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え、僕の呼びかけ無視してたの?

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 僕は内心冷や汗をドバドバ流しながら、ネヴィルを見る。

「あのさ、ネヴィル。君を召喚するために生贄として僕の命を使った時、かなりの年数がかかったよね? もし誰かがあの召喚陣を使って次の悪魔を召喚しようとしたら、同じくらいの年数がかかるってこと?」

 もしもそうだとすれば、生贄にされる人達の数が今後も増えていくことになる。
 それだけは避けたい。
 僕の質問に隣を歩いていたネヴィルは、どうでしょう? と首を傾げる。

「リアム様が私を召喚しようと呼び続けていた時――生贄として命を魔法陣に捧げている間ですが、私は何度か召喚の呼びかけを『無視』していたんです」
「え、無視してたの?」
「ネヴィル様、悪魔は召喚主の呼びかけを無視することが出来るのですか? 文献ではそのようなことは一切書かれておりませんでしたが……」
「人間の為に私達悪魔が時間を割いてやっているのですから、どう接しても別にいいでしょう? っていう流れか、ただ単に呼びかけに答えるのが面倒だという理由で無視することが多いですね」

 ネヴィルは僕が驚きながら、無視したの? という問いを普通にスルーしながら話し続ける。

「生贄を捧げる場合、別に人間である必要はないんですよね……魔力の多いものであったり、穢れのない純粋な魂を持つ子供だった場合は『呼びかける声』がただ単に大きくなっているだけなので。大昔であれば子牛や子羊を生贄に捧げることが多かったほどです」

 そんな簡単な方法で悪魔を招喚出来るのかとウェルドと共に驚いていると、誰でも簡単に出来過ぎて煩いから、悪魔達の間で人間の記憶を操作して禁止にしたらしい。

「え、でも今僕達に教えちゃっていいの? またそう言う方法が流行るかもしれないよ?」
「やれるものならやってみて下さい。私が片っ端から人間共の記憶を消していきますし、そういう本が世に産まれた瞬間消し炭にしてやります」

 僕の言葉にネヴィルは笑いながらそう言ったんだけど……目がマジだった。
 怖っ!

「まぁ、話は逸れましたが、リアム様があの魔法陣を発動させた時、私が何度か呼びかけを無視していたので、それなりに『生贄の数』は溜まっているんじゃないですかね?」と言われた。
 どうやら召喚陣に生贄が捧げられて召喚魔法が発動出来るくらいまでになると、魔界にいる悪魔に『お知らせ』みたいなものが届くらしい。
 これを悪魔達は『呼びかけ』と言っているんだとか。

 呼びかけに悪魔が応じれば召喚成功で現世に現れるが、応じなければ召喚されない――現世に現れないので、人間は召喚失敗だと思い込んで何度も生贄を捧げることになる。

 そうすると召喚に必要なエナジーが魔法陣に溜まり続けるので、もし違う悪魔を召喚しようとした時は、そんなに生贄の数が必要ないのだと教えてくれた。
 普通の魔法陣であれば違う悪魔は召喚出来ないが、今回の魔法陣なら出来るので、特殊な例だとも説明された。

 ちなみにネヴィルは僕の召喚の呼びかけに『何度』も拒否したとのこと。

 だからあんなに時が経過していたのか……
 何度か拒否して魔法陣にエナジーがかなり溜まっているだろうから、新たな悪魔がその呼びかけに直ぐに応じるなら、それほど時間もかからず召喚出来るんじゃないかとのこと。
 なんでネヴィル召喚した後、召喚魔法陣をちゃんと壊さなかったのかと頭を抱える。
 人を誘拐して生贄に捧げるような悪魔崇拝者達が、強い悪魔を従えてしまったら世の終わりである。

「ネヴィル、これから君を呼んだ場所に行こうと思うから連れてってよ」
「帰って来たばかりなのに、今から行くんですか?」
「今から行くのっ!」

 嫌そうな顔をするネヴィルの腕を掴んで命じながら、「ウェルド、今から召喚陣だけでも壊してこようと思う。攫われた人も一緒に助けた方がいいよね?」とウェルドに確認を取れば、召喚陣がある場所にもし攫われた人がいればそちらは救助した方がいいと言われたので、分かったと頷く。

 こうして僕とネヴィルは、初めて僕達が出会った場所へと移動したのだった。
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