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男の子と一緒に帰宅! 1
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「なんですか、この少年は」
ネヴィルの魔法でダンジョンから家へ帰ったら、居間で椅子に座りながら新聞を見ていたウェルドが顔を上げて、見知らぬ男の子を連れた僕達を見て――まるで頭が痛いと言う風に眉間を指で揉みながらそう口を開いた。
うん、なんか怒られそうな予感がする。
「さてと……私はこれから部屋でやる事があるので、ここで失礼します」
自分は関係ないと言うように、二階へさっさと逃げたネヴィルを薄情者と睨む。
そんな僕の睨みなどなんのその、ネヴィルはヒラヒラと手を振って二階へと消えていく。
溜息をつきながら、僕の隣で委縮するように立っている男の子を、まずは近くにあるソファーに座らせてあげた。
僕が男の子の為に温かいミルクを用意している間ウェルドはどこかに行ったと思ったら、所々切れてボロボロになった服を見て、僕の部屋に行って新品の子供服を持ってきてくれたようだった。
「これを着なさい」
「え……いいの?」
「えぇ。リアム様がよくダメにするので、子供服は余るほど家に用意しているから気にしなくてもいい」
「えっと、ありがとう」
男の子はウェルドから手渡された子供服を受け取ると、その場で服を脱いで新しい服に腕を通した。
僕の身長で用意している服なので男の子には少し大きいみたいだけど、あのボロボロの服を着ているよりはいいでしょ。
ウェルドは僕によくするのと同じように男の子の手前で膝を着くと、余った袖や裾を折ってあげてからソファーに座らせる。
元宰相様なので普通ならこんなこと絶対しないんだろうけど、僕のお世話をするのが板についてきているのか無意識の行動っぽい。
ソファーに座った男の子を安心させるように、フォールティアとエルピスが即座に両隣へ座る。
なんていい子達なんだ。
恐る恐るといった感じで、男の子はフォールティアとエルピスの頭や体を撫でていた。
床から立ち上がり、使い魔達を撫でている男の子を見ていたウェルドは、スゥッと視線を僕に向けて「それで?」と話し出す。
「ダンジョンで何があったのかお聞きしても?」
「はい、実はですね……」
僕はネヴィルとダンジョンに行ってから、で破落戸に出会った辺りから、この少年を助けた経緯までの説明をウェルドに順番に話した。
あんなところに子供を一人置いて来るなんて出来ないし、助けるのは当たり前のことでしょ。
てか、一番悪いのはあの破落戸達だけどね。
それにダンジョンで夥しい数の魔獣に襲われる恐怖や、もう助からないかもしれないという絶望感は、僕が一番よく分かっている。
「なるほど。この子は最近ギルドが頭を悩ませている『ダンジョン荒らし』の被害者ですね」
「……本当になんでも知ってるね」
「ギルドと交渉を頻繁にしていますからね。ある程度のことは耳に入ってきます」
「なるほど」
ウェルドは元々座っていた椅子に座り直すと、机の上にあった新聞を手に取り「それに『ダンジョン荒らし』は重罪ですからね。最近の新聞の最重要記事としても取り上げられているほどですから」と教えてくれた。
「『ダンジョン荒らし』をしている連中は、いつか自分達が魔獣に襲われることを分かっているので、魔獣から安全に逃れる為に囮となる人間を常に用意しているようです」
「囮となる人間?」
「はい、特に親や親戚などいない天涯孤独な孤児を選んで連れ去っているようですね。特に孤児院にも入っていない路頭生活をしているような児童が標的となっているようですが……そんな子供が一人二人消えたとしても誰も気付かないですし、声を上げる者もいないので好都合なのでしょう」
「……酷いな」
そう言いつつ男の子の方を見れば、自分が連れ去られて魔獣の巣窟で縛られた状態で置き去りにされた時のことを思い出したのか、震えていた。
フォールティアとエルピスが「大丈夫?」と言う風に体を寄せて慰めている。
「あ、そうだ! そう言えば君の名前を聞いてなかったね」
僕は重くなった空気を変えようと、少し意識して明るい声で話し出す。
「僕の名前はリアム。君は?」
「……お、俺は……アルフィー、です」
「アルフィーか。古代語で『忠義なる者』って意味だったかな? いい名前だね!」
「へへ、ありがとう」
