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メルヴィン先輩の子供になりました
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エレナ様には、僕が古代都市の古い魔法を調査中にまだ解析されていない魔法を浴びてしまい、子供の姿に戻ってしまったのだと上手くメルヴィン先輩が説明してくれていた。
本当のことはいつか話す必要はあるかもしれないけど、今は混乱させるから、この説明の内容にしたとメルヴィン先輩はコソッと教えてくれた。
うん、その方がいいでしょ。
僕はエレナ様に自分がリアム・セレグレイトであることを信じてもらう為に、お二人の結婚式にも出席したことがあると伝えると、当時の僕の姿を思い出したのか、今の僕の姿を見て口に手を当てて驚いていた。
ただ、僕が調べていた古代魔法や子供の姿になってしまった僕のことについては秘匿事項になったから、まずはウォーカー家で『保護』をするということ。
そしてただの平民が貴族の家にいるのは余計な噂を呼ぶので、両親を亡くした親戚の子を引き取るといった形にして、僕を養子にする事を考えているとメルヴィン先輩はエレナ様に言う。
流石に僕を養子にするとまで言った時は驚いたんだけど、エレナ様は落ち着いた表情で分かりましたと頷くと、直ぐに養子縁組の手配をすると言って立ち上がり、部屋を出て行った。
最初はメルヴィン先輩の不貞を疑って怒っていたのに、僕の養子縁組には何も思わないのかと疑問に思っていると、メルヴィン先輩が「彼女は実力のある魔法師を輩出する家門の出だからね。古代魔法の危険性や、それについての情報が秘匿されることには理解がある」と言いながら、それから僕を見てちょっと申し訳なさそうな顔をする。
「あの時、君が瀕死の状態になっているのを見た人間が何人もいたから、申し訳ないが……リッカルドが手を回して『リアム・セレグレイト』としての君は『死亡』という形で処理された」
「……まぁ、しょうがないですよね。僕が死なないで生きている――しかも子供の姿に戻っているというのを知られたら、大変なことになるでしょうし」
「ただ、このまま戸籍がないのは生きていくうえで大変だから、僕の養子として登録することにするよ」
「いいんですか?」
「あの時、一緒に生き抜いた仲間なんだ。これくらい当然のことだよ」
ポンポンと頭を撫でながらそう言う先輩に、胸が熱くなる。
こうして僕は、メルヴィン・ウォーカーとエレナ・ウォーカーの養子になり、リアム・ウォーカーとなったのだった。
ウォーカー家の子供となって僕は新たな人生を歩むことになったんだけど、僕は主にエレナ様のお話相手兼お買い物付き添い係となっていた。
十三歳と十二歳の二人の子供がいるみたいなんだけど、どちらも学園にいるし夫は仕事で普段あまり邸宅にいないので暇……寂しい思いをしていたらしい。
子供とは言え中身は大人。
大人だけど外見はまだ幼い子供(しかも養子縁組して自分の子供にもなった)なので、一緒に街に出かけてお買い物をしたり、デザートを食べに行ったり、魔法についての話合いや討論をしたりしていた。
ウォーカー家の子供達が学園から帰って来た時には、五人家族になった記念だからと一家揃った肖像画まで描いてもらい、屋敷の中で一番目立つところに飾っていてちょっと恥ずかしい。
お二人の子供達とも仲良くなり、学園から帰ってくる時は一緒に遊ぶことも多かった。
ウォーカー家の子供になってしばらくしてから、メルヴィン先輩とリッカルド先輩の三人で話し合いをしたことがあった。
その時に先輩方から聞いたのは、祝福の副作用的なもの。
メルヴィン先輩は大魔法師だけが使える魔法を使用可能にはなったんだけど、強力な魔法を使用し続けるとしばらく意識を失ってしまうらしい。
強力な魔法であればあるほど意識を失っている時間も長くなり、今までで最長一ヶ月眠り続けたことがあるんだって。
元々の体に分不相応の魔力が備わり、それを行使することによって体が弱るのではないかと考えているようだ。
リッカルド先輩の場合は、誰もが認めるほどの帝国一の魔法剣士になれたが、怪我や病気をするとなかなか治らないのだとか。
魔法薬で傷を治そうとしても、普通の人の回復速度よりかなり遅く、病気も治りにくい。
たぶん、本来持つ身体能力や魔法使用能力より上回る力を得て、その反動が来ているのではないかとのこと。
僕の場合は、女神に「老衰で眠るように天国にいきたい」と願ったので、老衰で死ぬことでしか死ねない体になったのではないかと言われた。
ただ不穏なのは、あの時女神様が『全ての願いを叶える』と言ったこと。
全てとはなんの事なのか分からないけど、あの時僕が言ったことを覚えていたメルヴィン先輩が「リアム君はあの時、怖い思いをするのも、痛いのも苦しいのも嫌だと、絶対に死にたくないと言っていたよね? だから、もしかするとだけど……あの女神はその願いも聞き入れたんじゃないかな」と顎に手を当てて呟く。
