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久々に先輩達の元へ

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 それからまた時が経ち――

 キーランが僕達の仲間になってから、何か変化があったかと言うと……思ったほどの変化は全くなかった。
 ネヴィルが面倒臭がって付き合ってくれないようなダンジョン攻略にも率先して付き合ってくれるので、そういうところは結構助かっている。
 ただ、怪我をしないようにとか、風邪を引かないようにとか、ちょっと過保護過ぎるんじゃないだろうか? ってくらい気遣いが凄い。

 つい最近の出来事では、ウェルドがいろんなところで作ったであろう敵に、僕が攫われて暗殺された時が酷かった。

 凄い怒り狂って暴走したキーランを止めるのに一苦労した。
 別に殺されたとしても直ぐに生き返るから大丈夫だと宥めていたんだけど、なかなか怒りが収まらず、あの時はほんっとうに大変だったよ……
 僕が攫われる原因となったウェルドもかなり怒られていたっけ。
 そんな事件によって、ようやく成人くりまで成長したのにまた子供の姿に戻ってしまった頃に、一通の手紙が我が家に届く。

 赤い封蝋に描かれた紋様はウォーカー家が使用しているもので、差出人の名前はもちろんメルヴィン先輩だった。

 メルヴィン先輩やリッカルド先輩には、僕が住んでいる場所をちゃんと教えていて、ちょくちょく先輩達とは手紙のやり取りをしてる。
 いつもは奥様や子供達の話だったり、自分達が歳を取った~的な内容が書かれているんだけど、今回の手紙には「一度顔を見せに帰ってこい」と書かれていた。

 確かに先輩の家を出てから一度も戻ってないし、数日前にダンジョンの罠にはまってまた死んでしまって子供の姿に戻っているし、この姿であれば先輩達の子供さん達だって見覚えがあるはずだから、久々に顔を出すのもいいのかもしれない。
 それに新しく入ったキーランや使い魔であるフォールティアとエルピスを紹介出来るいい機会だし。

 ウェルドは手が離せない仕事が入っているから残るとのことだったので、ネヴィルとキーランの三人で先輩の家へ行くことにしたのだった。


 馬車で移動するのは時間がかかるので、先輩には先に手紙を送って行く日にちなどを伝えておき、当日ネヴィルの魔法で直接先輩の邸宅へと移動することにした。
 ウェルドが起こした事業の内の一つに、国の特産物の果物を使ったケーキを販売するお店があり、今では貴族の間で大人気になったお店がある。
 僕はウェルドにお願いして、そのお店で人気のケーキを数種類用意してもらって、お土産に持っていくことにした。
 ケーキは奥様達が大好きだったし、意外とリッカルド先輩も甘いモノが大好きだから喜ぶはず!
 それ以外の物も用意しつつ、ネヴィルの魔法を使って先輩のお家へと移動すると――瞬き一つする間に僕達は自宅から綺麗な花々が咲き誇る庭園へと立っていた。

 ちなみに、僕以外の悪魔が二人もいるのは流石に先輩達以外のご家族が驚くだろうから、ネヴィルとキーランの二人には人形の姿になってもらうことにして、腰のベルトにぶら下げている。

「あれ? まだ誰もいないや」

 移動してから辺りを見回してみても、誰もいない。
 先輩に送った手紙には、ちゃんと時刻と移動先を書いていたんだけど……
 まずは邸宅の方へ歩いて行こうと歩き出そうとしたその時、「いたーっ!」という叫び声が聞こえて、肩がビクーッと跳ねた。

 恐る恐る声がした方へ振り向けば、そこには僕よりも幼い感じの子が二人立っていた。

 こちらを興味津々というような表情で見ていて、僕は見知らぬ顔の子達の登場にビックリした。。
 この邸宅では初めて見る顔で、先輩達の親戚関係の子達かな? と思っていると――子供達は後ろを振り向いて「おじい様ー! 見付けましたぁ!」「いました!」と同時に叫ぶ。
 子供達が見ている方へ僕も視線を向けると、そこには僕が最後に見た時よりさらに齢を重ねた先輩達と、二人の奥様方がこちらへ向かって来るのが見えた。

「やぁ、リアム君。久しぶりだね」
「リアム……お前はビックリするくらい変わってないな」
「先輩達、ご無沙汰しております」

 十三歳の姿をしている僕に反し、先輩達は記憶にある姿よりも更に年齢を重ねていたが、足腰はまだまだしっかりしているようだ。

 ただ、メルヴィン先輩は杖をついていた。
 僕が頭を下げると、むさ苦しい挨拶はいらないと笑われる。
 そして、先輩達の近くにいる子供達を紹介してくれた。

 なんとこの子供達は……先輩達のお孫さんだった!

 ほわぁっ!? と声を出しそうになるくらい、かなり驚いた。
 何度か死んで子供の姿になることによって分かってきたことなんだけど……体感として大人になればなるほど一日、一ヶ月、半年、一年と経過する時間が『早く』感じる。
 だけど十三歳の少年になるとそれが凄く『遅く』感じるんだよね。
 一年なんて凄く長いし、いつになったら早く大人になれるんだと毎日思っていた。

 なのに、気付けば周りの人達は年齢を順調に重ねていて――時が経つのって、本当に早いと感じてしまう。
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