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閑話 エルピス

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 くわぁぁっ、と大きな欠伸をしながら、エルピスは手をペロペロと舐めてから顔を擦る。

《……ンニャッ》
「か、かわいぃ~!」
《キュッ!》


 そんなエルピスの姿を見ながら、主となぜかフォールティアもエルピスを見て頷いている。
 どうやら二人でエルピスの可愛らしさについて語っているようだ。

 まぁ、二人がそう言いたくなるのもしょうがない、エルピスは本当に可愛い姿をしているのだから!

 可愛いって罪だと思いながら、グググッと手を伸ばして伸びをする。
 ひょんなことから主の使い魔となって、ある程度の時間が経った。

 よくよく主を観察して分かったことは、主はけっこう能天気だということ。

 死んでも死なないと言う特異体質なせいか、人間が持つ『生』に対する執着が薄いように思える。
 それは良いようで悪いことでもあるんじゃないかな?
 主の召喚魔であられるネヴィル様にそのことについて大丈夫なのか聞いたことがあるんだけど、魔獣よりも血も涙もない悪魔なネヴィル様の回答は「別にそれがなにか問題になるわけじゃないし、いいじゃないですか」というものだった。

 聞く相手を間違えた。

 ただ、エルピスの言葉はネヴィル様以外には通じないから、それ以外誰にも相談できないんだよね。
 使い魔仲間のフォールティアに相談しないのかって?
 相談しても《キュ~え~っとぉ》? と鳴いて首を傾げるしかしないから、問題外。

《ニャ~ニャッ》

 溜息を吐きながら、最近ネヴィル様と主の下僕になった人間がなにか企んでいるようなのに気付き、さらに頭を悩ませてる。
 ネヴィル様は、エルピスがなにかしようとしても敵う相手じゃない。
 それでも、使い魔としてやらなきゃならない時があるはず。
 チラリと二人を見れば――エルピスを見てニコッと笑う主と、嬉しそうに翼を広げるフォールティア。

 能天気な主と、ちょっとおバカな使い魔仲間が目に入る。

 うん、頼りにならない。
 主の使い魔として、エルピスがしっかりしなきゃならない、と決意を新たにしたのだった。
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