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そんな弟からの手紙であるが、ここ二年ほどは届くまでかなり期間が空くようになった。
最初は毎月来ていた手紙が二ヶ月に一回から、三か月に一回になり……今では半年に一回しか届かないようになった。
私は毎月送っているのに、なぜ来ないのか心配になった。
弟は絶対毎月手紙を書くと言っていたし、約束は守る子だったから。
いつも私の周りにいる神官に聞けば、「学業が忙しいのでしょう」としか言われなかった。
最初はそう思っていたんだけど、あまりにも弟が心配になった私は行動を起こすことにした。
体調が悪いからしばらく部屋で休むからと言って、誰も部屋に入って来ないように命じてから深くフードを被って、こっそりと部屋を抜け出して街へ出る。
持っていた宝石――貴族の病気を治した時に貰った宝石を質屋で売り、魔法師が多く集まるギルドへ行って転移が得意な魔法師を雇い、弟がいる町へと送ってもらうことにした。
転移すると、私は弟が通っている学校へ向かうことにした。
途中、商店街がある方へ寄って、弟が好きな固めなパンとクリームスープの材料を購入しておく。
久しぶりに弟の好物を作って食べさせてあげたかったから。
買い物をすませてから急いで弟がいる学校へ向かうと、ちょうど下校中の生徒がいたので声をかける。
その子達はちょうど弟と同学年の腕章をしていたので、弟の名前を伝えてまだ校内にいるのかと聞けば、二人の男の子達はお互い顔を見合わせてから「あいつは学校に来てないですよ」と肩を竦める。
聞けば二年前に上級貴族のグループに目を付けられて虐めに合うようになってから不登校になり、それ以来学校には来ていないと言う。
ガツンッ! とハンマーで頭を叩かれるような衝撃が襲う。
そんなこと、一度も手紙には書かれていなかったし、神官達からそんな重大な内容は一言も入って来ていない。
急いで弟がいる学生寮へと向かい、寮母に弟はどこなのかと詰め寄った。
貴女は誰なのかと不審そうに言われた時、自分の身分を言えば神殿から追手が直ぐに来てしまうから、「聖女様の侍女で、聖女様から弟様の様子を見て来いと言われて来ました」と伝えた。
そう言えば、寮母は寮から少し離れた場所にある小屋にいると言う。
小屋とはどういうことだと思いながら、急いで教えられた場所へ向かえば――
朽ち果てそうにほどボロボロになった、小屋と言うのも怪しい建物が見えた。
心臓が締め付けられるような気分になりながら建物の前に立ち、取っ手の壊れた扉を開けて中に入れば……中は想像しているものようりももっと酷いも状態だった。
ひび割れた窓ガラスに擦り切れたカーテン、四隅には蜘蛛の巣が張っている。
まるで生活している形跡が一切ない様子に眉を顰めながら、ふとベッドへと目を向けて悲鳴を上げた。
腕に抱いていた食材が床に散らばるのも気にせずに走り出す。
ベッドの上で寝ていたのは、痩せこけて見るも無残な姿になった弟だった。
「そんなっ……なぜ……どうして……」
ボロボロと泣きながら弟の頬に手を当て――あまりにも冷たい肌にバッと手を引く。
「まさか、そんな……嘘だっ!」
胸に耳を当てて心臓の音を聞こうとしても、なにも聞こえない。
慌てて治癒魔法をかけるも、一瞬光って直ぐに霧散してしまう。
治癒の魔法は死んだ人間には使えないからだ。
一体、なにが起きている?
私の力は弟を助ける為に目覚めたものだ。
それなのに、どうして弟はこんな状態になるまで放置され、一人寂しくこの世を去ってしまったのか。
二年前から不登校と言っていた子供達の言葉が正しければ、神殿の連中が「弟は忙しくしている」という言葉は嘘になる。
なぜ、そんな嘘を?
最初は毎月来ていた手紙が二ヶ月に一回から、三か月に一回になり……今では半年に一回しか届かないようになった。
私は毎月送っているのに、なぜ来ないのか心配になった。
弟は絶対毎月手紙を書くと言っていたし、約束は守る子だったから。
いつも私の周りにいる神官に聞けば、「学業が忙しいのでしょう」としか言われなかった。
最初はそう思っていたんだけど、あまりにも弟が心配になった私は行動を起こすことにした。
体調が悪いからしばらく部屋で休むからと言って、誰も部屋に入って来ないように命じてから深くフードを被って、こっそりと部屋を抜け出して街へ出る。
持っていた宝石――貴族の病気を治した時に貰った宝石を質屋で売り、魔法師が多く集まるギルドへ行って転移が得意な魔法師を雇い、弟がいる町へと送ってもらうことにした。
転移すると、私は弟が通っている学校へ向かうことにした。
途中、商店街がある方へ寄って、弟が好きな固めなパンとクリームスープの材料を購入しておく。
久しぶりに弟の好物を作って食べさせてあげたかったから。
買い物をすませてから急いで弟がいる学校へ向かうと、ちょうど下校中の生徒がいたので声をかける。
その子達はちょうど弟と同学年の腕章をしていたので、弟の名前を伝えてまだ校内にいるのかと聞けば、二人の男の子達はお互い顔を見合わせてから「あいつは学校に来てないですよ」と肩を竦める。
聞けば二年前に上級貴族のグループに目を付けられて虐めに合うようになってから不登校になり、それ以来学校には来ていないと言う。
ガツンッ! とハンマーで頭を叩かれるような衝撃が襲う。
そんなこと、一度も手紙には書かれていなかったし、神官達からそんな重大な内容は一言も入って来ていない。
急いで弟がいる学生寮へと向かい、寮母に弟はどこなのかと詰め寄った。
貴女は誰なのかと不審そうに言われた時、自分の身分を言えば神殿から追手が直ぐに来てしまうから、「聖女様の侍女で、聖女様から弟様の様子を見て来いと言われて来ました」と伝えた。
そう言えば、寮母は寮から少し離れた場所にある小屋にいると言う。
小屋とはどういうことだと思いながら、急いで教えられた場所へ向かえば――
朽ち果てそうにほどボロボロになった、小屋と言うのも怪しい建物が見えた。
心臓が締め付けられるような気分になりながら建物の前に立ち、取っ手の壊れた扉を開けて中に入れば……中は想像しているものようりももっと酷いも状態だった。
ひび割れた窓ガラスに擦り切れたカーテン、四隅には蜘蛛の巣が張っている。
まるで生活している形跡が一切ない様子に眉を顰めながら、ふとベッドへと目を向けて悲鳴を上げた。
腕に抱いていた食材が床に散らばるのも気にせずに走り出す。
ベッドの上で寝ていたのは、痩せこけて見るも無残な姿になった弟だった。
「そんなっ……なぜ……どうして……」
ボロボロと泣きながら弟の頬に手を当て――あまりにも冷たい肌にバッと手を引く。
「まさか、そんな……嘘だっ!」
胸に耳を当てて心臓の音を聞こうとしても、なにも聞こえない。
慌てて治癒魔法をかけるも、一瞬光って直ぐに霧散してしまう。
治癒の魔法は死んだ人間には使えないからだ。
一体、なにが起きている?
私の力は弟を助ける為に目覚めたものだ。
それなのに、どうして弟はこんな状態になるまで放置され、一人寂しくこの世を去ってしまったのか。
二年前から不登校と言っていた子供達の言葉が正しければ、神殿の連中が「弟は忙しくしている」という言葉は嘘になる。
なぜ、そんな嘘を?
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