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キーランとお買い物
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前髪をピッチリと分けられ、しょんぼりとしたネヴィルが自分の部屋に戻って行くのを見届けてから、召喚魔となったキーランと今後のことについて話し合おうと思ったら、窓の外をボーッと見詰めているのに気付く。
「キーラン、どうしたの?」
「え? あぁ、ちょっと……昔のことを思い出してて」
手をキーランの顔の前で振ると、ハッと気付いたように僕を見る。
キーランはどうやら自分が人間だった頃のことを思い出していたみたい。
悪魔になってから初めて僕に召喚されたようだから、人間界に来て思い出にふけっていたようだ。
僕はお茶を用意すると、座っているキーランの前にコップを置いた。
ネヴィルと一緒にいるとぶっ飛んだ行動をよくしてくれるので、頭が痛くなるような出来事によく遭遇することがある。
なので、人間界にいるための基本的な情報をちゃんと伝えようと思っていたんだけど、キーランの話によれば元は人間だったらしいから、必要はないのかな? と思ったんだけど、今の時代よりもかなり昔の時代に生きていたらしいので教えて欲しいと言われた。
強烈な憎しみを抱いて闇に身を堕として悪魔へと変化したので、生粋の悪魔であるネヴィルみたいには迷惑をかけることは一切ないから安心してと笑う。
キーランとネヴィルは……人間界に来る前からあまり仲が良くなかったのだろうか?
基本悪魔はお互い嫌悪する間柄みたいなのでしょうがないのかもしれないけど、僕との契約中は仲良くまではいかなくても喧嘩はしないで欲しいとお願いしておいた。
そんな話を続けながら家中での決め事をした後、キーランが室内を見回しながら食事はいつもどうしているのかと聞いてきたので、ウェルドが選んだお店の料理を宅配してもらってそれを食べるか、僕が自分で作って食べているのだと教えてあげた。
ただ、僕は独身時代から自炊はしていたんだけど、作れる料理の種類が五種類と限りなく少なく、男三人でこの家で住むようになってからは近くのお店から宅配料理を頼むのが習慣になったんだよねぇ。
僕がそう言えば、「それじゃあ、料理は私がしようか?」とキーランが提案してくれる。
「えっ、いいの?」
「いいわよ? 人間時代は家で家事全般をしていたんだから! その中でも料理は得意分野だったから期待しといて」
「えっ、めっちゃ嬉しい! 助かるよ」
宅配料理も美味しいんだけど、ちょっと飽きてきた頃だったからその提案は凄く嬉しい!
早速今日の夕食から作ってくれるとのことだった。
ただ、冷蔵庫にはお酒とお水、果物におつまみぐらいしか入っていないので、食材を買いに一緒に街へと行くことにした。
家を出てから二人で何を食べるか話し合いをしながら食品店などで買い物をしていると、周囲を歩く人々からキーランがチラチラ見られてるのに気付く。
キーランは全く気にした風もなかったけど、誰しもが認める美貌を持つ悪魔は人々の視線を自然に集め、魅了するようだ。
途中男性から声をかけられることが増えてきたのに嫌気がさしたのか、街中に溶け込むような見た目に見える錯覚魔法を使っていた。
ある程度買い物をすませて家に帰っている途中、キーランが持っている籠を受け取ると、凄く嬉しそうな表情で頭をヨシヨシと撫でる。
自分のことを『お姉ちゃん』と呼んで欲しいと言うのと、僕のことを小さな子供のように扱うのを見ると――キーランは子供好きなのかな? と頭を撫でられながら考えてしまう。
悪魔だけどそういう存在が一人くらいはいる……のかもしれない。たぶん。
それと、フォールティアとエルピスはなぜかキーランにだけ懐いている。
まだ出会って数時間しか経っていないのに、優しく体を撫でてたまにお話相手にもなってくれるキーランに、使い魔達も気を許しているようだった。
数日分の食料を購入してから家に帰ると、ウェルドが家に帰って来ていた。
途中ネヴィルから話は聞いていたのか、キーランを見ても驚くことはなかった。
それからキーランとウェルドは淡々とした態度でお互い挨拶を済ませたと思ったら、ウェルドはまだ仕事があるからと自室へと戻って行ってしまった。
「それじゃあ、これから夕食を作るわね」
早速キーランが食事の準備に取りかかる為に台所へ立ってくれる。
着ていた豪華な服から普段服へと魔法で変えると、髪を結び、白いエプロンを付けてから包丁を掴む。
トントントン、とまな板の上で野菜を切る音が台所から聞こえてくるのを聞きながら、僕は台所から少し離れたテーブルのところで頬杖つきながらキーランの後姿を見詰める。
時折キーランがこっちを見て微笑むので、僕も笑い返す。
ある程度料理が出来上がってきた頃合いになってきてから、僕は立ち上がると食器棚から人数分の食器を取り出し、テーブルの上にセットしていく。
「はい、出来たよ」とキーランが作った料理と焼き立てのパンがいっぱい入った籠が、テープに並べられていく。
部屋全体に香る美味しそうな匂いにお腹が鳴るのが分かる。
「皆ー、ごはんが出来たよーっ!」
二階の自室にいるネヴィルとウェルドに声をかけたら、二人共二階から降りて来て自分の椅子に腰かける。
ただ、前髪がペッタリと横分けになっているネヴィルをキーランが見た瞬間、部屋の中にキーランの爆笑する声が響き渡った。
ずっと物思いにふけっていて、ネヴィルのこの状態を見ていなかったらしい。
「キーラン、どうしたの?」
「え? あぁ、ちょっと……昔のことを思い出してて」
手をキーランの顔の前で振ると、ハッと気付いたように僕を見る。
キーランはどうやら自分が人間だった頃のことを思い出していたみたい。
悪魔になってから初めて僕に召喚されたようだから、人間界に来て思い出にふけっていたようだ。
僕はお茶を用意すると、座っているキーランの前にコップを置いた。
ネヴィルと一緒にいるとぶっ飛んだ行動をよくしてくれるので、頭が痛くなるような出来事によく遭遇することがある。
なので、人間界にいるための基本的な情報をちゃんと伝えようと思っていたんだけど、キーランの話によれば元は人間だったらしいから、必要はないのかな? と思ったんだけど、今の時代よりもかなり昔の時代に生きていたらしいので教えて欲しいと言われた。
強烈な憎しみを抱いて闇に身を堕として悪魔へと変化したので、生粋の悪魔であるネヴィルみたいには迷惑をかけることは一切ないから安心してと笑う。
キーランとネヴィルは……人間界に来る前からあまり仲が良くなかったのだろうか?
