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召喚魔を手に入れよう! 1

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 今までどんなに恐ろしい状況に陥ったとしても、怖いくらい常に冷静でいられること。試験で死ぬ思いをしたのに、その恐怖体験を思い出してもなんとも思わず、平気でいられる、そのことに凄く不思議だった。

 でもそれが女神による祝福によって得られたものだと分かれば、なんとなくだけど納得できた。

 それからの僕は、その情報を元に自分でいろいろな事を試す行動をすることにした。
 毒を飲んだり剣で自分の腕を切りつけたり熱した鉄を腕に押し付けてみても、痛くも痒くもない。
 水に顔を浸して息を止めても苦しくない。
 いろんな事を試している時、何度も寝込んだりして滅茶苦茶体は弱ったけど苦しくないから辛くはなかった。

 一人で危険な場所に行き、崖から落ちたり魔獣に襲われて死んだとしても、怖いとも思わないし絶対に生き返る。

 深く付けた傷はそのまま残るけど、死んだらリセットされて綺麗に消えてなくなる。
 いろんな方法を試し、その工程で何度も死んでいたら、生き返る時の一定の法則があるのに気付く。

 それは、僕が死んだ時の状況――魔獣がいる場所であったり川の底で死んだりした場合、陸地や安全な場所で生き返るということ。

 そしてボロボロになって着れなくなった服は、絶対に学園の制服に変化し、少しでも成長していた身長や手足も生き返ると同時に十三歳の頃の姿に戻る。


『そなたには特別に全ての願いを叶え、ことにしよう』

 女神様は確かにそう言った。
 たぶん、僕は死ぬ毎にに戻るようだった。
 願いにより歳を取って老衰でしか死ねない体になったけど、病気なども含めて、老衰以外の理由で死んでしまった場合は問答無用で生き返る。

 そうして十三歳の体に戻って、また一から人生をやり直さなきゃならない生き方をしなくてはならなくなってしまった。

 ただ、いろんな事を試して死んでいると、僕は十三歳に戻るけど先輩や周りの皆は日々成長し、年齢を重ねていく。
 母親となったエレナ様はそんな僕を見ても「いつも可愛い子供でいてくれて嬉しいわ」と言ってくれるけど、いつまでもウォーカー家にお世話になっている訳にもいかない。
 そこで僕はウォーカー家が集めた魔法書を読み漁り、先輩達から離れて僕一人で死なずに生き続けるにはどうしたらいいのか探すことにした。
 基本何事も無ければ死にはしないはずだけど、不慮の事故とか病気で亡くなる時もある。
 かなり年老いてからまた十三歳に戻ったりしたら、かなり面倒なことになるのが分かる。
 その頃には先輩達を頼ることも出来ないだろうから、今からでもなにかいい方法がないか見付ける必要がある。
 魔法を使う才能はないので、それ以外になにかないかといろんな本を読み漁り――ついに僕にとってうってつけの方法を見付けた。

 それは『召喚魔』を手に入れるというものだった。

 召喚主になれば最強の助っ人を手に入れられ、なおかつ安全に年を取ることが出来るのではないだろうか?
 最初は天使を召喚出来たらと思ったんだけど、彼らを召喚するには魔力が足りなさ過ぎた。
 じゃあ悪魔も同じことがいえるんじゃないかと思うんだけど、悪魔を召喚する場合のみ『禁忌の召喚方法』があるのだと本に書いてあった。

 その禁忌の召喚方法とは……生贄を捧げるというものだった。

 本を見ていくと、老若男女五百人を捧げてようやく『等級』の悪魔を召喚出来るらしく、無垢な子供だけを捧げたり魔力を多く持っている者を捧げれば、より強い悪魔を召喚出来るんだとか。
 僕の場合、一人でお手軽にこれが出来ちゃうんである。

 捧げるのは子供の僕の体のみ!

 これはいけるんじゃね? という事で……
 禁忌の召喚方法陣が書かれた本は持ち出し禁止だと思うから、紙に正確に描き写しておく。
 次に取った行動は、先輩達やエレナ様にしばらく旅に出ることを許してもらうことだった。
 許可をもらうのにちょっと時間がかかったけど、なんとか許してもらえた。
 まぁ、死んでも死なない体だから、そういう心配はいらないからね。

「それじゃあ、行ってきまーす!」

 自分だけの召喚魔を得る為に、僕はウッキウキで邸宅を出たのだった。


 家を出る時にメルヴィン先輩から移動魔法陣が刻まれた紙を数枚もらった僕は、それを使って誰も来ないような山奥へ来ていた。
 帝国内の地図を見て得た知識を元に、誰も人が近寄って来ないような場所を選び、一日山の中を歩き回る。
 途中、倒木で入り口が隠れるようになっている洞窟を見つけたので、その中に入ってみる
 中を進むにつれ、洞窟内が複雑に入り組んでいく。
 迷わないように印を付けながらある程度奥へ進み、誰も来ないだろうというところで立ち止まる。

「よしっ! それじゃあ召喚陣を書いていこう」

 洞窟の中は暗いので、家から持ってきていた魔光石を周囲に置いて辺りを照らす。
 鞄の中から魔法陣を写した紙をを取り出し、血を混ぜて作ったチョークで地面に巨大な魔法陣を描いていくんだけど、少しの狂いもなく描かなきゃならないので、巨大魔法陣を描く時に使う道具も使用して時間をかけて描いていった。
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