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ネヴィルの魔力が増えているらしい

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 僕達は家の中に招いてもらうと、まずは食事をしようと豪華な昼食を振る舞われた。 

 使い魔達にはちょっと僕の陰の中で待機しててもらい、メルヴィン先輩とリッカルド先輩のご家族と僕達で、大きな食卓テーブルを囲んで談話しながら食事をしていた。
 最初はちょっとテーブルマナーとか忘れかけてて緊張していたけど、先輩達と楽しく話せている内に緊張も解れ、楽しく食事をすることが出来た。
 今僕達が住んでいる国と、帝国では使われる調味料が若干違う。
 貴族料理だとは言え、久しぶりに食べ慣れた味付けに顔が綻ぶ。
 それから先輩と奥様方、お子さん達など皆で今までの出来事を話し合ったりして、楽しい時間を過ごしたのだった。


「リアム、良ければ少し聞きたいことがあるんだが……」

 食後のデザートを食べ終えた辺りでリッカルド先輩にそう言われたと思ったら、先輩達の奥様やお子さん達が目を見合わせてから静かに立って部屋を出て行く。
 なんの話だろうと思いながら先輩達を見ていると、リッカルド先輩がまず口を開いた。

「もしかしてだが……リアム、使役魔が増えていないか?」
「え? はい、増えました。キーランって言う召喚魔なんですが……よく気付きましたね」

 ネヴィルの存在は先輩達に教えていたから知っているけど、キーランのことはまだ伝えていなかったから驚いた。
 先輩達の話によれば、先輩達の召喚使が新たな悪魔の存在を知らせてきたらしい。
 かなり強い悪魔だから、この屋敷に足を踏み入れた瞬間に召喚使達が気付いたようだった。

 なんでも僕の召喚魔であるネヴィルについて先輩達が召喚した天使達が言うには、以前僕がこの邸宅を出た時より『力』が微量ではあるが増えている――強くなっていると警告したらしい。

「え? そうなのネヴィル?」と腰のベルトにぶら下げているネヴィルに問えば、ネヴィルは全く答えない。
 ベルト部分にぶら下がっている人形を掴んでブンブン振っても反応なし。
 これは……都合が悪いから話せない振りをしてるだけでしょ。
 それなりに長い付き合いだし、なんとなく分かるんだよね。
 もしかしてキーランも強くなっているのかな? と聞けば、キーランについては初めて会うので分からないらしい。

 先輩達が自分達の天使に聞いた話によると、階級持ちの天使や悪魔は元々が桁違いの力を持っている存在なので、ちょっとやそっとのことでは『力』が増えることがないんだとか。

 だから階級が入れ替わることは滅多になく、悪魔の力が増える時は『階級をかけた戦い』で勝ち上がり、相手の力を奪う時くらいなんだって。
 でも、ネヴィルが力を付けるようなことなんて特になにもしてない。
 僕と一緒にダンジョン攻略に行くか、家で自由気ままに過ごしているところしか見てないんだけどな……
 それなのに、なんで力が増えているんだろう? と首を傾げるしかなかった。

 そんな話を終えた後は、僕がこの邸宅にいた頃の昔話なんかして話に花を咲かせていた。

 どうやら先輩達は僕がまた魔法の研究かなにかで失敗して子供の姿に戻ってしまったのだとご家族の皆様に伝えていたらしく、快く迎え入れてくれたのだった。
 食事の席に小さな子供もいると思っていたら、先輩達のお孫さん達もいたらしい。
 リッカルド先輩には男の子と女の子、メルヴィン先輩には男の子二人のお孫さんなんだって。
 メルヴィン先輩のお孫さんはまだ小さいけど、リッカルド先輩のお孫さん達は今年学園に入学するとのこと。

 学園に入学か~、懐かしいな。と思っていたら、リッカルド先輩が口を開く。

「なぁ、リアム」
「何ですか?」
「お前、今は何をしているんだ?」
「子供になってしまうと、仕事もなにも出来ないでしょう?」

 リッカルド先輩とメルヴィン先輩は、幼くなった僕を見て心配そうな表情をする。

「まぁ……この年齢に戻ってしまうと仕事は出来ないですね」

 結構前に子供の姿に戻った時は、やることがなくて暇だから学校に通ってみたりしたんだけど……一度社会人を経験していると、小さな子供と一緒に分かり切った内容の勉強をするのは簡単過ぎて逆に辛かった。
 もちろん、自分が知らない国の文字や生活様式、常識、それに歴史などを学ぶ点においては大いに役立ったし、楽しかったとも言える。
 だけどまた学校に行きたいかと聞かれたら……もういいかなぁ~と首を横に振ってしまう。
 僕の話をふむふむと首を振りながら聞いていた先輩達は、「じゃあ、学園に入学するのはどうだ?」と聞いてきた。

「学園……にですか?」
「あぁ。学園だと五年に一度は教科書の内容も魔法も新しい情報に書き換えられているし、そろそろ忘れている貴族の礼儀作法もまた学び直せるぞ?」

 どうやら昼食時のテーブルマナーが微妙だったのを、ちゃんと見られていたらしい。

「それに我々の孫達も学園に二人入学することになっているのと、皇族も入学する予定だと聞いているので……楽しい学園生活が送れるかもしれませんよ?」
「皇族がいる学園生活ですか……ははっ、懐かしいですね」

 女神から祝福という『呪い』を受けることになったあの時の試験は、時が経ってもなお鮮明に思い出すことができる。
 まぁ、やることもなくて暇を持て余すよりはいいのかもしれないな。

「それじゃあ、学園に行ってみようかな」

 その一言で、第二の学園生活がスタートすることが決まったのだった。
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