あ、だからどんな場面であっても僕は恐怖心を抱かないのか……
本当のことはいつか話す必要はあるかもしれないけど、今は混乱させるから、この説明の内容にしたとメルヴィン先輩はコソッと教えてくれた。
うん、その方がいいでしょ。
僕はエレナ様に自分がリアム・セレグレイトであることを信じてもらう為に、お二人の結婚式にも出席したことがあると伝えると、当時の僕の姿を思い出したのか、今の僕の姿を見て口に手を当てて驚いていた。
ただ、僕が調べていた古代魔法や子供の姿になってしまった僕のことについては秘匿事項になったから、まずはウォーカー家で『保護』をするということ。
そしてただの平民が貴族の家にいるのは余計な噂を呼ぶので、両親を亡くした親戚の子を引き取るといった形にして、僕を養子にする事を考えているとメルヴィン先輩はエレナ様に言う。
流石に僕を養子にするとまで言った時は驚いたんだけど、エレナ様は落ち着いた表情で分かりましたと頷くと、直ぐに養子縁組の手配をすると言って立ち上がり、部屋を出て行った。
最初はメルヴィン先輩の不貞を疑って怒っていたのに、僕の養子縁組には何も思わないのかと疑問に思っていると、メルヴィン先輩が「彼女は実力のある魔法師を輩出する家門の出だからね。古代魔法の危険性や、それについての情報が秘匿されることには理解がある」と言いながら、それから僕を見てちょっと申し訳なさそうな顔をする。
「あの時、君が瀕死の状態になっているのを見た人間が何人もいたから、申し訳ないが……リッカルドが手を回して『リアム・セレグレイト』としての君は『死亡』という形で処理された」
「……まぁ、しょうがないですよね。僕が死なないで生きている――しかも子供の姿に戻っているというのを知られたら、大変なことになるでしょうし」
「ただ、このまま戸籍がないのは生きていくうえで大変だから、僕の養子として登録することにするよ」
「いいんですか?」
「あの時、一緒に生き抜いた仲間なんだ。これくらい当然のことだよ」
ポンポンと頭を撫でながらそう言う先輩に、胸が熱くなる。
こうして僕は、メルヴィン・ウォーカーとエレナ・ウォーカーの養子になり、リアム・ウォーカーとなったのだった。
ウォーカー家の子供となって僕は新たな人生を歩むことになったんだけど、僕は主にエレナ様のお話相手兼お買い物付き添い係となっていた。
十三歳と十二歳の二人の子供がいるみたいなんだけど、どちらも学園にいるし夫は仕事で普段あまり邸宅にいないので暇……寂しい思いをしていたらしい。
子供とは言え中身は大人。
大人だけど外見はまだ幼い子供(しかも養子縁組して自分の子供にもなった)なので、一緒に街に出かけてお買い物をしたり、デザートを食べに行ったり、魔法についての話合いや討論をしたりしていた。
ウォーカー家の子供達が学園から帰って来た時には、五人家族になった記念だからと一家揃った肖像画まで描いてもらい、屋敷の中で一番目立つところに飾っていてちょっと恥ずかしい。
お二人の子供達とも仲良くなり、学園から帰ってくる時は一緒に遊ぶことも多かった。
ウォーカー家の子供になってしばらくしてから、メルヴィン先輩とリッカルド先輩の三人で話し合いをしたことがあった。
その時に先輩方から聞いたのは、祝福の副作用的なもの。
メルヴィン先輩は大魔法師だけが使える魔法を使用可能にはなったんだけど、強力な魔法を使用し続けるとしばらく意識を失ってしまうらしい。
強力な魔法であればあるほど意識を失っている時間も長くなり、今までで最長一ヶ月眠り続けたことがあるんだって。
元々の体に分不相応の魔力が備わり、それを行使することによって体が弱るのではないかと考えているようだ。
リッカルド先輩の場合は、誰もが認めるほどの帝国一の魔法剣士になれたが、怪我や病気をするとなかなか治らないのだとか。
魔法薬で傷を治そうとしても、普通の人の回復速度よりかなり遅く、病気も治りにくい。
たぶん、本来持つ身体能力や魔法使用能力より上回る力を得て、その反動が来ているのではないかとのこと。
僕の場合は、女神に「老衰で眠るように天国にいきたい」と願ったので、老衰で死ぬことでしか死ねない体になったのではないかと言われた。
ただ不穏なのは、あの時女神様が『全ての願いを叶える』と言ったこと。
全てとはなんの事なのか分からないけど、あの時僕が言ったことを覚えていたメルヴィン先輩が「リアム君はあの時、怖い思いをするのも、痛いのも苦しいのも嫌だと、絶対に死にたくないと言っていたよね? だから、もしかするとだけど……あの女神はその願いも聞き入れたんじゃないかな」と顎に手を当てて呟く。
あ、だからどんな場面であっても僕は恐怖心を抱かないのか……
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