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ちいさな魔獣との出会い
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それから数日後、僕はネヴィルと一緒に町の中を歩いていた。
そろそろ食料が底をつきそうになってきたから、町へ買い出しに出てきていたのだ。
僕一人でも買い物は出来そうな感じなんだけど、最近町の中に破落戸が出てくるようになってきたとご近所のおばさまから教えてもらったので、お金も持って歩くしネヴィルに護衛ついでに一緒に来てもらっている。
帝国で孤児院にいた時でもここまで治安は悪くなかったよな~と思いながら、燻製肉と新鮮な魚、野菜、果物などを購入していく。
ある程度必要な物を手に入れてから、今まではあまり必要とは感じなかった薬なども買っておこうかと、薬屋がある方へ足を向ける。
死なないとはいえ傷はつくし、風邪だってひく。
その都度傷や風邪を治す薬が必要になってくるから、まずは魔法薬を売っている薬師がいるお店へ行ってみようかな。
買い物などをしたお店の人に腕のいい薬師の情報を聞けば、町の外れでひっそりと佇む小さな魔法薬屋が、この町の中では一番腕がいいと教えてもらった。
それじゃあそこへ行こうと二人で向かう。
露店で買った焼き串を食べながら教えてらもった場所へ行くと、丘の上にポツンと立つ平屋の小さな家が見えてきた。
建物全体が蔦に覆われているけど、家の周りや窓がある部分に綺麗な色の花々が咲いているので、まるで童話に出てくる善良な白魔女の家みたいな感じがした。
近くに行けば、扉の横に『テュレーリィの薬草・魔法薬屋』という看板がかけられてる。
「ここだね」
「そのようですね」
ネヴィルが扉を開けると、中から乾燥した草の匂いが流れてきた。
よく孤児院で乾燥した花のポプリを作ったりしていたけど、それに似たような匂いだ。
「おや、見ない顔のお客さんだね」
声がした方へ顔を向けると、受付兼作業台のようなところに一人の老人――おじいさんがいたのに気付く。
「こんにちは。あの、家に傷薬や風邪を引いた時用の薬が置いてなくて……」
「あぁ、救急箱の中身一式がほしいんかね?」
「はい、そうです!」
「ちょいと待っておくれよ……ばあさんやぁ~!」
おじいさんは後ろを向くと、立っていた場所の真後ろにある暖簾を手で持ち上げると、続く部屋の奥へ声を張り上げた。
どうやら部屋の奥にはおじいさんの奥さんがいるようで、奥さんに家庭用の救急箱一式を用意するよう頼んでいる。
少し待つと奥の部屋から申し訳なさそうな表情をしたおばあさんがやって来て、ある程度の薬は用意できるけど、傷薬系の薬が用意できないのだと言われた。
なんでも調合に必要な薬草がここ最近値段が高騰しているのと、一部の商人に買い占められていて手に入れられないのだとか。
僕としては今すぐ欲しい物でもないんだけど、いずれは必要になるものなので「あの、もしも僕がその薬草を手に入れて来たら調合してもらえますか?」と聞けば、それは勿論だと頷かれた。
それならと、ネヴィルを見てこれから薬草取りに行こうと言えば、凄く嫌そうな顔をされたけど……見ないふりをしておく。
おばあさんとおじいさんから薬草がある場所を聞いたら、危険なダンジョンの中にあるのだとか。
危ないからやめときなさいと言われたんだけど、そこは悪魔なネヴィルがいるから心配いらない。
二人にはネヴィルが強い魔法師だから大丈夫だと伝えると、それならと二人は顔を見合わせてから、必要な薬草が描かれた絵と場所を教えてくれた。
「それじゃあ、行ってきます!」
お店を出てからネヴィルの魔法で一瞬にして目的地であるダンジョンにまで移動してきた僕達であるが、なるべく日の明るい内に薬草を探した方がいいかもしれないと言われた。
今僕達がいるダンジョンは、昼間はそれほど危険ではないけど、夜になるとかなりヤバめな魔獣がうようよ出てくるようになるんだって。
ネヴィルの魔法で薬草を探し出すことは簡単だとは思うけど、そんなことの為に魔法を使っていざという時に使えなければ意味がないので、薬草探しは自力ですることになった。
「ん~……見つからないなぁ」
「やはり、買い占めている商人や薬草獲りが一足早くここに来て、全て収穫していったのでしょうね」
二時間ほど山の中を探していたんだけど、一つも薬草を見付けることが出来なかった。
喉も乾いてきたし、少し休憩をしようと近くにあった木の根元に腰を下ろした時――
《キュー?》
凄く可愛い鳴き声が木の後ろから聞こえてきた。
え? と思って声がした方へ体を向けると、そこには小さな黒い鴉がちょこんと首を傾げながら僕を見上げていた。
きゅるんっ! とした目で僕を見る鴉は、普通の鴉と違って胸元に両端が尖った形の真っ赤なルビーのようなものが五つ付いている。
「えっ、ちっちゃい鴉がいる……可愛いっ!」
たぶん魔獣の一種なんだろうけど、小さいし可愛い顔をしているしで胸がキュンキュンしてしまう。
驚かせないようにしばらくジーッと動かないで見ていると、小さな鴉はぴょんぴょんと跳ねながらどこかへと移動する。
どこに行くのかと見ていると、小鴉は時たま僕の方へ振り向く動作をする。
……もしかして、僕について来て欲しいのかな?
