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「それじゃあ、帰ろうか」

 ビリッと破けば、僕達はギルドの近くに転移していた。
 そのままギルドの中へ入って受付に討伐した魔獣を提出すれば――報酬として、なんと五百二十万ユルほどの金貨が入った袋を渡された。
 そんな大金がもらえるとは思ってなくて、かなりビックリした。

 知らなかったけど、どうやら強い召喚魔がいるからってギルドが強い魔獣を依頼に組み込んでいたらしい。

 だから高額な報酬を手にすることが出来るとのこと。
 思ってもみなかった金額にドキドキしながら、鞄の中に仕舞う。
 使い魔達に「頑張ったね~」と褒めながら家に帰ると、ウェルドがリビングの机があるところでお茶を飲みながら本を読んでいるようだった。

 机の上に置かれているのは小説とかそう言うのではなく、この国の法律・経済・政治などなど……分厚い辞書レベルの本を読み、何かを書いているようだった。

「お帰りなさいませ、リアム様」
「ただいま~。あ、今日さ、ギルドで登録したら直ぐに魔獣討伐を頼まれたんだ。それも凄い強い魔獣の討伐でさぁ!」
「ほぅ、それはそれは」

 僕達が帰って来たことに気付いたウェルドは立ち上がると、部屋の奥から僕の服を持ってきてくれた。
 ありがとうと言いつつ、僕は学生服から私服に着替えながらギルドの受付での出来事などをウェルドに話し、それで召喚魔のネヴィルがいるから強い魔獣がいるダンジョンを任されたことや、ネヴィルが全然手伝ってくれなかったから、自分が魔獣に特攻したことなども身振り手振りしながら話していた。

「大変でしたね。でも、ネヴィル様がおっしゃる通り、その戦い方はリアム様だけしか出来ないでしょうね」
「まぁ……確かに」

 机の上にウサギ人形のネヴィルを置いて椅子に座ると、僕の前にウェルドが冷えたジュースと焼いたパンとジャムを置いてから座り直す。
 お腹が空いていたので、ウェルドにありがとうと言いながらパンにジャムを付けてパクリと食べる。
 甘い苺のジャムと、外がカリッとしてて中がフワフワなパンとの相性は抜群だ。

 もぐもぐ食べながら、ダンジョンから帰って来てからネヴィルが大人しいなとウサギの人形をツンツン指で突いていた時、ふとあることを思い出して鞄の中に入っているダンジョンの地図を取り出した。

 本を読んでいたウェルドは、「ちょっと見て欲しいんだけど」と僕が差し出した丸められた地図を受け取ると、机の上に広げてから視線を落とす。

「リアム様……これは?」
「ギルドで購入したダンジョンの地図なんだけど、ネヴィルと一緒にダンジョンの中を歩いていたら、地図上に描かれていない道とか部屋なんかがいっぱいあってさ、新しく見付けたところを地図に書き加えてみたんだ」
「何ヵ所かに魔獣の名前も記入されておりますね……ちなみに、この落とし穴や巨大ハンマー? それと炎の道や虫の巣窟……これらはもしかして罠かなにかですか?」

 地図に視線を落として確認してくるウェルドに、僕も地図を見ながら頷く。

「うん、そうだよ。ダンジョンの中にいろんな罠があったんだけど、そのほとんどの罠は作動してから少しすると消えるんだ」
「消える?」
「そう、罠があったなんて思えないくらい綺麗に元の状態に戻ってたよ。それに罠が発動したことによって周囲が壊れたとしても、それも綺麗に戻っていたのを確認したよ」
「なるほど……リアム様、これは凄い発見ですよ」
「何が?」

 パンを食べ終えてジュースをゴクゴク飲みながらウェルドの方を見れば、僕が情報を書き足した地図を見ながら何か良いことを思い付いたかのように口角を上げていた。
 そして地図を指で指しながら僕を見る。

「リアム様、これからダンジョンへ行く時は必ずそのダンジョンの地図を持って行き、新たに見付けた情報を事細かく記入して下さい」
「いいけど……どうして?」
「新たに見付けた情報を『売る』ためです」

 ウェルドの話によれば、ダンジョンの新しい情報を手に入れる為に、時には大勢の犠牲者が出ることがあるんだとか。
 ダンジョンの危険度が高ければ高いほど新しい情報の更新は遅くなり、被害は大きくなるし安全にダンジョン内を回ることが難しくなる。
 だけど僕が危険度の高いダンジョンの情報を数多く手に入れ、それを冒険者やギルドへ売ることが出来たら――

 億万長者になることも夢じゃないと言われた。
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