基本悪魔はお互い嫌悪する間柄みたいなのでしょうがないのかもしれないけど、僕との契約中は仲良くまではいかなくても喧嘩はしないで欲しいとお願いしておいた。
そんな話を続けながら家中での決め事をした後、キーランが室内を見回しながら食事はいつもどうしているのかと聞いてきたので、ウェルドが選んだお店の料理を宅配してもらってそれを食べるか、僕が自分で作って食べているのだと教えてあげた。
ただ、僕は独身時代から自炊はしていたんだけど、作れる料理の種類が五種類と限りなく少なく、男三人でこの家で住むようになってからは近くのお店から宅配料理を頼むのが習慣になったんだよねぇ。
僕がそう言えば、「それじゃあ、料理は私がしようか?」とキーランが提案してくれる。
「えっ、いいの?」
「いいわよ? 人間時代は家で家事全般をしていたんだから! その中でも料理は得意分野だったから期待しといて」
「えっ、めっちゃ嬉しい! 助かるよ」
宅配料理も美味しいんだけど、ちょっと飽きてきた頃だったからその提案は凄く嬉しい!
早速今日の夕食から作ってくれるとのことだった。
ただ、冷蔵庫にはお酒とお水、果物におつまみぐらいしか入っていないので、食材を買いに一緒に街へと行くことにした。
家を出てから二人で何を食べるか話し合いをしながら食品店などで買い物をしていると、周囲を歩く人々からキーランがチラチラ見られてるのに気付く。
キーランは全く気にした風もなかったけど、誰しもが認める美貌を持つ悪魔は人々の視線を自然に集め、魅了するようだ。
途中男性から声をかけられることが増えてきたのに嫌気がさしたのか、街中に溶け込むような見た目に見える錯覚魔法を使っていた。
ある程度買い物をすませて家に帰っている途中、キーランが持っている籠を受け取ると、凄く嬉しそうな表情で頭をヨシヨシと撫でる。
自分のことを『お姉ちゃん』と呼んで欲しいと言うのと、僕のことを小さな子供のように扱うのを見ると――キーランは子供好きなのかな? と頭を撫でられながら考えてしまう。
悪魔だけどそういう存在が一人くらいはいる……のかもしれない。たぶん。
それと、フォールティアとエルピスはなぜかキーランにだけ懐いている。
まだ出会って数時間しか経っていないのに、優しく体を撫でてたまにお話相手にもなってくれるキーランに、使い魔達も気を許しているようだった。
数日分の食料を購入してから家に帰ると、ウェルドが家に帰って来ていた。
途中ネヴィルから話は聞いていたのか、キーランを見ても驚くことはなかった。
それからキーランとウェルドは淡々とした態度でお互い挨拶を済ませたと思ったら、ウェルドはまだ仕事があるからと自室へと戻って行ってしまった。
「それじゃあ、これから夕食を作るわね」
早速キーランが食事の準備に取りかかる為に台所へ立ってくれる。
着ていた豪華な服から普段服へと魔法で変えると、髪を結び、白いエプロンを付けてから包丁を掴む。
トントントン、とまな板の上で野菜を切る音が台所から聞こえてくるのを聞きながら、僕は台所から少し離れたテーブルのところで頬杖つきながらキーランの後姿を見詰める。
時折キーランがこっちを見て微笑むので、僕も笑い返す。
ある程度料理が出来上がってきた頃合いになってきてから、僕は立ち上がると食器棚から人数分の食器を取り出し、テーブルの上にセットしていく。
「はい、出来たよ」とキーランが作った料理と焼き立てのパンがいっぱい入った籠が、テープに並べられていく。
部屋全体に香る美味しそうな匂いにお腹が鳴るのが分かる。
「皆ー、ごはんが出来たよーっ!」
二階の自室にいるネヴィルとウェルドに声をかけたら、二人共二階から降りて来て自分の椅子に腰かける。
ただ、前髪がペッタリと横分けになっているネヴィルをキーランが見た瞬間、部屋の中にキーランの爆笑する声が響き渡った。
ずっと物思いにふけっていて、ネヴィルのこの状態を見ていなかったらしい。
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