで言っていた。
キーランが悪魔だと知らないシリル君は、「ありがとう、キーランさん」と嬉しそうに笑っている。
「キーランが作る食事は凄く美味しんだよ。あとお菓子作りも上手なんだ」
「本当? じゃあ……いつかキーランさんが作るお菓子を食べてみたいな」
「任せな! おいしいお菓子を作ってあげるからさ」
シリル君はキーランの言葉にありがとうと言いながら、僕達と一緒に行動することによってそういう悪戯や危険もないから、ゆっくり安心してごはんが食べられるんだと笑う。
この笑顔を守りたいと、僕とキーランはお互い顔を見合わせて頷き合ったのだった。
「それにしても、この学園には悪魔と契約している子供が数名いるようですね」
「え、そうなの?」
夕方、学生寮の自室で本を読みながらまったりしていたら、ベッドの上でゴロゴロしていたネヴィルが思い出したといった風に話し出す。
「どのような経緯で契約したかは分かりませんが、人間にしてはそれなりに力があるようですが、等級のかなり低い悪魔と契約しているみたいです」
「え、じゃあネヴィルが悪魔だって、その召喚魔から召喚主の子にバレちゃうんじゃ……」
僕がそう言えば、それはないとネヴィルとキーランが同時に首を振る。
椅子に座りながら使い魔達と遊んでいたキーランが、等級のかなり低い悪魔には序列持ちの悪魔が姿を偽っている――悪魔だと隠して、人間として過ごしているのを見破れるほどの力はないんだと教えてくれた。
それにもしバレたとしても、自分の存在を消されるかもしれない危険を冒してまで召喚主に伝えることはないらしい。
そういうところは悪魔って感じ。
僕はなるべく学園生活は穏やか~に過ごしたいから、二人に悪魔だとバレないように徹底して欲しいというのと、もしも召喚魔や召喚使と契約している学生に絡まれたとしても、なるべく相手にはしないでとも伝えた。
本気を出さなくても序列持ちの悪魔であれば、等級の低い召喚魔や召喚使と契約している人間の子供をどうにかしようと思えば簡単なことだろうし、もしそうなった場合大問題になる可能性が高いからね。
二人はお互い一瞬目を見合わせてから、分かったと頷いてくれたのだった。
基本僕と一緒に行動しているキーランは、シリル君を見て普通に対応していた。
キーランは悪魔ではあるが、基本小さな子供には優しい傾向がある。
なのでキーランも僕と同様、シリル君を皇子様というより普通の学生として接しているようだった。
ネヴィルの場合はシリル君を見て「おやおや、これは……」と意味深な言葉を呟いて、そのまま楽しいものを見付けたといった感じで微笑んで、僕とキーランほどには会話をする事もなく過ごしている。
そして何日か一緒に過ごして分かってきたことがあった。
城から一緒に学園に付いてきたシリル君の従者の少年は、従者とは名ばかりで普段から全くシリル君と一緒にはおらず、どちらかというとシリル君を常に馬鹿にした態度を取ってる。
そして常にシリル君のお兄さんである第五皇子の側にいて、媚を売るのに忙しそうだった。
自分の主人を置いてそんなのでいいのかお前は? とは思ったんだけど、シリル君を見下した態度を取ったり、嫌な言い方をして周りの空気を悪くする奴なんで、最終的にはシリル君の側にいない方がいいと結論付けた。
移動教室の時にシリル君、僕、ネヴィル、キーランの四人で廊下を移動していると、たまに第五皇子とシリル君の従者を含めたその取り巻き達がすれ違う時がある。
すれ違う時にシリル君を見てクスクス笑い、それから少し離れたところで小さな声でヒソヒソと喋った後に、決まってドッと笑いだす。
皇子なのにこんな子供っぽいことをするのかとちょっと以上に幻滅したけど、その反面シリル君は最初の頃とは違って、何を言われても顔を下げずに前を向いて歩いていた。
聞けば、今までは食事をしようとしたら床に皿をワザと落とされたり、シリル君の分だけ用意されていないことや、酷いと毒を盛られることもあったらしい。
その話を聞いて、食事に毒を盛るなんて絶対に許せない、と怒るのがキーランだった。
子供が成長するのに大切な食事に毒を入れるなんてとプリプリ怒りながら、シリル君になにかあったら私がごはんを作ってあげるとまで言っていた。
キーランが悪魔だと知らないシリル君は、「ありがとう、キーランさん」と嬉しそうに笑っている。
「キーランが作る食事は凄く美味しんだよ。あとお菓子作りも上手なんだ」
「本当? じゃあ……いつかキーランさんが作るお菓子を食べてみたいな」
「任せな! おいしいお菓子を作ってあげるからさ」
シリル君はキーランの言葉にありがとうと言いながら、僕達と一緒に行動することによってそういう悪戯や危険もないから、ゆっくり安心してごはんが食べられるんだと笑う。
この笑顔を守りたいと、僕とキーランはお互い顔を見合わせて頷き合ったのだった。
「それにしても、この学園には悪魔と契約している子供が数名いるようですね」
「え、そうなの?」
夕方、学生寮の自室で本を読みながらまったりしていたら、ベッドの上でゴロゴロしていたネヴィルが思い出したといった風に話し出す。
「どのような経緯で契約したかは分かりませんが、人間にしてはそれなりに力があるようですが、等級のかなり低い悪魔と契約しているみたいです」
「え、じゃあネヴィルが悪魔だって、その召喚魔から召喚主の子にバレちゃうんじゃ……」
僕がそう言えば、それはないとネヴィルとキーランが同時に首を振る。
椅子に座りながら使い魔達と遊んでいたキーランが、等級のかなり低い悪魔には序列持ちの悪魔が姿を偽っている――悪魔だと隠して、人間として過ごしているのを見破れるほどの力はないんだと教えてくれた。
それにもしバレたとしても、自分の存在を消されるかもしれない危険を冒してまで召喚主に伝えることはないらしい。
そういうところは悪魔って感じ。
僕はなるべく学園生活は穏やか~に過ごしたいから、二人に悪魔だとバレないように徹底して欲しいというのと、もしも召喚魔や召喚使と契約している学生に絡まれたとしても、なるべく相手にはしないでとも伝えた。
本気を出さなくても序列持ちの悪魔であれば、等級の低い召喚魔や召喚使と契約している人間の子供をどうにかしようと思えば簡単なことだろうし、もしそうなった場合大問題になる可能性が高いからね。
二人はお互い一瞬目を見合わせてから、分かったと頷いてくれたのだった。
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