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二人は善良とはかけ離れた存在
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ダンジョンへ行く者にとって、安全に先を進むことが出来る『新しい情報』ほど価値が高い物はない、とウェルドはニッコリと笑う。
「私は、ネヴィル様やリアム様のように戦うことは出来ませんが、頭を使うこと……どんな人間であろうと巧みに欺き、操ることが得意でございます。ですから、ギルドにこのことを売り込む件は全て私に任せていただけないでしょうか? 今後どんな難題な問題が起きたとしても全て私が解決しますし、今手元に残っているお金も余りあるくらいに増やしてみせます」
「そ、そう? えと……では、お願いします」
そこまで言われたら「お願いします」の言葉しか出てこない。
「それでは早速、私は頂いた地図を使って動こうと思います」
ウェルドはそう言って立ち上がると、僕が情報を書いた地図やらなにやらを鞄に詰め込み、コートを着てどこかへと出かけてしまった。
いってらっしゃ~い、と手を振りながら送り出した。
食べた後の食器を台所で洗っている時、ふとネヴィルと使い魔達が大人しいことに気付く。
そう言えば、家に帰って来てから全然喋ってなかったな……
「フェリディールとエルピスは寝てるけど……ネヴィル、寝てる?」
疲れたのか、窓辺で使い魔達が重なるようにして寝ていた。
そんな姿を可愛いなぁ~と思いながら見てから、机の上にあるウサギ人形に近付いてツンツンしてみる。
反応がない。
たまに魔力を使い過ぎると動かなくなることがあるって言ってたから、それかな?
そんなことを考えながら濡れた手を拭いた後、僕は大きなソファーのところへ行って横になり、うーんっ! と両手両足を伸ばしながら目を閉じる。
ダンジョンに行って疲れたのとパンを食べてお腹がいっぱいになったからか、睡魔が襲ってきた。
窓から差し込む日差しもポカポカと温かく、お昼寝するには絶好のタイミングである。
ウェルドが帰ってくるまで少し寝ようと、僕はそのまま寝たのだった。
「――あれ……今、何時だ?」
ふと目が覚めて時計を見れば、寝てから二時間も経っていないようだった。
フォールティアとエルピスもクッションの上でまだ寝ているし、二度寝でもしようかと思ったんだけど……起きたら目が冴えてきちゃったし、そのまま起きることにした。
これ以上寝たら夜に寝れなくなるからちょうどいいのかもしれない。
視線をネヴィルがいたところへ向ければ、ちょうど動けるようになったのか、ウサギ人形が伸びをするような動きをして立ち上がったのが見えた。
「ネヴィル、動けるようになったの?」
「えぇ。ようやく力が戻りました」
ネヴィルはそう言って床の上にピョンッと降りると、そのまま人型の姿へと変化する。
「ネヴィルってさ」
「はい」
「その姿で外に出て、よく騒がれないね」
ネヴィルを見ていて疑問に思ったことが、スルリと口から出てきた。
目の前にいるこの悪魔は、性格はあまり……というか、かなりよろしくないが見た目は極上の部類に入る。
普通であれば女性から囲まれて騒がれていてもよさそうなのに、意外に誰も寄ってこない。
不思議に思ってそう聞けば、視覚阻害魔法をネヴィルの周りにかけているらしく、僕とウェルド以外の人間がネヴィルを見ても、そこら辺にいる普通の男性くらいにしか認識出来ないらしい。
稀に魔力量が多かったり、そういうものの耐性がある人間やエルフといった種族には効き難くいらしく、見破られることはないが、そういう魔法を使っているとバレるのだとか。
その顔で外に出たら凄い騒がれること間違いなしなので、しばらくはそのまま認識阻害魔法を維持しててくれと伝えておく。
目が覚めてから特にやる事もなかったので、ネヴィルとは別れて新しく出来た自分の部屋へ行くことにした。
部屋は白と濃い青色の綺麗な壁紙が使われており、装飾品は一切飾っていないんだけど実用的な物で揃えられている。
クローゼットを開ければ下着や服、靴などが今の年齢の物から少し成長した時にも着れそうな物がズラーッと数多く並べてかけられていた。
うん、さすがです。
有能な元宰相様は準備も万端である。
ベッドは今まで使っていた物より一回り大きいもので、ゴロゴロしても寝相が悪くても落ちる心配はない。
全体的な家の構造を考えると、貴族やそれなりに裕福な商家が住む豪邸くらいの広さはあるんじゃないだろうか?