そろそろ食料が底をつきそうになってきたから、町へ買い出しに出てきていたのだ。
僕一人でも買い物は出来そうな感じなんだけど、最近町の中に破落戸が出てくるようになってきたとご近所のおばさまから教えてもらったので、お金も持って歩くしネヴィルに護衛ついでに一緒に来てもらっている。
帝国で孤児院にいた時でもここまで治安は悪くなかったよな~と思いながら、燻製肉と新鮮な魚、野菜、果物などを購入していく。
ある程度必要な物を手に入れてから、今まではあまり必要とは感じなかった薬なども買っておこうかと、薬屋がある方へ足を向ける。
死なないとはいえ傷はつくし、風邪だってひく。
その都度傷や風邪を治す薬が必要になってくるから、まずは魔法薬を売っている薬師がいるお店へ行ってみようかな。
買い物などをしたお店の人に腕のいい薬師の情報を聞けば、町の外れでひっそりと佇む小さな魔法薬屋が、この町の中では一番腕がいいと教えてもらった。
それじゃあそこへ行こうと二人で向かう。
露店で買った焼き串を食べながら教えてらもった場所へ行くと、丘の上にポツンと立つ平屋の小さな家が見えてきた。
建物全体が蔦に覆われているけど、家の周りや窓がある部分に綺麗な色の花々が咲いているので、まるで童話に出てくる善良な白魔女の家みたいな感じがした。
近くに行けば、扉の横に『テュレーリィの薬草・魔法薬屋』という看板がかけられてる。
「ここだね」
「そのようですね」
ネヴィルが扉を開けると、中から乾燥した草の匂いが流れてきた。
よく孤児院で乾燥した花のポプリを作ったりしていたけど、それに似たような匂いだ。
「おや、見ない顔のお客さんだね」
声がした方へ顔を向けると、受付兼作業台のようなところに一人の老人――おじいさんがいたのに気付く。
「こんにちは。あの、家に傷薬や風邪を引いた時用の薬が置いてなくて……」
「あぁ、救急箱の中身一式がほしいんかね?」
「はい、そうです!」
「ちょいと待っておくれよ……ばあさんやぁ~!」
おじいさんは後ろを向くと、立っていた場所の真後ろにある暖簾を手で持ち上げると、続く部屋の奥へ声を張り上げた。
どうやら部屋の奥にはおじいさんの奥さんがいるようで、奥さんに家庭用の救急箱一式を用意するよう頼んでいる。
少し待つと奥の部屋から申し訳なさそうな表情をしたおばあさんがやって来て、ある程度の薬は用意できるけど、傷薬系の薬が用意できないのだと言われた。
なんでも調合に必要な薬草がここ最近値段が高騰しているのと、一部の商人に買い占められていて手に入れられないのだとか。
僕としては今すぐ欲しい物でもないんだけど、いずれは必要になるものなので「あの、もしも僕がその薬草を手に入れて来たら調合してもらえますか?」と聞けば、それは勿論だと頷かれた。
それならと、ネヴィルを見てこれから薬草取りに行こうと言えば、凄く嫌そうな顔をされたけど……見ないふりをしておく。
おばあさんとおじいさんから薬草がある場所を聞いたら、危険なダンジョンの中にあるのだとか。
危ないからやめときなさいと言われたんだけど、そこは悪魔なネヴィルがいるから心配いらない。
二人にはネヴィルが強い魔法師だから大丈夫だと伝えると、それならと二人は顔を見合わせてから、必要な薬草が描かれた絵と場所を教えてくれた。
「それじゃあ、行ってきます!」
お店を出てからネヴィルの魔法で一瞬にして目的地であるダンジョンにまで移動してきた僕達であるが、なるべく日の明るい内に薬草を探した方がいいかもしれないと言われた。
今僕達がいるダンジョンは、昼間はそれほど危険ではないけど、夜になるとかなりヤバめな魔獣がうようよ出てくるようになるんだって。
ネヴィルの魔法で薬草を探し出すことは簡単だとは思うけど、そんなことの為に魔法を使っていざという時に使えなければ意味がないので、薬草探しは自力ですることになった。
「ん~……見つからないなぁ」
「やはり、買い占めている商人や薬草獲りが一足早くここに来て、全て収穫していったのでしょうね」
二時間ほど山の中を探していたんだけど、一つも薬草を見付けることが出来なかった。
喉も乾いてきたし、少し休憩をしようと近くにあった木の根元に腰を下ろした時――
《キュー?》
凄く可愛い鳴き声が木の後ろから聞こえてきた。
え? と思って声がした方へ体を向けると、そこには小さな黒い鴉がちょこんと首を傾げながら僕を見上げていた。
きゅるんっ! とした目で僕を見る鴉は、普通の鴉と違って胸元に両端が尖った形の真っ赤なルビーのようなものが五つ付いている。
「えっ、ちっちゃい鴉がいる……可愛いっ!」
たぶん魔獣の一種なんだろうけど、小さいし可愛い顔をしているしで胸がキュンキュンしてしまう。
驚かせないようにしばらくジーッと動かないで見ていると、小さな鴉はぴょんぴょんと跳ねながらどこかへと移動する。
どこに行くのかと見ていると、小鴉は時たま僕の方へ振り向く動作をする。
……もしかして、僕について来て欲しいのかな?
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