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使い魔について 

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 引越しをするまでの間、やることもないからと使い魔達を連れて外へ出かけることにした。

 今は使い魔達が目立つのはあまり良くないからと、ショルダーバッグをウェルドから渡されたので、その中に二匹を入れて出発することに。
 斜め掛けのショルダーバックから顔だけピョコンと出したフォールティアとエルピスは、興味津々といった感じで外の風景を眺めている。
 顔だけ見れば普通の小鴉と子猫なので、使い魔達を見た通行人の人達から「大人しくしてて偉いわね~」とか「可愛い」と声をかけられていた。

 まだ町の中は活気がある方だけど、途中で聞こえてくる物価の上昇と高くなる税金の話が、そこかしこで聞こえてくる。

 そんな話声を耳にしながら、僕は歩き続ける。
 ちなみに今僕が向かっている先は、魔法やそれに関係がある本が置いている魔法専門店だ。
 昨日ウェルドから使い魔についての本が置いているお店の情報を聞いていたので、そこへ行って使い魔についていろいろと調べようと思う。

 町の中央部分へ足を運び、商店街に何十件と並ぶお店の一つに魔法専門店はあった。

 一見普通の一軒家みたいな外見をしている。
 扉の上に綺麗な文字で『書店』とだけ書かれている看板が掛けられていた。
 入ろうかどうかちょっと迷っていると、ちょうど中から魔法師のローブを着た人が出て来たので、慌ててそのまま中へ入ることにした。
 中に入ると、外観とは違って中がとても広かった。

 もしかしたら魔法で空間を広げているのかもしれない。

 普通の図書館同様、中に入るとそこはとても静かで、周りにいる人達は静かに自分が読みたい本を選んで各々の好きな場所で読んでいた。
 図書館とは違って中にある本を読むにはお金を支払う必要があるので、お金を払う。
 動物を同伴させての入店は禁止とか言われるのかと思ったんだけど、受付にいた人はバックの中に入っているフォールティアとエルピスを見ても何も言わずに「ごゆっくりどうぞ」と言うだけだったので、ホッと胸を撫で下ろす。
 書士さんに魔女や使い魔についての本はないか相談すれば、店の奥へと案内された。

「ここからがお探しの本がある場所です」
「ありがとうございます」

 言われた本棚に目を向ければ、ズラーッと並んでいる本に圧倒されそうになった。

 何冊か選んでから、誰も人がいない席を見付けてそこで本を読むことにする。
 人の視線から本棚で死角になる部分に移動したので、ショルダーバックの中からフォールティアとエルピスを出してあげた。
 静かにするように口に人差し指を当てれば、鳴かずに頭を振っている。
 うんうん、うちの子達は可愛いだけじゃなくて、賢くもある!
 フォールティアは僕の肩に止まって何をするの? と言う感じに首を傾げながら僕の手元を見ていて、エルピスは僕の膝の上で丸まって寝ることにしたようだ。
 そんな二匹の頭を撫でながら、まずは持って来た本を開く。

 本には魔女についてのことが書かれていた。
 
 まず、『魔女』は人間と悪魔そして天使との間に産まれた子供の名称らしい。
 女性だけじゃなく男性も同じく魔女と呼ばれ、天使との間に出来た子供は『白魔女』、悪魔との間に出来た子供が『黒魔女』と言われていた。
 天使と悪魔の血を受け継ぐ子供達は総じて魔力が多く、使える魔法も普通の人間よりも遥かに強力であったんだとか。
 古代史の中で名を残す魔法師のほとんどが、魔女であったのではないかとも書かれていた。
 しかし、古代の神々が人間が持つには強力過ぎる力であると判断し、それ以降天使と悪魔との間に子供が出来ぬように手を加えたともある。
 そこから新たな魔女が生まれなくなり……数百年前には普通に存在していた『魔女』が、今では絶滅したと考えられている。

 ただ、稀に魔女の血を受け継ぐ子供が、忘れた頃にポンッと生まれてくることがあるらしい。

 当時の魔女達とは違い、があって魔力が覚醒しない限り、自身が魔女とは知らずに普通の人間として生きていくことになる。

「はぇ~……もしかしたら、今の時代にも分かってないだけで魔女がいるのかもしれないな」

 ネヴィルに聞けばいろいろと教えてくれるのかもしれないけど、凄くめんどくさそうな空気を出されるかもしれないけど。
 僕の頬に頭を擦り付けるフォールティアに、くすぐったいと笑いながら、違う本を手に取り、表紙を開く。

「じゃあ次は使い魔ね」

『使い魔』は魔女の忠実なしもべと言われており、魔女がその強力な魔力で気に入った魔獣を強制的に使役することである。
 基本、主となる魔女が死なない限り永続的に生き続ける。
 主となる魔女の強さによって使い魔も強くなり、時には等級の悪魔くらいの強さを持つ使い魔が誕生した時もあったとも書かれていた。
 魔女が選ぶ魔獣は凶暴なものが多く、見た目も恐ろしいと言われていたため、主に魔女の陰の中に潜んでいたらしい。
 魔女が攻撃されたり魔女の命令がない場合は、常に陰の中に潜み、出てくるよう命じられた時のみ陰の中から出てくる。

 また使い魔は主となる魔女の『鏡』のような存在でもであると言われており、強い魔女が『闇落ち』した場合、使い魔も闇の力に染まり、周りの人々にとって災厄級の存在になってしまうんだって。

 ちなみに、魔女が使い魔として魔獣を選ぶのは、単に魔獣が人間よりも強い存在だからというだけであって、魔獣以外の使い魔だっていることにはいた。
 猫や犬、馬や熊などといった動物の時もあれば、人間をも使い魔にしていた時代があったらしい。
 本の内容を見てから、フォールティアとエルピスを見ると――フォールティアが「どうしたの?」と言うように瞬きしながら僕を見る。
 うん、主である僕が弱いせいでフォールティアとエルピスは強くなれないだろうけど、うちには悪魔なネヴィルがいるから、使い魔に強さは全く求めてはいない。

 この子達は『癒し』担当として、今後も僕の側にいて欲しいと願う。

「さっ、そろそろ帰ろうか」

 本を棚に戻し、ショルダーバックの中に寝ているエルピスと楽しそうに辺りを見回していたフォールティアを入れて、僕は外に出たのだった。
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