家の周りには広い庭があるし、綺麗な魚が泳ぐ池、小さな温室や木で作られたブランコまである。
お隣の家まで少し歩かなきゃたどり着かないような都心部の高級住宅街に位置するし、これほどの規模の家なら先輩達からもらったお金が半分以上飛ぶのも分かる。
ベッドの上に寝転がりながら、ここ最近の怒涛の展開に頭が追いつかないな、と溜息を吐く。
本当にウェルドを仲間に引き入れて良かったのか、今だによく分からない。
元は犯罪者でもあるんだし。
でも、有能なんだよね……
うーんと悩みながらも、ネヴィルの魔法だけを頼りにし続けたら、将来的にダメ人間になってしまいそうな予感もするから、やっぱりウェルドのような人は必要だよなーと自分の中で結論を出す。
ただ、二人共善良な人間とはかけ離れた存在なので、犯罪を犯さないように目を光らせておかなきゃならないな、と心の中で決意したのであった。
「私は、ネヴィル様やリアム様のように戦うことは出来ませんが、頭を使うこと……どんな人間であろうと巧みに欺き、操ることが得意でございます。ですから、ギルドにこのことを売り込む件は全て私に任せていただけないでしょうか? 今後どんな難題な問題が起きたとしても全て私が解決しますし、今手元に残っているお金も余りあるくらいに増やしてみせます」
「そ、そう? えと……では、お願いします」
そこまで言われたら「お願いします」の言葉しか出てこない。
「それでは早速、私は頂いた地図を使って動こうと思います」
ウェルドはそう言って立ち上がると、僕が情報を書いた地図やらなにやらを鞄に詰め込み、コートを着てどこかへと出かけてしまった。
いってらっしゃ~い、と手を振りながら送り出した。
食べた後の食器を台所で洗っている時、ふとネヴィルと使い魔達が大人しいことに気付く。
そう言えば、家に帰って来てから全然喋ってなかったな……
「フェリディールとエルピスは寝てるけど……ネヴィル、寝てる?」
疲れたのか、窓辺で使い魔達が重なるようにして寝ていた。
そんな姿を可愛いなぁ~と思いながら見てから、机の上にあるウサギ人形に近付いてツンツンしてみる。
反応がない。
たまに魔力を使い過ぎると動かなくなることがあるって言ってたから、それかな?
そんなことを考えながら濡れた手を拭いた後、僕は大きなソファーのところへ行って横になり、うーんっ! と両手両足を伸ばしながら目を閉じる。
ダンジョンに行って疲れたのとパンを食べてお腹がいっぱいになったからか、睡魔が襲ってきた。
窓から差し込む日差しもポカポカと温かく、お昼寝するには絶好のタイミングである。
ウェルドが帰ってくるまで少し寝ようと、僕はそのまま寝たのだった。
「――あれ……今、何時だ?」
ふと目が覚めて時計を見れば、寝てから二時間も経っていないようだった。
フォールティアとエルピスもクッションの上でまだ寝ているし、二度寝でもしようかと思ったんだけど……起きたら目が冴えてきちゃったし、そのまま起きることにした。
これ以上寝たら夜に寝れなくなるからちょうどいいのかもしれない。
視線をネヴィルがいたところへ向ければ、ちょうど動けるようになったのか、ウサギ人形が伸びをするような動きをして立ち上がったのが見えた。
「ネヴィル、動けるようになったの?」
「えぇ。ようやく力が戻りました」
ネヴィルはそう言って床の上にピョンッと降りると、そのまま人型の姿へと変化する。
「ネヴィルってさ」
「はい」
「その姿で外に出て、よく騒がれないね」
ネヴィルを見ていて疑問に思ったことが、スルリと口から出てきた。
目の前にいるこの悪魔は、性格はあまり……というか、かなりよろしくないが見た目は極上の部類に入る。
普通であれば女性から囲まれて騒がれていてもよさそうなのに、意外に誰も寄ってこない。
不思議に思ってそう聞けば、視覚阻害魔法をネヴィルの周りにかけているらしく、僕とウェルド以外の人間がネヴィルを見ても、そこら辺にいる普通の男性くらいにしか認識出来ないらしい。
稀に魔力量が多かったり、そういうものの耐性がある人間やエルフといった種族には効き難くいらしく、見破られることはないが、そういう魔法を使っているとバレるのだとか。
その顔で外に出たら凄い騒がれること間違いなしなので、しばらくはそのまま認識阻害魔法を維持しててくれと伝えておく。
目が覚めてから特にやる事もなかったので、ネヴィルとは別れて新しく出来た自分の部屋へ行くことにした。
部屋は白と濃い青色の綺麗な壁紙が使われており、装飾品は一切飾っていないんだけど実用的な物で揃えられている。
クローゼットを開ければ下着や服、靴などが今の年齢の物から少し成長した時にも着れそうな物がズラーッと数多く並べてかけられていた。
うん、さすがです。
有能な元宰相様は準備も万端である。
ベッドは今まで使っていた物より一回り大きいもので、ゴロゴロしても寝相が悪くても落ちる心配はない。
全体的な家の構造を考えると、貴族やそれなりに裕福な商家が住む豪邸くらいの広さはあるんじゃないだろうか?
家の周りには広い庭があるし、綺麗な魚が泳ぐ池、小さな温室や木で作られたブランコまである。
お隣の家まで少し歩かなきゃたどり着かないような都心部の高級住宅街に位置するし、これほどの規模の家なら先輩達からもらったお金が半分以上飛ぶのも分かる。
ベッドの上に寝転がりながら、ここ最近の怒涛の展開に頭が追いつかないな、と溜息を吐く。
本当にウェルドを仲間に引き入れて良かったのか、今だによく分からない。
元は犯罪者でもあるんだし。
でも、有能なんだよね……
うーんと悩みながらも、ネヴィルの魔法だけを頼りにし続けたら、将来的にダメ人間になってしまいそうな予感もするから、やっぱりウェルドのような人は必要だよなーと自分の中で結論を出す。
ただ、二人共善良な人間とはかけ離れた存在なので、犯罪を犯さないように目を光らせておかなきゃならないな、と心の中で決意したのであった。
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