名前を褒められてニコッと笑うアルフィー君に、昔学園で古代語をちょっと習っていて良かったと心の中で安堵すした。
ネヴィルの魔法でダンジョンから家へ帰ったら、居間で椅子に座りながら新聞を見ていたウェルドが顔を上げて、見知らぬ男の子を連れた僕達を見て――まるで頭が痛いと言う風に眉間を指で揉みながらそう口を開いた。
うん、なんか怒られそうな予感がする。
「さてと……私はこれから部屋でやる事があるので、ここで失礼します」
自分は関係ないと言うように、二階へさっさと逃げたネヴィルを薄情者と睨む。
そんな僕の睨みなどなんのその、ネヴィルはヒラヒラと手を振って二階へと消えていく。
溜息をつきながら、僕の隣で委縮するように立っている男の子を、まずは近くにあるソファーに座らせてあげた。
僕が男の子の為に温かいミルクを用意している間ウェルドはどこかに行ったと思ったら、所々切れてボロボロになった服を見て、僕の部屋に行って新品の子供服を持ってきてくれたようだった。
「これを着なさい」
「え……いいの?」
「えぇ。リアム様がよくダメにするので、子供服は余るほど家に用意しているから気にしなくてもいい」
「えっと、ありがとう」
男の子はウェルドから手渡された子供服を受け取ると、その場で服を脱いで新しい服に腕を通した。
僕の身長で用意している服なので男の子には少し大きいみたいだけど、あのボロボロの服を着ているよりはいいでしょ。
ウェルドは僕によくするのと同じように男の子の手前で膝を着くと、余った袖や裾を折ってあげてからソファーに座らせる。
元宰相様なので普通ならこんなこと絶対しないんだろうけど、僕のお世話をするのが板についてきているのか無意識の行動っぽい。
ソファーに座った男の子を安心させるように、フォールティアとエルピスが即座に両隣へ座る。
なんていい子達なんだ。
恐る恐るといった感じで、男の子はフォールティアとエルピスの頭や体を撫でていた。
床から立ち上がり、使い魔達を撫でている男の子を見ていたウェルドは、スゥッと視線を僕に向けて「それで?」と話し出す。
「ダンジョンで何があったのかお聞きしても?」
「はい、実はですね……」
僕はネヴィルとダンジョンに行ってから、で破落戸に出会った辺りから、この少年を助けた経緯までの説明をウェルドに順番に話した。
あんなところに子供を一人置いて来るなんて出来ないし、助けるのは当たり前のことでしょ。
てか、一番悪いのはあの破落戸達だけどね。
それにダンジョンで夥しい数の魔獣に襲われる恐怖や、もう助からないかもしれないという絶望感は、僕が一番よく分かっている。
「なるほど。この子は最近ギルドが頭を悩ませている『ダンジョン荒らし』の被害者ですね」
「……本当になんでも知ってるね」
「ギルドと交渉を頻繁にしていますからね。ある程度のことは耳に入ってきます」
「なるほど」
ウェルドは元々座っていた椅子に座り直すと、机の上にあった新聞を手に取り「それに『ダンジョン荒らし』は重罪ですからね。最近の新聞の最重要記事としても取り上げられているほどですから」と教えてくれた。
「『ダンジョン荒らし』をしている連中は、いつか自分達が魔獣に襲われることを分かっているので、魔獣から安全に逃れる為に囮となる人間を常に用意しているようです」
「囮となる人間?」
「はい、特に親や親戚などいない天涯孤独な孤児を選んで連れ去っているようですね。特に孤児院にも入っていない路頭生活をしているような児童が標的となっているようですが……そんな子供が一人二人消えたとしても誰も気付かないですし、声を上げる者もいないので好都合なのでしょう」
「……酷いな」
そう言いつつ男の子の方を見れば、自分が連れ去られて魔獣の巣窟で縛られた状態で置き去りにされた時のことを思い出したのか、震えていた。
フォールティアとエルピスが「大丈夫?」と言う風に体を寄せて慰めている。
「あ、そうだ! そう言えば君の名前を聞いてなかったね」
僕は重くなった空気を変えようと、少し意識して明るい声で話し出す。
「僕の名前はリアム。君は?」
「……お、俺は……アルフィー、です」
「アルフィーか。古代語で『忠義なる者』って意味だったかな? いい名前だね!」
「へへ、ありがとう」
名前を褒められてニコッと笑うアルフィー君に、昔学園で古代語をちょっと習っていて良かったと心の中で安堵すした。
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